岡山県備前で千年の歴史を持つ備前焼。山本陶秀は岡山県伊部町生まれ。伝統的な備前焼の陶技を体得した。◆ゆう薬を使わないので他の陶磁器のような派手さはないが、窯の中で炎と灰の洗礼を受け、器に自然の文様を描き出す。桃山時代から茶の湯と共に歩んできた備前焼の品格である。窯場の秘技・炭入れの風景などはこれまで門外不出だった。

東洋の精神世界に深い関心を持つ画家・前田常作さんが、自らの芸術の原点という宇治市の平等院を訪ね、鳳凰堂の美の世界の中に藤原氏の心を探る。◆関白藤原頼通は１０５２年、極楽浄土の世界をこの世に造りあげようと平等院を造った。外観は翼を広げた鳳凰を模し、堂内には定朝の作った金色に輝く阿弥陀如来が、精巧緻密な透かし彫りの天蓋の下に座す。四方の壁には５２体の供養菩薩が雲に乗って舞い、楽を奏したり礼拝したり様々な姿で配されている。「どんなに富と権力を持っていても人は孤独でなんらかの不安を抱きつづけ、光明を求めている。平等院にはそんな人間の切実な祈りの世界がある」と前田さんは語る。

警視庁特命捜査課を舞台に刑事たちが機動力と科学力を駆使して難事件に挑む、人間味あふれる刑事ドラマ。（１９７７年４月６日～１９８７年３月２６日、全５０８回）◆退職した元刑事・船村（大滝秀治）の孤独な闘いを描く２回連続ストーリーの後編。“飲む覚せい剤”密売組織の暗躍と、船村の孫の誘拐事件を描く。

能ワキ方宝生流の森茂好は、美声と芸風で他を寄せつけない。ワキの心と技の真髄を聞く。◆能のワキは舞うことも面をつけることもなく座り続けることの多い辛抱役である。「シテは陰にうたえ。ワキは陽にうたえ」の先代の言葉通り、シテを超えず、こびず、和して競う境地こそ森茂好が求めるものである。

１９８６年（昭６１）、旧伊達藩の重鎮大童信大夫（おおわらしんだいゆう）の子孫の家から、これまで謎とされてきた伊達家の正月料理の内容を記した古文書が発見された。そこで郷土史家、料理研究家とともに「伊達家正月料理」の再現を試みる。古文書によると料理は三汁十六菜からなる豪華なメニューで、材料にはツルやハクチョウなどの国際保護鳥のほか、伊勢海老、鯨、そして意味不明のものも含まれている。料理を盛り付けるのにふさわしい伊達家ゆかりの器も捜し出し、１８代目当主伊達泰宗さんを迎えて試食会が行われた。

明治４０年３月、第一師団軍医部長の要職にあった森鴎外（佐藤慶）の家庭では、彼の愛を独占しようとする二人の女性の愛憎・確執が頂点に達しようとしていた。息子の出世に一生の夢を託す母・峰（山岡久乃）と、良家に生まれ夫の愛をひたすら求める妻・茂（藤真利子）である。鴎外の輝かしい生涯は、果たして幸せであったのだろうか。◆ことあるごとに峰と茂が衝突しては茂が実家に帰り、鴎外が迎えに行くといった生活の中で、鴎外の脳裏に浮かぶのは楽しかった小倉での日々であった。“左遷”ではあったが、明朗利発な女中・元（石田えり）の世話を受け、茂を東京から迎えて近郊に遊んだ平穏な日々。しかしその平穏は“栄転”によって破れた。

明治維新に出発した近代日本は、アジアの大国になりながら、昭和で敗戦の破局に至った。作家・司馬遼太郎氏がその昭和へ至る歴史を、明治・幕末まで遡って語るシリーズ。（全１２回）◆最終回は、日本人が自己解剖に臆病で自らを正確に相対化し得ないことから、明治が築いた国家が、８０年で崩壊したことを指摘し、一価値主義の時代へ陥らないように警告する。

パリから地中海を渡り、サハラ、テネレの二つの砂漠を越えて、アフリカ西海岸セネガルの首都ダカールまで１万３０００キロを走破する世界最大の自動車レース。番組は、スーパースター・アリパネタンとその首位争い、日本選手として初めて３位に食い込んだ篠塚健次郎の活躍を中心に構成。