枯山水は、石と砂の静かな空間が見る人の心に何かを語りかけてくる不思議な心の庭である。そこには古くからの日本人の自然観が込められている。室町時代まで貴族の社交遊楽の場だった庭が、この思索する庭へと変わった。◆水のない庭に、見えるはずのない水が満ちてくる。狭い空間が大海に、人の背丈より小さな石が巨岩となる。庭が語る静かな言葉のなぞ、枯山水。無限の宇宙へ誘う作庭の妙を見る。◆【国宝】紫式部日記絵詞〔五島美術館〕、北野天神縁起〔北野天満宮〕、山水図（雪舟筆）〔東京国立博物館〕◆【史跡・特別名勝】竜安寺方丈庭園、西芳寺庭園、大仙院書院庭園

信長の実弟・織田有楽斎（１５４７〜１６２１）の建てた茶室「如庵」の流転の歴史をたどり、作家・邦光史郎さんが有楽斎の心を探る。◆１６１８年、有楽斎は晩年を過ごした京都の建仁寺正伝院の中に「如庵」を建てた。「これは、戦国の世に教養人として生き抜いた有楽斎が自らの人生を刻み込み、彼の美意識の全てを注いだ、武家好みの端正な茶室である」と邦光さんは評す。明治時代になって、如庵は有楽斎の数奇な生き方をたどるように各地を転々とする。三井家の所有となり、東京そして神奈川県の大磯を経て、１９７０年（昭和４５）現在の地・愛知県犬山市に移築された。

瀬戸大橋の建設で、瀬戸内海をとりまく地域の状況は激しく動き始めた。検証・瀬戸大橋時代をメインテーマに、瀬戸内エリアの観光・経済などの新しい動きをタイムリーに伝える。（１９８８年５月７日～１９８９年９月３０日、全６９回）◆瀬戸大橋の開通を記念して開かれている瀬戸大橋架橋博’８８も前半が終了した。

米軍の試射場として政府に接収された石川県内灘村の反対運動を描くドキュメンタリー。◆政府が試射場候補地として内灘をひそかに視察したのは、１９５２年（昭和２７）９月。接収決定によって、反対運動は村民の範囲をこえて労働者・学生も参加、村は連日のすわり込みやシュプレヒコールで騒然となった。翌年、吉田茂首相の「バカヤロー解散」により衆参両院選挙が相次ぐが、石川県の参院選では現職の国務大臣が落選するなど内灘試射場反対運動は全国の基地反対運動に大きな影響を与えた。◆「ドキュメント石川　維新・デモクラシー・大戦」

日本経済新聞紙上で１９５７年（昭和３２）３月に始まった「私の履歴書」のテレビ版。一時代を築いた人物が出演、自らについて語る。（１９８７年４月８日〜１９８８年９月２８日、全７８回。出演者の肩書・年齢は放送当時のもの）◆第６２回は、世界経済調査会理事長・木内信胤さん（９０歳）。

平家一門の興亡を軸に、盛者必衰の理を描いた中世軍記物語の代表作「平家物語」ゆかりの地に美しい四季を訪ねる。現代の“琵琶法師”上原まりによる音曲をベースに風物、情趣、自然美を織り交ぜながら、人間の歴史と追想の中に日本の美を求める。

本当の父は別にいた。肉親と信じて帰国した後、人違いと分かった中国残留孤児のとまどいと、間違えられた男のせつない思いを描く。◆紀代子は中国残留孤児。肉親捜しの結果、下谷で小さな惣菜店を営んでいる茂が父親と判明し、日本に帰国した。茂の姪の正代は一人暮らしの茂の土地を当てにしており、帰国した紀代子をうとましく思う。茂は紀代子との生活を喜んだが、自分にも亡き妻にも少しも似ていない彼女に一抹の不安を感じていた。ある日、弁護士が訪ねてきて紀代子は茂の子供ではなく、今は資産家になっている保子という人の子供・清子だと告げる。

東北・上越方面へ向かう定期夜行列車の中で唯一残る急行「八甲田」に乗り込んで上野から青森へ。深夜の停車駅の表情を織り込みながら１２時間の人生ドラマをレポートする。◆「八甲田」はいま残る夜汽車の最長距離列車。上野発２１時１８分、青森着９時８分、７３５．６キロを約１２時間で走り抜ける。北海道まで帰る出稼ぎの労働者、セールス回りのサラリーマン、観光旅行のＯＬ、受験生、駅弁売りなど、北を目指す乗客は様々だ。