かわいく、あどけない表情の人形たち。日本には精ちな工芸品としての人形が多く残っている。単なる鑑賞品ではなく、女にとっては暮らしに欠かせぬ人生の同伴者でもあった。江戸から昭和まで広く「市松人形」と総称されたのは、江戸中期の人気役者・佐野川市松から来たもの。その成立過程や人形制作の移り変わり、人形に魅せられた人々の心情を織り交ぜて、遠い過去の記憶となりつつある人形への思いを致す。◆三折れ人形万勢伊さん〔宝鏡寺〕、三折れ人形童女〔京都府立総合資料館〕、三折れ人形童児

幕末に洋学導入の場であった七尾語学所について、今井一良さん（日本英学史学会北陸支部長）に聞く。◆ペリーが来訪し大政奉還へと幕末が動く。加賀藩はそんな維新には乗り遅れたが、海防の強化、語学・科学技術の必要性を感じ、対策を講じた。壮猶館の開設と、それを発展させた七尾軍艦所、七尾語学所の設置である。◆そこにはパーシバル・オーズボンなど６人のお雇い外国人が来て、日本人と結婚した者、日本の墓に入った者など、国際交流の先端の役割を果たした。

ヨルダンのアンマンから東へ８０キロ、アズラック避難民キャンプには１６０００人収容のテント群が砂漠の中にひろがる。空爆下のイラク・クウェートから避難してきたさまざまな民族のこのキャンプでの生活を軸に、アラブ民族が抱える複雑な中東情勢を展望する。

ラファエロ・サンツィオがヴァチカンに呼ばれたのは、１５０８年、彼が２５歳の時であった。芸術家にとって人生最大の幸運だった。しかし、そこには先客、ミケランジェロがいた。かくて１０メートルと離れていない場所、署名の間の壁画「アテナイの学堂」とシスティーナ礼拝堂の天井画「原罪と楽園追放」で、２大天才画家による競作が火花を散らす。天才画家ラファエロが影響を受けたダビンチを含め、ヴァチカンの三巨匠の人間模様を描く。◆ラファエロ（１４８３〜１５２０）「アテナイの学堂」「教皇ユリウス２世の肖像」「大公の聖母」、ミケランジェロ（１４７５〜１５６４）「原罪と楽園追放」「ピエタ像」、ダビンチ（１４５２〜１５１９）「聖アンナと聖母子」

日ソ間に横たわる問題をテーマに５回に渡って特集する。（１９９１年４月１〜５日放送）◆タラコを取り、すり身の原料となるスケソウダラ漁をめぐってこの冬日本とソ連、北朝鮮と韓国が国際漁業戦争をくりひろげた。大衆魚・スケソウを目当てに展開される漁業戦争と変わる北洋の姿を描く。

かつて世界四大美術館として栄光ある歴史を誇ったベルリン美術館では、独裁者ヒトラーの出現、戦争そして東西分割により多くの芸術遺産が焼失し分散した。ヒトラーの美意識と相いれない美術品は「退廃芸術」として焼却され、もしくは戦費調達のため海外へ売却される運命となる。◆ベルリン美術館の悲劇の美術品の流転と、東西統一により再興されつつある現状を見る。◆ペルガモン大祭壇、五月柱（ゴヤ作）、ポントワーズ・クールヴ河畔の水車小屋（セザンヌ作）、ひざまづく女（ベーヌブルック作）、パプア島の若者たち（ノルデ作）、金色の魚（クレー作）

太平洋戦争の開戦は、１９４１年１２月１日の御前会議で最終的に決められた。防衛庁戦史部の機密資料や当事者の新証言を軸に、当時の国際情勢を織り込みながら、４回にわたる御前会議を節目に開戦へ進む日本の姿を描く。

日常の中にまぎれこんでくる奇妙な出来事、不思議な事件、おかしな人物を描く、オムニバス形式のドラマシリーズ。ストーリーテラーはタモリ。◆「時間よ止まれ」：ある朝、高校生の勇一（山本淳一）はクシャミをすると数十秒間だけ時間が止まることに気付く。早速、学校で先生に恥をかかせたり、更衣室をのぞいたりしてイタズラを楽しむ。しかし、同級生の夏子（東いづみ）だけは止まった時間の中で動くことができた。◆「あの日に帰りたい」：小さな工場の研究員・和彦（松尾貴史）は、妻の玉枝（村上里佳子）や子供たちに大事にされず、過去の選択を後悔する日々を送っている。一方、大学時代に和彦と一緒に研究していた佐藤（五代高之）は、なんとタイムマシンの開発に成功したという。◆「視線の町」：一年前に妻を亡くした有二（林隆三）は、娘の蛍子（林美穂）とともに東京から郊外の町に引っ越してきた。ある日、父娘でいつものように散策を楽しんでいると、突然に霧が立ち込めて、二人は時代劇に出てくるような古い村に迷い込んでしまう。原作：綾羽一紀。