１９４３年１０月、学徒出陣が公布された。学業半ばの身で戦地に赴かなければならない学生たちは、せめて素晴らしい思い出を胸に悔いなく行きたいと「第九」演奏会を開いた。その実話に基づき、実らなかった恋をからめて描くドラマ。戦後５０年特別企画。◆東京帝国大学生・最上陸郎（筒井道隆）は、勤労奉仕で知り合った東京高等音楽学院に通う吉野佐和子（戸田菜穂）と心を通わせるようになる。しかしいつ戦地に駆り出されるか分からない身で恋を語るのは相手を悲しませるだけと戒められる。やがて陸郎も徴兵検査に合格。素晴らしい壮行会を開きたいという思いは、やがて第九の演奏会へとつながっていく。「歓喜よ、すべての人類は汝の優しき翼の下、友達たれ」その詞を歌いあげるためにはまだいくつもの困難があった。

北極点と世界最高峰のチョモランマ山頂をカメラマンとして踏んだ中村進が、地球３極点の最後のひとつ南極点へスキーマラソンで挑んだ、その冒険の記録。◆到達ずみの２極点への遠征の際、隊長をつとめた岩下莞爾ディレクターが１９９４年に亡くなった。遺志となった南極点への夢を抱いて、カメラマン中村進は雪と氷の大地を走る。マイナス３０度以下の酷寒、烈風、ルート上に突如現れるクレバスなど、極点への１３００キロの道のりは苦難の連続。体力の限界と闘いながら３９日目、ついに南極点に至った。

日本軍がタイとビルマの間に造った泰緬鉄道の建設には、朝鮮人軍属をふくむ日本軍、連合軍捕虜、アジア人労働者などが駆り出された。ジャングルでの重労働は多くの犠牲者を出したが、戦後日本は彼らに何の補償もしていない。アジアの人々に対する日本の加害責任を考える。シリーズ・５０年目の夏に（１）

１９８７年６月１日の放送開始以来、６０００回を超えて続く長寿ミニ番組。列車での旅を通して、美しい風景とそこに住む人々の生活を描く。◆今回は「ポルティコ」と題して、イタリア・ヴェネツィア・フィレンツェ・ラッダ・イン・キャンティの道のりを紹介する。

鳥取県中山町羽田井に残る「両墓制」の習慣を、実際の葬儀と盂蘭盆の行事を通して見る。◆死者の遺体を土葬にする捨て墓と、先祖代々をお参りする墓を持つ両墓制。近年は火葬もあるが、この地方では町の外れに遺体を埋める捨て墓と集落の中に魂を祭る祀り墓の２つを併せ持つ。お盆には祖先の霊への優しい言葉「コナカリ」を唱えて敬う。３８０人の羽田井の人々が大山山ろくで粛々と伝統を守り続ける、里の姿を追う。◆塞の神祭り、大山寺〔鳥取県〕

洋画界の重鎮・中川一政は、晩年、真鶴に住むようになり、福浦と駒ヶ岳を特に好んで描いており、油絵のほか日本画、書版画、陶芸にも関心を示すなど、幅広い創作活動を行った。また、１９８９年（平成元）には、町立の中川一政美術館が建設され、多くの人に親しまれている。中川一政が残した数多くの作品を鑑賞するとともに、その足跡を訪ね、画伯の人柄を探る。

冷戦後の激動する国際情勢の中で、防衛庁は「防衛計画大綱」を１９年ぶりに見直そうとしている。日本の新たな安全保障政策の進路を２回シリーズで探る。◆第２回では「自衛隊」に焦点を当てる。旧ソ連の潜在的な脅威が去った今、自衛隊の装備や兵力はどうあるべきなのか、防衛力のリストラをどう進め、新たな任務となった国際貢献（ＰＫＯ）にどう対応していくのか。ポスト冷戦の自衛隊のあり方を問う。

近代日本文学の名作を、当代一流の演出家が演出するドラマシリーズ。この回は、戦争の足音が忍びよる昭和初期、ミッション系の女学校を舞台に教師と女学生の愛を描いた石坂洋次郎の「若い人」。月曜特集・特別企画。◆昭和７年、北国の港町にあるミッション・スクール。国語教師の間崎慎太郎（高嶋政宏）は、生徒の江波恵子（朝比奈彩乃）の作文を読み衝撃を受ける。娼婦の母・ハツの私生児で父を知らない恵子は「私は男を知りたい。男を通して父親を感じたい」と綴っていた。教師仲間の橋本スミ子（鈴木京香）は、恵子の間崎への恋心に気づき複雑。スミ子もまた間崎に思いを寄せていたからだ。間崎は二人の女の間でふりまわされていく。