歌舞伎の舞踊の中でも数多くあり、非常に古いルーツを持つ『寿式三番叟』を取り上げる。また郷土芸能の「三番叟」も紹介する。◆「三番叟」は五穀豊じょうを祈る神聖な曲であったが、日本舞踊に組み入れられユーモラスな所作が加わって、次第に芸能化してきた。翁の荘重さ、躍動感のある「揉の段」、それに豊作を祈る「鈴の段」の三つが鑑賞のポイントである。◆副音声は英語

日ソ間に横たわる問題をテーマにしたシリーズ特集番組の最終回。（１９９１年４月１日開始、全５回）◆独立採算性の導入で、中央からの自立を求められているソ連の地方組織にとって、外貨は生き残りのために必要不可欠なものとなった。彼らにとって、日本との合弁事業は外貨獲得の絶好の機会である。日ソ合弁の街ハバロフスクを舞台に奔走するソビエト人や変革するソビエト社会を描く。

豊かな自然や各地に暮らす人々の風景を、美しい映像と人間味豊かな内容で伝える紀行番組。◆川崎市の多摩川下流域から港にかけての地域を訪ね、工業都市の中に生き続ける歴史と風物を探る。人口１１８万の川崎市の中でも一番の工業都市・川崎区は、明治初めに大工場が続々と立ち並び、京浜工業地帯の拠点として発掘してきた。今では流通輸送の拠点として大きく姿を変えている。番組では、京浜急行・大師線を紹介し、輸出自動車の積み込み風景、変貌するＪＲ川崎駅前、そして刀の研師一家をはじめ、この地に暮らす人々を紹介する。

北海道旭川が生んだ不世出の大投手・スタルヒンの生涯を追いながら、極東ソ連と旭川、北海道の現状をまじえ、平和の尊さ、一般市民レベルでの交流の大切さを訴える。テレビ北海道・旭川地区放送開始記念特別番組。◆ヴィクトル・スタルヒンはロシア革命のために日本へ亡命、第２次世界大戦中は無国籍者の刻印を押され、戦争に翻弄されながらも、日本プロ野球史に輝かしい足跡を残した。日本球界初の３００勝投手となり、年間最多勝利数４２勝、通算完封勝利数８４という記録はいまだ破られていない。快速球は澤村、豪速球はスタルヒンといわれた。

太平洋戦争中、日本兵は新年に支給された日記帳に日記をつけることになっていた。戦争末期、南方諸島で敗走する日本兵が残していった日記を米軍が入手、内容を分析して作戦立案に役だて、また戦後政策にも影響を与えたという。残された日記から戦時を読み解く。◆激戦地だったガダルカナル島に残った日記がアメリカ国立公文書館に保存されている。日本に関する情報が極端に不足していた米軍は、その日記を解析して敵軍の動向、兵士の心理などを知った。当時の米軍関係者はこのような日記を将兵につけさせた日本軍の意図をいぶかったという。激しい戦闘が続く中でしだいに脈絡が失われていく日記、そこには死に向かい合った兵士の姿、戦場の真相が書き綴られている。

東京美術学校を卒業したら絵の本場を訪れたいと、燃えるような思いでパリを目指した佐伯祐三。フォービズムの先駆者ブラマンクを訪ね、意気揚々と自分の作品を見せた時、吐き出すように返ってきた言葉は「アカデミズム」。以来、佐伯は模索を重ね、アカデミズムとは何かを問い続け、ついに自身の画風を確立する。日本の風景は油絵にはなじまないと、病をおしてパリを再訪する。３０年の生涯で描いた４００枚の画は、ほとんどがパリの風景だった。◆佐伯祐三（１８９８〜１９２８）「卒業制作自画像」１９２３、「カフェ・レストラン」１９２７、「立てる自画像」１９２４、「サン・タンヌ教会」１９２８、ブラマンク「庭の子供たち」１９０４、「雪の村」１９３０

古来、人々は見えざる神を見、畏れ、祀った。それが祭りの原形。農耕の民である人々にとって田の神を祀る儀礼は多様で、奥能登の『あえのこと』、広島・壬生の『花田植』などにその原点をみる。都市で生まれた祭りは京都の『祇園祭』。日本各地の祭りは、ほとんど祇園祭の流れをくむ。自然を恐れ神に祈る心は、厳粛な神事からやがて神と一体になる歓楽へと姿を変え、次第ににぎやかさと贅を極めていく。祇園祭の山ほこの数々に「祭り」の典型を見る。◆【重要文化財】祇園祭礼図〔出光美術館〕◆【重要無形民俗文化財】能登のあえのこと〔石川県〕、京都祇園祭の山鉾行事〔京都府〕、壬生の生田植〔広島県〕

「智恵子抄」などで知られる芸術家・高村光太郎と智恵子の運命的な出会い、智恵子が求めた新しい女の生き方、光太郎との美しくも壮絶な愛を描く。◆パリ帰りの光太郎は女子大を出て画家をめざす智恵子と恋に落ち、同棲生活を始める。光太郎は塑像・木彫、智恵子は絵に取り組むが生活は苦しい。智恵子の文展出品作は落選、福島の生家も破産する。彼女は自分の才能への不安や古い家族制度に押しつぶされ正気を失っていき、心身ともに疲れ果てて睡眠薬自殺を図る。一命はとりとめたが精神に異常をきたした智恵子はそれまでとは異質の絵を描き始める。