１２年間５度にわたる渡航の失敗の後、盲目となって来日を果たした鑑真和上（６８８〜７６３）の開いた戒律の道場・唐招提寺。「出家した者は他人の捨てたものを使えばよい」という鑑真の仏教思想から、建築には古い木材を再利用した。それまでの国家仏教としての一部の階層のための仏教を、あまねく衆生に仏の慈悲を広めようとする「戒律」の仏教とした。多くの民衆の願いは千手観音や千釈迦の仏像に再現され、天平の鑑真の理想は現代までその姿を変えない。◆【国宝】唐招提寺金堂、講堂、経蔵、宝蔵、盧舎那仏坐像〔唐招提寺〕、千手観音立像、梵天、帝釈天立像、四天王立像、薬師如来立像

標題の講談の中から「飛鳥山・父子の別れ」の一席を聞く。身分を隠して別れる父子の愛をテーマにした人情話である。吉松という職人が、若い時の過ちがもとで、昔仲間の悪党から折角の平穏な暮しを壊される。再出発したある日、別れたままで探していた子供に偶然出会う。その日暮らしの母子の話を聞いた吉松は、立場を隠して金を渡し、子供を見送って去る。

１９９１年８月に死去した本田技研工業の創業者・本田宗一郎氏を、盟友のソニー名誉会長・井深大氏がさまざまなエピソードを織り交ぜながら偲ぶ。◆ホンダ、ソニーといえば常に技術の最先端を目指す企業として世界的に知られているが、その創業者の本田さんと井深さんはともに開発の旗手としてモノ作りにこだわってきた盟友であった。戦後日本をリードしてきた井深さんの談話を軸に、関係者の証言する秘話、未公開の映像、写真などの資料、社内報などに残された本田さんの言葉の数々を交え、“技術屋”の歩んだ戦後の日々を描く。

ユトリロは、１８８３年、芸術の都パリの片隅で母シュランヌ・バラドンの私生児として生まれた。１０歳で祖母に引取られ、１７歳でアルコール中毒となり、２度も精神病院に入院する。コスモポリタンの街パリには、ユトリロの境遇に似た人生を送る人が少なくない。モンマルトルのテルトル広場で絵を描く人、街頭をさ迷う少年とユトリロを重ねる。母への倒錯した愛を持ちつづけ、「白」と「人物不在」をモチーフとした天才画家ユトリロの生涯をみる。◆モーリス・ユトリロ（１８８３〜１９５５）「ノルバン街」１９１０、「テルトル広場」１９１１−１９１２、「トロズ街」１９１３

宗教を題材にした漫画や入門書が２０代３０代の若者に多く読まれている。そんな中で古くから日本人に親しまれている仏教経典「般若心経」も密かなブームとなっている。たった２６２文字の中に宇宙の真理や人生の哲理が凝縮されているという般若心経。説法や漫画、音楽を立体的に組み合わせながら、般若心経をヤング向けに分かりやすく解説する。◆お話は龍源寺住職の松原哲明師。「ファンシイダンス」の作者・岡野玲子さんへのインタビューや、サラリーマンの早朝座談会の模様も紹介される。「トライアルＴＶ」。

校内暴力や登校拒否が増加する一方で高校進学率は９割を超え、義務教育の仕上げの場であった中学校は、高校進学選別の機関になりつつある。公立中学を取り巻く状況とこれからのあり方を３回シリーズで取り上げる。（１９９１年１１月１６日終了）◆第１回は各地の公立中学を取材し、義務教育の現状をリポートする。私立中学に進学する生徒が増加したため、平均学力が低下した東京の区立中学、「丸刈り」やクラブ活動の見直しが進められている愛知の中学など、私立志向に揺れる中学校の姿を伝える。

日ソ間に横たわる問題をテーマに５回にわたって特集する。（１９９１年４月５日終了）◆日本側の根強い返還要求にもかかわらず、歯舞・色丹・国後・択捉の北方４島から日本人が去って４６年の歳月が経ってしまった。北方４島の豊かな自然や住民の暮らしを伝える。ＮＨＫの依頼を受けたサハリン州のテレビ局が取材。

古来、人々は見えざる神を見、畏れ、祀った。それが祭りの原形。農耕の民である人々にとって田の神を祀る儀礼は多様で、奥能登の『あえのこと』、広島・壬生の『花田植』などにその原点をみる。都市で生まれた祭りは京都の『祇園祭』。日本各地の祭りは、ほとんど祇園祭の流れをくむ。自然を恐れ神に祈る心は、厳粛な神事からやがて神と一体になる歓楽へと姿を変え、次第ににぎやかさと贅を極めていく。祇園祭の山ほこの数々に「祭り」の典型を見る。◆【重要文化財】祇園祭礼図〔出光美術館〕◆【重要無形民俗文化財】能登のあえのこと〔石川県〕、京都祇園祭の山鉾行事〔京都府〕、壬生の生田植〔広島県〕