東の桂離宮といわれ、室町時代にまでさかのぼる１４棟もの古建築が集められた横浜・三渓園。わが国初の野外博物館として、自然の丘を生かした文化の楽園が横浜市本牧三の谷にある。生糸商・原三渓（１８６８〜１９３９）の独特の美意識が凝縮され、その景観とともに数多くの美術工芸品が納められている。◆寛永のアートディレクター・本阿弥光悦を目指した三渓。彼のあくなき美の探求と信念から生まれた三渓園の、文化史的意義を探る。◆【国宝】孔雀明王像〔東京国立博物館〕、寝覚物語絵巻〔大和文華館〕◆【重要文化財】臨春閣、月華殿、聴秋閣、春草盧、旧燈明寺三重塔〔三渓園〕

「はぐれ刑事」こと安浦吉之助刑事の活躍を描く人情刑事ドラマ。◆第１回「密告者は美人靴みがき」。靴磨きの佳江（松尾嘉代）が別れた夫を殺そうとしている、との密告電話が入った。若い新藤刑事（木村一八）は横溝署長（梅宮辰夫）の命令で佳江をマークする。古参刑事の安浦（藤田まこと）が手を貸してくれたが、新藤は安浦の乱暴な捜査についていけない。

時代と自分が合わなくなり落ち目になったロックシンガーが、世の中の流れとの葛藤に悩みながらも出直しを図るまでを描く。◆人気絶頂のロックシンガー・片桐行人（萩原健一）。しかしコンビを組んでいた作詞家・藤崎拓（宇崎竜童）が、時代からのずれを指摘してガンで死んでから、彼の歯車は狂い始めた。感覚の新しい藤崎の弟子・白根恵子（樋口可南子）と組むように言い残されていたが、それを受け入れず、かたくなに自分のスタイルを崩そうとしない片桐。新曲披露のコンサートでのノリも悪い。ポリープができて声が出にくくなったが、失敗を恐れて手術を受けない。フォローしていたメンバーがソロで立ち、片桐はいよいよ取り残されてゆく。

四方を山に囲まれた甲斐に生まれ、あと１０年生きていたら天下を取ったであろうといわれる武田信玄。人材育成や領国経営に近代的手腕をふるったその生涯を、肉親や家族との相克・葛藤を交えて雄大なスケールで描く。ＮＨＫ大河ドラマ第２６作。原作：新田次郎。（１９８８年１月１０日〜１２月１８日放送、全５０回）◆第１回「父と子」。甲斐の領主・武田信虎（平幹二朗）とその嫡男・晴信（真木蔵人、中井貴一）とは性格も合わず、日毎に確執を深めていた。初陣となった信濃の海の口攻めで、晴信は夜討ちをかけてみごと城を落とすが、乱戦のなか誤っておここ（南野陽子）という少女にけがをさせる。彼女を山寺にかくまった晴信だが、京の公家・三条家の姫（紺野美沙子）との縁談が持ち上がり、信虎におここを棄てよと言い渡される。

美しい声色と巧みな節回しで芝居を盛り立てて６０余年。芳村五郎治の円熟した極みの芸を見る。◆歌舞伎音楽には指揮者がいない。相手を見て、あうんの呼吸で唄う長唄の難しさ、乗りと間の大切さを、弟子に伝えて努力を説く。毎晩、のどにガーゼを巻いて寝るという身体へのいたわりが、親子３代で舞台を務められる幸せの源かも知れない。

日本経済新聞紙上で１９５７年（昭和３２）３月に始まった「私の履歴書」のテレビ版。一時代を築いた人物が出演、自らについて語る。（１９８７年４月８日〜１９８８年９月２８日、全７８回。出演者の肩書・年齢は放送当時のもの）◆第７１回は、元駐米大使の朝海浩一郎さん（８２歳）。

オーラパワーを宿した５人の若者がマスクマンとなり、地球侵攻を企む地底帝国チューブと戦いを繰り広げる。スーパー戦隊シリーズ第１１作。（１９８７年２月２８日～１９８８年２月２０日放送、全５１回）◆最終回。地帝城が崩壊し、放出された暗黒粒子により世界は凍り付いてしまう。マスクマンは世界を救うべく、地帝王ゼーバとの最後の戦いに挑む。しかし、地帝王ゼーバの正体は地帝獣リサールドグラーだった。

新緑の中にたたずむ室生寺の五重塔や優美な仏像を紹介し、記録映画作家の羽田澄子さんが女たちの祈りの跡をたどる。◆かつて女性は高野山をはじめ多くの仏教の聖地への立ち入りを拒まれてきた。そうした中で室生寺は女たちの心を受け止めるかけがえのない寄り所であった。金堂に安置された堂々たる釈迦如来は、黒漆で塗られた端正な顔立ちでカヤの一木造り、平安時代始めの作である。ここで女たちは子に恵まれ、乳を授かるよう祈ったのだろうと羽田さんは考える。創建当時のものと考えられる朱色の五重塔の高さは１５メートル余りで、女人高野にふさわしく日本最小の可憐な塔である。