かわいく、あどけない表情の人形たち。日本には精ちな工芸品としての人形が多く残っている。単なる鑑賞品ではなく、女にとっては暮らしに欠かせぬ人生の同伴者でもあった。江戸から昭和まで広く「市松人形」と総称されたのは、江戸中期の人気役者・佐野川市松から来たもの。その成立過程や人形制作の移り変わり、人形に魅せられた人々の心情を織り交ぜて、遠い過去の記憶となりつつある人形への思いを致す。◆三折れ人形万勢伊さん〔宝鏡寺〕、三折れ人形童女〔京都府立総合資料館〕、三折れ人形童児

インド総選挙の選挙戦のさなか、国民会議派のラジブ・ガンジー元首相が暗殺された。この事件で変化するインド情勢を伝え、暗殺の背景にある多民族・多宗教の問題を分析する。◆元首相は５月２１日、総選挙の遊説に訪れたインド南部の都市マドラス近郊で爆弾テロにあった。インディラ・ガンジー元首相とともに母子二代にわたる暗殺の悲劇。国民会議派の象徴の死で、８億人の大国インドの民主主義は危機に直面している。インドのヒンズー教徒は６億人、人民党が勝利すれば宗教的対立はいっそう激しくなると予測されている。人民党最高顧問アドバニ氏の唱えるヒンズー主義とは何か、インド国民はどんな選択をするのか。

身近な生活の中にある家電製品から軍事用ミサイル、宇宙ロケットなどの超ハイテク製品までの心臓部を構成する“魔法の石”半導体。日本の半導体産業は世界に先んじて隆盛を極めている。歴史から現状までを再現映像も交えて紹介、この産業の全貌を描き出すシリーズ。（１９９１年１月２７日～９月２９日、全６回）◆第２回は、１９４７年にアメリカのベル研究所で発明されたトランジスタの衝撃、それに刺激された日本の若手技術者たちが物資も資金もない中で開発ノウハウを積み上げてゆく姿を描く。

漢方薬、鍼灸、気功など東洋の医学や健康法への関心が高まっている。東洋医学を科学の目で見直し、現代医療の中で果たす役割を考える。◆最終回では気功などの東洋の養生法が、不規則な生活を強いられ体のバランスを崩した現代人にどのような効用をもたらすか、その背景にある考え方とともに検証する。

１９９１年に死去した春日八郎さんを悼み、なつかしい歌の数々を送る。◆曲目は以下の通り。「別れの一本杉」「お富さん」「赤いランプの終列車」「雨降る街角」「ギター流し」「男一匹の歌」「あん時ゃどしゃ降り」「苦手なんだよ」「山の吊り橋」「長崎の女」「ロザリオの島」「王将」「会津磐梯山」「旅人」。

１８９０年７月、ゴッホが３７歳でピストル自殺を図るわずか１月前、彼は２枚の「ドービニーの庭」を描き上げていた。その１枚が、ひろしま美術館にある。当時、画家の町といわれたオーヴェールに、風景画家ドービニーの美しい庭があった。この絵にはゴッホの束の間の落ち着きと、詩情あふれる水辺の画家ドービニーへの尊敬の念がこめられている。ヒトラーにより退廃芸術としてベルリンから放逐された、数多い作品のなかの一枚でもある。◆シャルル・フランソワ・ドービニー（１８１７〜１８７８）「オワーズ河の夏の朝」１８６９、「日の出オワーズ川のほとり」１８６５、ヴィンセント・ヴァン・ゴッホ（１８５３〜１８９０）「ドービニーの庭」１８９０、「荒れ模様の空と畑」１８９０

ラファエロ・サンツィオがヴァチカンに呼ばれたのは、１５０８年、彼が２５歳の時であった。芸術家にとって人生最大の幸運だった。しかし、そこには先客、ミケランジェロがいた。かくて１０メートルと離れていない場所、署名の間の壁画「アテナイの学堂」とシスティーナ礼拝堂の天井画「原罪と楽園追放」で、２大天才画家による競作が火花を散らす。天才画家ラファエロが影響を受けたダビンチを含め、ヴァチカンの三巨匠の人間模様を描く。◆ラファエロ（１４８３〜１５２０）「アテナイの学堂」「教皇ユリウス２世の肖像」「大公の聖母」、ミケランジェロ（１４７５〜１５６４）「原罪と楽園追放」「ピエタ像」、ダビンチ（１４５２〜１５１９）「聖アンナと聖母子」

韓国の国宝の世界を、陶磁器と石造文化財に分け２夜連続で紹介する。◆韓国が生み出した最高傑作「高麗秘色」と讃えられる高麗青磁は、その翡翠の青が幻の色とされ、最近まで復元できなかった。また、李朝白磁は日本がその技法を学んでいる。韓国陶磁器の美の世界を、ソウル中央博物館蔵の逸品の数々や青磁の復元などで紹介する。