作家・早乙女貢氏が福島県に関わりのある人物の足跡をたどり、その素顔をさぐるシリーズ。◆「ロスで剣の道を貫いた男」。戊辰戦争時、会津藩を救援して官軍と戦い、戦死した森要蔵の曾孫である昭和の剣士・森寅雄。渡米して剣道を広めながらフェンシングのチャンピオンになり、米国オリンピックチームのコーチとなった。日系人たちの支えとなり剣道を国際的なものとするために奔走した一生を追う。

大和・富雄の里に立つ古刹・霊山寺。７３６年聖武天皇の勅願で建立された。関わったのは東大寺大仏造立の功労者・行基と、大仏開眼の導師として開眼筆をとったインドの婆羅門僧・菩提僊那。奈良時代、日本に招かれた菩提僊那は難波津で行基に出会い、平城京への途中で建設中の仏教道場に立ち寄った。そこを霊山寺と名付け、死後埋葬するように言い残したという。この地に眠る菩提僊那の足跡、数多くの寺宝を蔵する霊山寺の歴史をたどり、法要や秘仏の御開帳などの様子を紹介する。◆【国宝】霊山寺本堂（内陣、外陣）【重要文化財】薬師如来坐像（霊山寺）、日光・月光菩薩立像、大日如来坐像、十二神将立像、阿弥陀如来坐像

加藤清正が築いた天下の名城・熊本城。百戦錬磨の清正の城だけあって堅牢無比、強固にして実戦的、機能美を兼ね備えている。加藤氏の改易後に入城した細川氏は武よりも文の家柄で、茶道や能などの文化を花開かせた。参勤交代の際に用いられた御座船・波奈之丸の屋形部分が現存し、その豪華さには目を見張らされる。そして明治１０年に勃発した西南戦争で、熊本城は戦国期にもなかった攻城戦をくぐる。火災で天守閣を失ったが、城自体は近代兵器の猛攻撃にも陥ちなかった。加藤の剛と細川の雅、二面を持つ城の物語。◆【重要文化財】熊本城長塀・東十八間櫓・北十八櫓・平櫓、田子櫓・七間櫓・十四間櫓・四間櫓、細川家船屋形【その他】加藤清正像、肥後胴田貫正国、黒地九曜紋たきもの壷と御台

東京・下町の古アパートを舞台に、個々がしだいに共存に目覚めていく時代の予感をユーモアとペーソスで描く。「個と共存」のテーマをリアルな生活感覚と情感豊かな映像で表現する。（１９９３年４月１７日～５月１日放送、全３回）◆治郎はかつての部下・高田の口ききで、２年ぶりに家に帰る。が、仕事を持って自立した妻も、息子も喜ばず、治郎はアパートへ戻る。アパートでは智樹が痴漢と疑われ警官の訪問を受けていた。集まった住人たちに、人の世話はいいから自分の世話をやけと智樹は怒鳴る。治郎は智樹に「人の世話をやかなかったら、バラバラに生きているだけだ」という。

日本全国の大根市場を「青首」一種が独占しようとしている。その陰で細々作られている地方固有種の大根の状況を通して、現代日本の農業の姿をかいま見、失われた日本の自然や心の反映とする。◆日本の大根の種類は確認されているだけで１５０種以上もあり、明治３８年の統計開始以来野菜の作付面積第１位の座を占め続けている。そして今、そのほとんどが「耐病総太り」通称「青首」。農家にとっては労力軽減と収益増につながり、流通業者にはスの入りにくさと売り易い形質が有難がられ、消費者には甘くて幅広い調理に適すると喜ばれてまたたく間に普及した。

水俣病の発生から４０年、裁判の長期化で被害者たちは救済されないまま長い年月をすごしてきた。事実の検証から責任の所在と構造的な問題を探る。◆戦後最大の公害事件である水俣病は、企業優先の国策の結果起きた悲劇である。しかし国は高齢化する被害者をよそに裁判を長期化して争い、裁判所が出した和解勧告も受け入れずにきた。国の政策に対する“メンツ”が指摘される中、なぜこうした悲劇が発生、拡大したのか、被害者たちは何を訴え闘ってきたのかを探る。

江戸時代の床屋は町内の若い衆のたまり場で、多くの情報を交換して楽しんだ。そんな雑談のなかで一人の男が年増にモテた話をはじめる。おまえのような男がと冷やかすうちに、皆もだんだんと引き込まれてしまう。話が盛り上がって、女といよいよというところで声がかかって目を覚ましたというと、「誰だ、そんなところで起こす奴は」とオチがつく。

チベット高原からヒマラヤ山脈を越え、インド平原へ通じる“塩の道”を、３００日かけて旅するチベット系遊牧民を取材。１２歳の少年を中心に、塩や米の物々交換、遊牧生活などを、大自然を背景に描く。◆６００匹のヤギと羊に塩袋を積み、ヒマラヤ山中のネパール、タンギン村からインド国境のチソバニへ、全行程は７５０キロ。この交易の旅に初めて加わるダンドゥラーズ君は、羊やヤギの世話をする。最初のキャンプ地でヤギに子供が生まれ、スクリと名付けられる。好奇心あふれる子供の目を通して、チベット遊牧民の生活を紹介する。