がんで余命わずかと宣告されたものの、「自分の死」が呑み込めない男。安らかに死を受け入れるために、病室を抜け出し、わが家を捨て、てい髪・出家して行脚の旅に出る。◆食道がんであと３か月の命と宣告されたアオキは、管理された死ではなく自然のままに死にたいと考える。近くの寺でてい髪し、雲水姿で旅に出るが、彼を優しく包み込んでくれる自然も人情も今の日本にはなかった。途方に暮れた彼は野たれ死にを願ってニューヨークに向かう。ニューヨークの街をアオキは放浪するが、死は彼を訪れずそばの他人ばかりが死んでいく。自分の意志による死を求めてアオキはさすらう。

新印象派の創始者でパリ生まれのスーラ。ゴッホなどと印象派を超えることに人生をかけた。スーラは、彼らの表現方法を科学的理論的に発展させて点描画法を編み出した。絵の具で細かく描かれた“点”は、計算された構図の中できらめく光を放つ。大作「グランド・ジャット島の日曜日の午後」は、１９世紀末の風俗と社会現象を忠実に描写した点描画として記念碑的な作品。３１歳という若さでこの世を去るが、スーラ死後、点描主義も姿を消すこととなる。◆ジョルジュ・スーラ（１８５９〜１８９１）「サーカス」１８９１、「パレード」１８８７−８８、「化粧する女」１８９０、「画家の母」１８８３、「杖にもたれる後姿のモデル」１８７７、「子牛をかつぐ男」１８７６

東欧の変革に始まった激動は第２次大戦以後の世界を支配した冷戦に終わりを告げ、世界の枠組みが音をたてて動き始めた。ある意味で世界秩序の安全装置だった東西冷戦構造が崩れた後、世界はどう変わろうとしているのか。（１９９１年４月６日〜１２月８日、全６回）◆世界のマネーの動きが大きく変わろうとしている。ソ連・東欧、湾岸地域などでは多額の資金を必要とするようになったが、一方で世界へ資金を供給してきた日本とドイツが急速にその力を低下させた。世界が資金不足に直面する中で、新しい経済秩序はどう作られるのか、世界の識者の分析を含めて問題の所在を探る。

百万都市、花のお江戸。武家と町人が相半ばする町。発展を陰で支えた町方の女たちのファッションを、浮世絵や川柳を絡めながら跡付ける。かつての十二単の下着だった小そでを表着として着こなし、粋に自由に生きた江戸の女。明暦大火（１６５７年）後、着物の需要に応じて生まれた友禅、そでを長くした華麗な振りそで、渋くて地味で気品のある小紋など。◆江戸期の着物文化を通し、歌舞伎や遊女の流行に合わせ美を競った江戸の女の心意気を描く。◆江戸図屏風〔国立歴史民俗博物館〕、両国橋上橋下（歌麿筆）〔東京国立博物館〕、目黒行人坂火事絵巻〔東京消防庁〕、東都両国橋夕涼図（英泉筆）〔名古屋市博物館〕

間寛平の「かいーの」やチャーリー浜の「じゃあーりませんか」など、新しい笑いを全国に送り出しつづける吉本のギャグ。それらの土壌となっている吉本新喜劇をはじめ、吉本の魅力の深さを紹介する。◆吉本新喜劇は吉本の神髄。本場、なんばＮＧシアターから舞台を中継、お客と一体になった笑いをお茶の間へ届ける。また、新作ショートコント、定番ギャグなど、それぞれのキャラクターを生かした笑いの数々を紹介する。

普通高校受験に挑戦する全盲の息子を支えた母の愛情と、心温まる兄弟愛を描く。障害者とその家族への応援歌として制作された、浜木綿子主演「おふくろシリーズ」第７作。◆大須賀孝子（浜木綿子）は盲学校に通う１５歳の息子・直人（大沢健）と２人暮らし。生まれてすぐに失明した直人にかかりっきりだったため、夫・誠一や長男・良一をかまってやれず、１０年前に姑から別居を迫られた。姑の急死に、直人を連れて通夜にでかけた孝子は、転勤になるので大学受験を控えた良一を預かってくれと夫に頼まれる。孝子は息子２人と暮らすことになるが、良一は孝子を母とは呼ばず、盲目の弟をうるさがる。良一にばかにされた直人は普通高校を受験すると言い出した。◆解説副音声と字幕表示あり

日米両国の歴史を変えた真珠湾攻撃から半世紀。両国が開戦に至る経緯と運命の日のようす、戦後どのように語り継がれてきたか、そしていま両国にどのような意味を持っているのかを、アメリカ側をＡＢＣ、日本側をＮＨＫの取材で考える。◆１９４１年１２月８日、山本五十六率いる連合艦隊がハワイのオアフ島真珠湾に停泊中のアメリカ太平洋艦隊に奇襲攻撃を加えた。アメリカ側はアリゾナなど主力艦を失い多数の死傷者を出し、奇襲を成功させた日本にしても敗戦への道を踏み出したことになる。◆日米双方のジャーナリスト、軍関係者、政治家などの証言を集め、史実を突き詰める。

１９８７年６月１日の放送開始以来、６０００回を超えて続く長寿ミニ番組。列車での旅を通して、美しい風景とそこに住む人々の生活を描く。◆今回は「朝の紅茶」と題して、イギリスの保存鉄道・ワイト島鉄道を紹介する。