新聞記者のカップルが上司の死の謎を追ううちに、日本最大のスパイ事件と言われる“ゾルゲ事件”につきあたる。第５回サントリーミステリー大賞と読者賞を受賞した「土壇場でハリー・ライム」のドラマ化。いしだあゆみがリポーター役。◆１９６７年（昭和４２）、新聞社の部長・月田が会社ビルの屋上から転落死した。警察は自殺の線をとるが、部下の真木（岩城滉一）にはそうは思えない。同僚の明日香（坂口良子）とともに月田の身辺を調べると、最近なぜかゾルゲ事件関係の本を読みあさっていたことが判明する。死の１０日前にあった偽ゾルゲ事件となにか関わりがあるのだろうか。

　いま子供たちが置かれている状況を見つめる４週連続シリーズの第１回。全寮制の小さな高校の生徒たちと書道を教える９５歳の先生との交流を通して、教師と生徒のあり方を見つめ直す。◆日本有数の豪雪地帯・山形県小国町にある「基督教独立学園」は「神を畏るるは学問の始め」をモットーに、受験教育を否定して“聖書”“自然”“労働”を通して真の人間教育を探求している。この学園の３年生たちは「ヤブの中でへき地の人たちと生きる“ヤブ医者”になりたい」「いい百姓になりたい」と真剣に、くったくなく語る。９５歳で現役の教師・桝本楳子先生は生徒たちを静かに見守るだけだが、その存在そのものがひとつの教育になっている。

山口県出身の画家・香月泰男の生涯を童話風に構成し、家族そろって見られるよう影絵を使って映像化した異色のドキュメンタリー。物語は、香月が戦争に駆り出されるところからはじまる。敗戦後シベリアへ抑留された香月は、帰国の日、帰任に捕虜の食料であった豆を持ち帰った。イギリスの童話「ジャックと豆の木」に出てくるサン・ジュアンの豆である。香月家の庭にまかれた豆の１つぶが芽を出し、すくすくと育った。彼は「この豆の木には、戦争をしてはいけないという願いがこめられている」と、子どもたちに話した。戦争で死んだ者への鎮魂と平和への祈りをこめた作品を描き続けた画家は亡くなったが、平和のシンボル、サン・ジュアンの豆の木は、空高く枝を広げている。

世界で最も権威ある賞といわれているノーベル賞。その受賞者がどのようにして決定されるのかは、これまで秘密のベールに包まれていた。３年越しの交渉の結果、ノーベル財団はＮＨＫ取材班に対して内部の撮影や関係者のインタビューを初めて許可した。１９８７年、ノーベル医学生理学賞には利根川進さんが選ばれた。番組ではその受賞をケーススタディに、１０年以上もかけて有能な学者の業績を見守ったり、世界中に調査員を送り込みその業績を徹底的に調べあげるという受賞者決定のメカニズムを明らかにするとともに、１９０１年の第１回受賞者発表以来、ノーベル賞が果たした役割を紹介する。

東京・ＴＢＳのスタジオに２００人、モスクワとウラジオストックのスタジオに各２００人の日ソ市民を集め衛星中継を通じて話し合う、日本とソ連の初の市民間の対話。北方領土、言論の自由、サハロフ博士などについて激論が交わされる一方、女性の地位についてなど互いに共感する場面もあった。

ベトナム戦争で日本に里子に出された少女を追った３本のドキュメンタリーを素材に、波乱の半生を生きる１人のベトナム人女性を描く。◆ホー・ティー・キューは１９６９年（昭和４４）にベトナムからの里子第１号として１２歳で単身来日し、その愛くるしさで一躍「時の人」となった。故国ベトナムが戦火に揺れた激動の時代、１２歳から２４歳までを福島県原町の里親のもとで青春を送った。その後看護婦となってドイツに旅立った。戦火、そして難民となっていく同胞の運命を見つめながら彼女はなにを感じていたのか。

円高に経済摩擦と世界中から激しく揺さぶられる経済大国・日本。問題はすでに対外的なものだけでなく、日本全体のシステムにかかわるものとなった。国際協調型の産業構造への転換を要求される日本の現在と未来に迫る。（１９８７年５月１５日開始、全３回）◆１０パーセントを超える失業率に苦しみ、日本製品が産業を圧迫しているとして日本を攻撃するＥＣ諸国。製品に反ダンピング関税をかけ、一方で企業を誘致して雇用の確保につとめている。現在、日本の失業率は３パーセント台。これからの日本の雇用はどうなるのか、ドキュメントと構成討論で考える。

歌舞伎界の名門・中村家。人間国宝・中村勘三郎の長男、中村勘九郎の息子たち初舞台までの１８０日間を取材、伝統芸能継承に挑む幼い二人の姿を紹介する。◆「門出二人桃太郎」で念願の初舞台に立つことになった雅行くん（２代目中村勘太郎）と隆行くん（２代目中村七之助）。一人前の歌舞伎役者になるための厳しい修業に明け暮れていても、素顔は遊びたい盛りのごく普通の男の子。そんな二人がいかにして歌舞伎役者として自分自身を築いていくか、勘九郎夫妻の目には不安と期待が入り交じる。孫に稽古をつける勘三郎の表情も追う。