３８歳で世を去るまで自分の娘をモデルに２０余枚の肖像画「麗子像」を書きつづけた画家・岸田劉生。ジャーナリストの先駆者・岸田吟香の四男として東京銀座に生まれ、１５人兄弟のなかで育った。激しい気性で友人は少なかったが白樺派の武者小路実篤とは終生親交があった。ゴッホに心酔した時期、ルネッサンスの旗手デューラーに傾倒した時期。長女麗子の成長とともに変貌をとげ、彼独自のスタイルを作り上げた。◆岸田劉生（１８９１〜１９２９）「麗子微笑」１９２１、「童子像」１９２１、「野童女」１９２１、「二人麗子図」１９２２、「自画像（２２歳）」１９１３、「黒き帽子の自画像」１９１４、「二階より」１９１３

天才物理学者アルベルト・アインシュタイン（１８７９〜１９５６）に関係する言葉をキーワードに、彼が考え到達した「知の世界」を理解する、いわば広大な頭脳宇宙へ旅するシリーズ。（１９９１年４月２６日〜１２月２２日、全８回）◆アインシュタインの一般相対性理論の帰結「アインシュタイン方程式」は、単純な一行の数式の中に時空の全てを矛盾なく説明しようというもの。それは現代の最新宇宙論の最も基礎的な部分となる重要な方程式である。アインシュタイン方程式の世界を、“悪魔の謎かけ”として分かりやすく描く。

近代化の中で消えつつある伝統技能、今も脈々と受け継がれている職人技術を横浜市内各地に訪ね、手作りの工程や職人さんたちへのインタビューを交え、年一番組という地道なペースで記録しているシリーズ。◆今や世界のスカーフの６０％を生産する横浜。開港当時のシルクハンカチづくりや昭和初期のスカーフの輸出など、その歴史をたどりながら、型紙に変わりスクリーン方式によるスカーフ作り、そして昔ながらの技法・捺染型も紹介する。

第一次世界大戦以降、パリのモンパルナスに移り住み創作活動を行った芸術家たちの集団「エコールド・パリ」。当時の人気雑誌パリ・モンパルナス誌で“モンパルナスの女王”に選ばれたモデルの「キキ」の周りには、いつも芸術家たちが寄り群がっていた。その中には藤田嗣治やキスリングもいた。彼女の内面までを描いたキスリングの絵を味わいながら、当時人気絶頂だった、伝説に残るキキの実像を追う。◆モーイズ・キスリング（１８９１〜１９５３）「モンパルナスのキキ、赤い洋服」「赤と緑のシーツに寝そべる裸婦」、プチ・パレ美術館アトリエアパート、ラルーシュ（蜂の巣）

百万都市、花のお江戸。武家と町人が相半ばする町。発展を陰で支えた町方の女たちのファッションを、浮世絵や川柳を絡めながら跡付ける。かつての十二単の下着だった小そでを表着として着こなし、粋に自由に生きた江戸の女。明暦大火（１６５７年）後、着物の需要に応じて生まれた友禅、そでを長くした華麗な振りそで、渋くて地味で気品のある小紋など。◆江戸期の着物文化を通し、歌舞伎や遊女の流行に合わせ美を競った江戸の女の心意気を描く。◆江戸図屏風〔国立歴史民俗博物館〕、両国橋上橋下（歌麿筆）〔東京国立博物館〕、目黒行人坂火事絵巻〔東京消防庁〕、東都両国橋夕涼図（英泉筆）〔名古屋市博物館〕

京都大学霊長類研究所にいるチンパンジーのアイちゃんの図形認識や言葉の学習、野生チンパンジーの生態などを見ながら、チンパンジーとは一体どんな生き物なのか、その能力の背景にあるものは何かを考察する。◆野生チンパンジーの順位争いでは、腕力だけでなく「駆け引き」や「根回し」などの政治力がものをいう。また、小枝や石を道具として使うが、その文化は群れによって異なっている。チンパンジーの能力は一般の想像をはるかに上回るものであり、その姿を素直な目でみると、必ずしも人間の進化がずば抜けたものではないと気づく。

湾岸戦争を契機にわが国の国際貢献、特に平和協力のあり方が議論され、その中で国連の平和維持活動（ＰＫＯ）への日本の参加をめぐる問題がクローズアップされてきた。そこで今、国連が世界の９箇所に派遣しているＰＫＯの中から、ＵＮＩＦＩＬ（国連レバノン暫定軍）とＵＮＩＫＯＭ（国連イラク・クウェート監視団）の二つを例にとって、その活動の歩みと現状を追い、国連による平和維持システムの功績と限界を浮彫りにする。

四国三郎・吉野川の河口にひらけた徳島は“阿波おどり”の町。佐古新橋を渡るとセンサーが作動して阿波おどりが聞こえ、町を行くとからくり時計の人形が踊る。古典芸能・阿波の人形浄瑠璃を高校生が伝承し、史蹟・阿波十郎兵衛屋敷跡には人が絶えない。鳴門は藍染めの町である。藍住町の“藍の館”で藍製造の今昔を見る。大谷焼は藍瓶から発し、新しい陶器燻焼の美を完成させた。個性豊かな郷土の香りは、阿波名物として全国に誇るものである。旅人は高橋竹与。◆第１０６３回　◆阿波十郎兵衛屋敷跡