二人の旅人が平成の眼であらためて古寺を巡礼するシリーズ。◆安藤広重が描いた浮世絵「近江八景」の「三井の晩鐘」で知られる三井寺。琵琶湖の南西長等山の麓にあって、千三百年前の創建。正式には園城寺という。天智・天武・持統の三代の天皇が産湯に使い三つの井戸、三井寺の名の由来となった湧き水が、今も溢れ続ける。本尊は秘仏で、守護の仏たちの中には円空の彫った笑い仏もある。一切経を納めた回転式経蔵の紹介も貴重だ。旅人は女優・吉田日出子とパーカッション奏者・吉原すみれ。

矢作川上流に新しいアトリエを構えた鯉江良二を、料亭の料理長・稲垣幸久が訪ね、川原で宴を催す。◆愛知県常滑町に生まれた鯉江さんは、自分の顔の作品でセンセーションを起こし、広島・長崎など社会性のあるメッセージを送り、世界を旅し、陶芸界を代表する作家になった。土の中にあらかじめある気配を引き出して形にする、という。大胆で、勢いで器が歪むのも気にしない。それがそのときのあるがままの姿だからだ。◆流れる水、山奥の土でつくった銚子、宴はもりあがった。

日本六古窯に数えられる丹波の里、兵庫県今田町。彫刻家の新谷英子が、市野弘之を訪ねる。◆市野さん（当時７２歳）のろくろは、日本では珍しい左まわり。貼りつけ、いっちん描き、墨流し、などの技法を紹介する。奥さんと共同作業の「姫弟子」というろくろもある。◆新谷さんを採土場へ案内する。底のほうで白い層と出会うと、いい土なので嬉しくて例えようがない、と話す。土イコール作品なのだ。◆作家より職人になりたい、そして一期一会の心で作陶に励んでいきたいという。

脚本家で、直木賞作家の向田邦子が亡くなって１５年。親交のあった４人の女優が向田の代表的なエッセーを朗読し、かつて一緒に仕事をした３人の演出家が競作するシリーズ。ゆかりの地でのロケや、かかわりの深かった人たちへのインタビューも織り交ぜる。◆『岸田今日子が読む「女を斬るな　狐を斬れ」』は、深町幸男が演出する。

男の変貌と悲しみ、人間の根源に迫る時代劇。原作：藤沢周平「穴熊」「帰郷」。◆木曾福島藩吟味役・塚本伊織（緒形拳）は、御用人・磯野の不正を見つけ、口論の末に斬りかかられて逆に斬ってしまい、妻子を伴って江戸へ逃れた。しかし娘・おくみが患い、生活が苦しくなる。思いつめた妻・佐江（南野陽子）は伊織に黙って夜の商売に身を染めた。そんな佐江と知り合った浅次郎（平田満）は彼女に好意を持ち、伊織と組んで大金をせしめる。しかし佐江は絶望し、伊織の手にかかることを望む。伊織は佐江を殺し、浅次郎におくみを預けて、姿を消す。やがて、不死身の用心棒「弔いの伊之吉」の噂が流れた。１６年後、二十歳になったおくみの前にひとりの老人が現れた。

加藤清之（当時６４歳）は愛知県瀬戸市生まれ。画家に憧れたが、美術雑誌でイサム・ノグチのやきものの白黒写真に出会い、目を覚まされた。土のオブジェで活躍中だ。◆草月流家元勅使河原宏さん発注の花入の窯出しの日である。道具としてつくるとつまらないので、勅使河原さんは何も注文をつけず、加藤さんも花器としての配慮はしない。東京でそれに桃の木を活けると、焼けた土と植物のみずみずしさが、別の作品を創りだした。◆瀬戸の土にこだわる加藤さんを、土は静かに誘惑する。

それぞれ生き方は違うが、マンガ漬けの二人の日常を面白可笑しく描く。◆１５年前、阿蘇の小さな貸本屋でマンガ本を譲り受けようと争った二人の男性は、今もマンガと深く関わりながら生活している。同じマンガを競い合った二人だが、それぞれのマンガに対する考え方は全く異なるもので、一人は古本マンガは守るべきもので市場にのせてはダメだと言い、もう一人は古本マンガの価値を認知してもらうためには市場をつくるべきだという。

徳島県の東祖谷山村は平家伝説で知られる。険しい山々に張り付くように集落が点在する。各集落には平家にちなむさまざまな風習や伝説的な遺物があり、平家の影を見ることができる。正月、盆、秋祭それぞれに落人にからむ伝説と風習が生きつづけ、独自の文化を生んでいる。◆平家屋敷〔徳島県〕、十二所神社春祭〔徳島県〕、かずら橋〔徳島県〕、栗枝渡八幡神社〔徳島県〕