山口高女生１５０人は学徒特攻隊として昼夜２交替の労働を強いられ、１６歳の青春を「風船爆弾」の製造に明け暮れた。戦争の悲劇、愚かしさを訴える。◆「風船爆弾」は和紙をこんにゃく糊で張りあわせた直径１０メートルの気球に爆弾を吊し、およそ１万個を風に乗せて飛ばしアメリカ本土の直撃を図るというもので「ふ号」と呼ばれる秘密兵器だった。戦後４０年が過ぎて、爆弾を作った女性たちはこの風船爆弾がアメリカ本土に到達し、オレゴンの牧師夫人と子供６人が犠牲となり“オレゴンの悲劇”として語り継がれていると知った。

地中海の真珠と呼ばれるイベリア半島南部の町・マラガで生まれたパブロ・ルイス・ピカソは、幼い頃から絵を描くことに興味をもつ。美術学校の教師だった父は、ピカソに画家の夢を託す。父の転勤でバルセロナへ移り、モダニズムの拠点、カフェ“クワトロ・ガッツ”に出入りした幼年期。農村オルタ・テ・サンファン村での静養期。パリでの親友カサヘマスの自殺。絶望から希望への転換期。“青の時代”入口までの若き日のピカソとその作品を紹介する。◆パブロ・ルイス・ピカソ（１８８１〜１９７３）「自画像」１９００、「闘牛と六羽のハト」１８９０、「科学と純愛」１８９７、「初聖体拝領」１８９６、「父・ホセ・ルイス・ブラスコの肖像」１８９６、「ハイメ・サバルテス」１９０１

古来、人々は見えざる神を見、畏れ、祀った。それが祭りの原形。農耕の民である人々にとって田の神を祀る儀礼は多様で、奥能登の『あえのこと』、広島・壬生の『花田植』などにその原点をみる。都市で生まれた祭りは京都の『祇園祭』。日本各地の祭りは、ほとんど祇園祭の流れをくむ。自然を恐れ神に祈る心は、厳粛な神事からやがて神と一体になる歓楽へと姿を変え、次第ににぎやかさと贅を極めていく。祇園祭の山ほこの数々に「祭り」の典型を見る。◆【重要文化財】祇園祭礼図〔出光美術館〕◆【重要無形民俗文化財】能登のあえのこと〔石川県〕、京都祇園祭の山鉾行事〔京都府〕、壬生の生田植〔広島県〕

助産婦をめざす若い娘たちが妊婦とのふれあい、失恋、両親の離婚、病気とさまざまなできごとに直面しながら、人生に対するひたむきさと若さで乗りこえていく。青春時代の喜びと悲しみ、そして生命の誕生にともなう感動をうたいあげる。看護婦学校から助産婦学校に進学した鶴田カメは元気ながんばり屋だが、カメという古風な名前にコンプレックスをもっている。両親の離婚も恋人の励ましに支えられるが、助産婦としての実習では生命誕生の感動に興奮のあまり失敗し自己嫌悪に陥り恋人との仲もまずくなる。傷心のカメは離れ島で医者をしている父を訪れる。そこで突然の出産に立ち会い、自信を取戻し一人前の助産婦として成長していく。

１９８５年１０月２７日、パリのマルモッタン美術館で印象派の絵画９点の盗難事件があり、モネの「印象・日の出」が含まれていたことで国家的事件として騒がれた。印象派の名前の由来となったこのモネの名作は、７年後、幸いにもコルシカ島で見つかり元のさやに納まる。晩年、モネが創作拠点としたジヴェルニでの「睡蓮」の制作事情や、２３３枚の浮世絵コレクションなど、日本とも深い関わりをもつ彼の画業の周辺をさぐる。◆クロード・モネ（１８４０〜１９２６）「印象・日の出」１８７３、「ジャン・モネの肖像」１８８０、「ツール美の海岸でのカミューヌ・モネと従妹」１８７０、「オランダのチューリップ畑」１８８６、「睡蓮」１９１９

狂言の代表的な女性のキャラクター「わわしい女」の登場する狂言をいくつか見て、狂言の本質を説く。手話狂言も見る。◆わわしい女とは、男勝りの肝っ玉のすわった女とでも言えようか。狂言では男女平等の精神が題材になっているものが多く、これがおかしみを誘っている。狂言の面と装束も能とは違っている。ほかに手話狂言に援助を行う黒柳徹子をゲストに迎えて、援助を始めた動機などを聞く。◆副音声は英語

優れた屏風図のコレクションを持つアメリカ・カンサスシティにあるネルソン・アトキンス美術館。江戸初期の後水尾帝即位を描いた『即位図屏風』など右隻と左隻を平行に並べるという屏風絵本来の作品鑑賞法を導入し、立体的にその美を展示構成した。同時に、特にセクションを設けないこの美術館独自の展示方法で、日本美術の長所と理解に努力する姿勢を紹介する。◆視線が進むうちにあたかも現実を見ているかのような臨場感に浸り、屏風図の中に潜む時代背景がよみがえる。◆即位図屏風〔ネルソン・アトキンス美術館〕、松梅月図屏風（海北友松筆）、菊図（北川宗雪筆）、一谷合戦図屏風、洪水図屏風、山水図屏風（富岡鉄斎筆）、川に蛍図屏風（文琳筆）

ラファエロ・サンツィオがヴァチカンに呼ばれたのは、１５０８年、彼が２５歳の時であった。芸術家にとって人生最大の幸運だった。しかし、そこには先客、ミケランジェロがいた。かくて１０メートルと離れていない場所、署名の間の壁画「アテナイの学堂」とシスティーナ礼拝堂の天井画「原罪と楽園追放」で、２大天才画家による競作が火花を散らす。天才画家ラファエロが影響を受けたダビンチを含め、ヴァチカンの三巨匠の人間模様を描く。◆ラファエロ（１４８３〜１５２０）「アテナイの学堂」「教皇ユリウス２世の肖像」「大公の聖母」、ミケランジェロ（１４７５〜１５６４）「原罪と楽園追放」「ピエタ像」、ダビンチ（１４５２〜１５１９）「聖アンナと聖母子」