自然ゆたかな白山麓で、伊藤常次郎さんは今では珍しい焼畑でアワ・ヒエをつくり、炭を焼き、山菜や木の実を採る自給自足の暮らしをしている。８歳の孫との交流の日々をつづり、山村に伝わる先人たちの暮らしの知恵、自然の尊さ、人が自然と共に生きていく生活を詩情豊かに描く。

昭和５０年代後半から６０年代にかけての、大和路にある古寺の復興造営・解体修理の記録をたどる。◆奈良の西の京にある薬師寺では、天平時代の７３０年に建立された東塔のみが残り、西塔は１５２８年に焼けて失われたままになっていた。この西塔が１９８１年（昭和５６）、見事に再建された。先に再建された金堂とあわせ、東西両塔の並び立つ姿は、天平の昔をしのばせてくれる。西塔の再建と相前後して、桜の名所・吉野では金峯山寺蔵王堂の解解体修理と、修験道で知られる大峯山寺の解体修理が行われた。

一見幸せそうに見える暮らしの中にかかってきた一本の電話から、妻は夫の背後にちらつく女を感じ取る。（１９９０年９月２１日〜９月２８日放送、全２回）◆英子（田中裕子）は女手ひとつで育てられた修一（小林薫）と結婚して６年になる。長男の健太、姑のツヤ子（加藤治子）らとの生活は幸せそのものだが、なぜ自分がここにいるのか、単なる偶然で一つ屋根の下に住んでいるのではないかというような虚しさをふと感じることがあった。ある日、トミ子（洞口依子）と名乗る女から電話がかかってきた。彼女は修一が安アパートに囲っている愛人だった。

子供のいない中年夫婦が破局にいたるまでの愛憎を描く。原作：夏樹静子。◆北海道函館市。運送会社の修一郎（クロード・チアリ）と結婚して１３年。子供の産めない身体ながら、文子（桃井かおり）は幸せだった。しかし、文子はふとしたことから夫に愛人と５歳の子供がいるのを知り、ショックを受ける。夫が子供好きであることを理解しようとするが、空しさはつのるばかり。

江戸後期、鎖国下の日本で洋風画を完成させた司馬江漢（１７４７〜１８１８）。生れつき自負心と好奇心が旺盛で、一芸を持って身を立て後世に名を残そうと考えていた。鈴木春信や宋紫石に絵を学び平賀源内などとの交流もあった。西洋画に興味を持ち、日本最初の銅版画を成功させ油絵も描いた。西洋画と漢画を融合させ、見事な遠近法を駆使して多くの名画を残した。後の北斎や広重にも影響を与え、近代文明を切り開いた先駆的な異風画人である。◆蜆子和尚図、寒柳水禽図（司馬江漢筆）〔長崎県立美術博物館〕、三囲景図（司馬江漢筆）〔神戸市立博物館〕、司馬江漢肖像画〔天理大学付属図書館〕、解体新書〔研医会眼科図書館〕

太平洋戦争の開戦直前から東京空襲にいたる暗い時代を背景に、薄幸な遊女と若い脚本家の悲恋を描く。終戦４５年ドラマスペシャル。◆１９４１年（昭和１６）中国との戦争が５年目に突入した重苦しい時代。脚本家・植草圭之助は、吉原遊廓の女・仁科悠子と出会う。彼女に強くひかれていくうちに、日本は太平洋戦争に突入。悠子は死を覚悟で足抜けを望み、植草も捕まれば半殺しの目にあうことを承知の上でそれを助けた。脱走に成功した悠子は、救世軍の施設に保護されながら働き、吉原へ借金を返しはじめる。悠子を案じるが面会を許されなかった植草は、彼女が肺結核にかかったと知って一緒に暮らす決心をする。

世界各地の野生動物の写真を撮り続けている岩合光昭さんが、初めてビデオカメラを駆使して野生動物の生態に迫るシリーズ。◆岩合さんはこの２０年間に北極から南極まで７０カ国以上を訪れている。この回は冬のハワイと夏のアラスカの海でザトウクジラの生態を取材する。これまで謎とされていたクジラのえさ捕り法の撮影に成功。魚群の下に潜って円形に泳ぎながら泡で魚を囲み、海面まで追って一口で食べるという驚くべき方法で集団で協力するクジラの知恵も紹介する。

奈良県橿原市今井町は、中世末期の環濠集落の町割りを今に伝える。７５０軒の町家のうち５００軒あまりが歴史的な民家で、そのうち８軒が国の重要文化財に指定されている。時代小説の舞台にタイムスリップしたような町並みを紹介する。◆今井町は中世戦国時代に本願寺一門がいわゆる寺内町として濠をめぐらし、土塁を築いたのが始まり。その後、信長や秀吉に優遇され、特権的な大和の自由商業都市として繁栄した。最も栄えたのは元禄時代で、大商人がひしめき、蔵元・両替商・米・酒・味噌・油などの商家が軒を並べていたという。町は元禄時代を最後に衰退してしまうが、現在もその町並みを大切に残している。