その紬は透明度があって丈夫で、軟らかくて腰が強く、渋みがあって暖かい。日本人の普段着「絣」。縦横二筋の単純な糸の組み合わせを、新しく現代によみがえらせた宗廣力三の絣織。◆精ちな技は、糸が奏でる美の世界を究極まで追究する。多くの若者を育て、土地の産業として紬織りを定着させた手腕は、美と善の集大成でもある。

子どもたちの興味を引く海の生物のミステリアスな生態を、バラエティー豊かなコーナーで紹介する。生物がもっとも神秘的な姿を見せる受精や産卵、孵化、誕生に至る場面などを、様々な映像技術で多角的に研究する。（１９８７年３月３日開始）◆全長２０００キロ、日本列島もすっぽり入ってしまう世界最大のサンゴ礁、オーストラリアのグレート・バリア・リーフから、サンゴのなぞに迫る。昼間は石のようなサンゴだが、夜は触手をなびかせ、動物プランクトンを捕まえて食べる。また、サンゴの赤ちゃん・プラネラ幼生は、波に乗って遠くの岩礁へと旅立つ。このような珍しい生態を紹介していく。ほかに、佐渡にある魚の温泉リポートも紹介。

１６年ぶりに実現した韓国の大統領直接選挙。各候補者の訴えや選挙戦の様子、選挙権行使の機会を得た国民の受けとめ方など、『民主化選挙』の実態を伝える。◆与党民正党からは盧泰愚候補、野党からは民主党・金泳三候補、平民党・金大中候補、共和党・金鍾泌候補と、４人の有力候補者が立った。各候補ともに『民主化』を旗印に、熱気に溢れる選挙戦をくりひろげた。韓国の有権者数は、２５８７万人でそのうち半分が３７歳以下と、比較的若い層が多い。韓国では殊に強い意味をもつ出身地意識、血縁組織などの事情も紹介しながら、盛りあがる選挙戦を中間報告する。１０月２７日の国民投票で、盧泰愚代表が大統領に。

戦国の世は徳川が制したが、幕府に対する不満や陰謀の火種はいまだくすぶり続けていた。世の太平を守らんとする徳川三代将軍・家光の活躍を、弟・忠長との継承争いや幾多の陰謀、由井正雪の慶安事変などを通して描く、長時間時代劇。（全六部・１３話）◆徳川幕府打倒を誓い、家光の宿敵であることを自らに定めた軍学者・由井正雪は、ついに幕府転覆の企てを本格化させる。家光の治世で大名の減封・改易がすすみ、多くの浪人が巷に溢れていた。再仕官の道も険しく盗賊や追いはぎにまで身を落とすものも多く、幕府に対する不満を鬱積させていた。正雪は彼らを自らのもとに集め始める。

日本経済新聞紙上で１９５７年（昭和３２）３月に始まった「私の履歴書」のテレビ版。一時代を築いた人物が出演、自らについて語る。（１９８７年４月８日〜１９８８年９月２８日、全７８回。出演者の肩書・年齢は放送当時のもの）◆第３３回は乾汽船相談役・乾豊彦さん（８０歳）。

琵琶湖の水面を渡る風にのって奏でる三味線の音色。その音は繊細な繭糸（生糸）から生み出される。邦楽器の糸作りの二代目・橋本家は賤ケ岳の山懐に抱かれた滋賀県木之本町にある。昔から糸の里として知られ、生糸を育てる良質の水があった。◆細い生糸を束ね、撚り、原糸１５０本を合わせ、染め糊付けまで１０以上の工程を経て音楽性と耐久性のある糸を作る。長い経験と技、更に情熱が加わって日本の音の元が生まれる。

陶芸家、書家、美食家として昭和初期に異彩を放った北大路魯山人の生涯を描く。鋭い美的感覚と爆発的なエネルギーで美味を求め、作り、食し、人々にふるまった魯山人の強烈な人物像に迫る。◆明治１６年京都に生まれ、捨て子同然に養子に出されて不幸な幼年時代を送る。しかし料理の腕はその頃からすでに周囲を驚かせるほどであった。成人後は書家として生計をたて、大雅堂美術店を開店、美食倶楽部を発足、さらに超高級料亭「星岡茶寮」を開設。料理を芸術の域にまで高めた。

考古学や地質学、建築史などの成果によって、当時の姿が明らかになってきた京都・平安京を、コンピューターグラフィックスの映像などを駆使して再現する。◆１２００年前の古都・平安京は、現在その姿をほとんどとどめていない。その正確な位置や主要な建築物の姿さえわからない幻の都である。造営されてから現在に至るまで、ずっとその上に人が暮らしてきたため、発掘が容易ではないからである。人工衛星映像を解析して古地形を探り、発掘成果をコンピューター分析して都の位置を確定、実験考古学の手法で造営技術を推理するなど、最新の科学技術によってその姿を追う。