常磐津の演目二題。「源太」は、宇治川の先陣争いなど、源氏の花形武者、梶原源太景季を吉原通いの伊達者に見立て、１８０８年（文化５）、三代目坂東三津五郎が初演して評判をとった出し物。これを下地に、５年後の１８１３年（文化１０）に七代目市川団十郎が、今度は平氏の武将、悪七兵衛景清を主人公に「景清」を演じ、これまた大当たりをとった。渡辺保は、源平合戦の華々しい戦いを廓の中の男女の戦争に移し替え、ユーモラスに換骨奪胎してしまう、江戸の庶民の洒脱な感覚に注目する。

奔放な母と、そんな母のために苦労を重ねながらも、時代に立ち向かう娘の確執を描くドラマ。（全２回）◆神波伯爵が病死し、朋子は愛する人の葬式にも出られない身には二度となるまいと誓う。母・郁代は年下の男衆と三度目の結婚をするが、本当に好きだったのは朋子の父だけだと言う。そんな母に呆れる朋子は、実業家の野沢に請われて再び日陰の身となる。その後、朋子は戦争で焼け出されて無一文になるが、戦後開いた料亭で成功する。ある日、かつての恋人・江崎が戦犯として絞首刑に処せられると知る。

平家の焼き討ちにより焼失した東大寺再興を命じられた重源は、不屈の精神と強い阿弥陀信仰をもって事に当たる。資金と材木の調達のため周防国司にも任ぜられ、大仏と大仏殿の再建を果たし、８３歳の時総供養を行った。その後もなお８６歳で生涯を閉じるまで東大寺再興に情熱をもやし、信仰を広めつづけた。彼を支えた阿弥陀信仰とはどんなものだったのか、また彼が各地に設けた別所での活動や、周防に伝わる重源考案の蒸し風呂を取材、民衆の力を東大寺造営に結びつけた精力的な一生を追う。◆【国宝】水晶三角五輪塔（周防阿弥陀寺）、浄土堂（浄土寺）、阿弥陀如来立像（浄土寺）、阿弥陀如来三尊像（浄土寺）、俊乗房重源上人坐像（東大寺俊乗堂）【重要文化財】重源上人像（新大仏寺）

１９９３年に開幕した日本プロサッカーリーグ。しかしそれまでの２年間は、日本のサッカー選手たちがアマチュアからプロへの厳しい選択を迫られた激動期だった。華やかなＪリーグの陰で、困難な道に挑み続ける若者の姿を描く。◆１９９１年、サンフレッチェ広島の前身・マツダサッカークラブに高校を出たばかりの６人の選手が入団した。大怪我などの厳しい試練を乗り越えてプロ契約を果した彼らだが、開幕の半年前には去る者と残る者とに分かれていく。

和歌山県内の地域活性化の動きを取り上げる週１回の番組。（１９８５年１１月１日開始）◆第４１９回。日高地方のトップを切って毎年１０月２日に行われる印南（いなみ）祭りは、印南町にある二つの八幡神社の例大祭。元来は別の祭りだが、同じ日に行われるため、総称して印南祭りと呼ばれている。山口八幡神社に伝わる地方（あげ）の雑賀踊り、印南八幡神社に伝わる箱獅子（獅子頭の形からこの名がある）は、それぞれ県の無形文化財に指定されている。エネルギッシュな印南祭りはまさに民俗芸能のオンパレードで、土地の人々に心のふるさととして大切に伝えられている。

近代日本文学の名作を、当代一流の演出家が演出する２週連続のドラマシリーズ。この回は、初老を迎えた大学教授の夫と貞淑な妻、その娘と恋人の４人の奇妙な関係を官能的に描いた谷崎潤一郎の「鍵」。◆昭和３０年正月、大学教授桐谷は妻・郁子との性生活の不満や体力の衰えに対する不安などを日記に記す。数日後、年始に訪れた娘・敏子の恋人の木村に郁子は親しげに接した。その夜郁子を抱いた桐谷は木村への嫉妬心が欲望を高めると知り日記に記した。そして日記を収めた手文庫の鍵を目につくところに置き、郁子が盗み読むように仕向けた。

日本文学の名作を当代一流の演出家が２週連続で競作するシリーズ。一高生と踊り子の心の交流を描いた川端康成の原作を、恩地日出夫が演出する。◆川崎は旅芸人の一行と共に下田に向かった。道中、踊り子は「下田に着いたら活動写真に連れていって下さいね」と何度も川崎に頼み込む。彼はそんな踊り子の無邪気な姿をほほえましく愛しく思う。一行は下田に到着。川崎は約束通り活動写真に誘うが、踊り子にはお座敷がかかっていた。二人の身分違いの恋を心配した母親のお芳の配慮だった。踊り子は母の言葉を噛み締め、川崎に別れを告げる。

「アジアの時代」先駆けること８０年余の明治時代、日本とアジアの理想郷を求めて生命がけで闘った宮崎滔天とその兄弟たちの生涯を描くドキュメントドラマ。テレビ熊本開局２５周年特別番組。◆明治から大正にかけて「抑制」と「植民地主義」の嵐が日本の内外に吹き荒れた。孫文とともに辛亥革命を成功に導いた日本人・宮崎滔天（杉本哲太）と彼の兄弟は、自分たちの理想のために「自由」と「民権」の旗を掲げてその嵐に立ち向かう。