８年前に婚約しながらなぜか結婚に踏み切れない男女と、今まさに婚約しようとする若いカップルがそれぞれに入り乱れる。シリアスな問題である「婚約」をめぐるコメディ。（１９８７年１月１０日〜２月７日放送、全５回）◆ＦＭラジオ局の編成局長・加納一馬（山城新伍）と、「クラシックサロン」という番組のＤＪ・保科レイ子（秋吉久美子）は婚約者どうし。結婚に踏み切れないまま８年という月日が経っていたが、一馬の母が急死して多額の相続税がかかってきたこと、また「クラシックサロン」をやめて歌番組にしたいという番組編成上の都合から、一馬が結婚を迫り出す。魂胆を見抜いたレイ子は婚約解消を申し込むが、一馬は承知せず、かえってレイ子が困って泣きついてくるように裏から手を回す。

琵琶湖の水面を渡る風にのって奏でる三味線の音色。その音は繊細な繭糸（生糸）から生み出される。邦楽器の糸作りの二代目・橋本家は賤ケ岳の山懐に抱かれた滋賀県木之本町にある。昔から糸の里として知られ、生糸を育てる良質の水があった。◆細い生糸を束ね、撚り、原糸１５０本を合わせ、染め糊付けまで１０以上の工程を経て音楽性と耐久性のある糸を作る。長い経験と技、更に情熱が加わって日本の音の元が生まれる。

横浜の病院に入院してきた女性患者がエイズ（ＡＩＤＳ・後天性免疫不全症候群）と判明、女医・若宮由紀（大原麗子）は偏見・差別やマスコミの執拗な関心とたたかいながらこの患者を担当する。一方で由紀の人知れぬ秘密が何者かに知られ、病院を辞めるようにと脅迫される。エイズ問題に初めて正面から取り組む医療ドラマ。

確たる物的証拠もなく、一貫して否認を通しているにもかかわらず、山中事件の犯人として１・２審で死刑判決を受け、最高裁へ上告中の霜上則男被告の無実の訴えを検証する。◆１９７２年７月、石川県山中町の林道でタクシー運転手が他殺死体で発見され、ある青年の自供から霜上被告が主犯として逮捕された。事件から１５年を経て行われた現地調査や支援の人たちによる救援運動、鑑定書の検証、両親の心情などを通して“凶器なき殺人事件”といわれる山中事件の捜査と裁判の問題点を探る。（その後、１９８９年６月の上告審で死刑判決は破棄され、審理やり直しが命じられた。１９９０年差し戻し審で無罪確定。）

静かで直線的で強さを求める京舞一筋に舞い続ける井上八千代に、至芸の世界を語ってもらう。◆“見て覚え”が井上八千代の舞の師であった。三味線を覚えないと舞を忘れると先代にいわれ、厳しいけいこを積んだ。祇園の舞は先代から井上流一本である。舞が固いといわれても、伝統を崩すことなく舞い続けたいと語る。

１本の糸を自分の手で紡ぎ、染め、織り上げていく芭蕉布は、琉球の普段着であり、野良着であった。原料となるイトバショウはバショウ科の多年草で、約２年で成熟する。その後、糸紡ぎから織りまで３年を要する。◆その気の遠くなりそうな作業を、沖縄県北部の喜如嘉の女性たちが伝承している。代表を務める平良敏子が戦争未亡人に声をかけ、保存会を結成。沖縄の心を紡ぎ続ける。

刀工・月山家は幕末の貞吉から数えて４代。遠祖出羽月山鍛冶は鎌倉時代に発祥したといわれ、日本刀剣史上でも類のない長い伝統を誇っている。◆月山貞一は祖父、父のもとで鍛刀を学び、月山家伝統の綾杉伝、備前伝など五カ伝のすべてを完全にこなした。作刀技術はもちろん、刀身彫刻でも現代刀匠中の第一人者である。

截金は平安時代、仏像仏画の装飾法として日本独自の発達を遂げたが、あまりにも精密なため鎌倉以後、完全にすたれていた。が、西出大三が２０年余りの研究の末、見事現代に復活させた。◆純金度９９％の金ぱくを極細に切り、彩色された木彫りの上に張り付けていく。若いころ、仏像修復を依頼された時、小さな地蔵菩薩に描かれた截金を見て、とりこになったという。