日本文学の名作を、当代一流の演出家が競作するシリーズ。この回は特別企画として樋口一葉の「にごりえ」を久世光彦が２時間で描く。月曜特集・特別企画。◆明治２８年。新開地の「菊の井」の酌婦・お力（田中裕子）は売れっ子の一枚看板。布団屋の主人源七（柄本明）は妻子のある身でお力に入れあげたあげくいまは長屋住まい、妻の内職に頼って暮らしている。お力は新開地には不似合いな紳士・結城（細川俊之）に出会って惹かれ、源七との過去を打ち明けた晩ついに結ばれる。かたや源七はお力とのことが原因でとうとう妻子に逃げられ、菊の井にお力を訪ねるが門前払いされる。

第２次世界大戦後、基本法（憲法）により軍隊の本格的海外派兵を戒めてきた、ドイツ。しかし冷戦後の国際秩序の変化の中「改憲」に向けて大きく一歩ふみ出そうとしている。「改憲」というハードルを前に国家としていかなる選択をするのか。試金石ともいえる旧ユーゴ派兵の動きを軸にドイツの改憲論争の行方を追う。

人間はいかに死ぬか、死後の世界はどのようなものか詳しく記したチベット仏教の教典「死者の書」をもとに、生と死の哲学を映像化する。ドキュメンタリー編とドラマ編を２夜連続で放送。◆第１回はドキュメンタリー編。仏教の考えでは死者の意識は死後４９日経つとかならず転生するという。銃撃で死亡した老僧の生まれ変わりといわれる少年には前世の記憶があり、銃で撃たれた場所にアザがあった。篤い信仰を抱く人々は輪廻転生を信じている。死後４９日間にわたるチベット密教の死者儀礼を詳細に伝える。

現代日本画のルーツともいわれる四条・円山派の開祖、円山応挙。江戸後期に彼が確立した写生画は、低迷していた江戸画壇に新風を吹き込んだ。天が創造した自然の美を忠実に写しとり、それによって内面にまで切り込むことに生涯をかけた。不遇の時代に世話になった大乗寺に、恩返しのため１０人の弟子と二人の息子とともに１６５面の障壁画を描いた。その壮絶なまでの襖絵を中心に、絶筆「保津川図屏風」にいたるまでの応挙の画法とその真髄を探る。◆【国宝】雪松図屏風（三井文庫）【重要文化財】牡丹に孔雀図（萬野美術館）、藤花図屏風（根津美術館）、大乗寺襖絵群孔雀間・芭蕉ノ間・山水ノ間

東京・下町の古アパートを舞台に、個々がしだいに共存に目覚めていく時代の予感をユーモアとペーソスで描く。「個と共存」のテーマをリアルな生活感覚と情感豊かな映像で表現する。（１９９３年４月１７日～５月１日放送、全３回）◆アパートの住人・泰代の夫の選挙投票日が迫り、秘書が押しかけてきて帰って欲しいと頼む。「本人が来れば」という泰代の言葉を聞き、治郎は電話番号を調べ彼女の気持ちを伝える。桂子は治郎を訪ねてきた高田から治郎の正体を聞き出す。ロボット研究所の主任研究員で、スカウトの話があったが、会社に潰され、そのうえさらに横領のうたがいをかけられてクビになったらしい。

戦争を知らない若者たちが、太平洋戦争を体験した人々と出会うことで戦争の悲惨さ、戦争の真実を発見するドキュメント・シリーズ。この年のテーマは“外国人が見た日本人”。案内役は作家の山田太一。◆兵庫県神戸市に住む在日中国人三世で大学３年生の林瑛華さんが、神戸の町に残る戦争の傷痕をたどる。昭和１９年、神戸の華僑１２人がスパイ容疑で逮捕、検挙され、６人が獄死、残る６人も終戦の時まで投獄された。日本で暮らしていた華僑の人々が受けた迫害を明らかにする。

政権交代、続く不況、コメ大凶作にコメ市場開放、ゼネコン汚職とビッグニュースが続いた１９９３年（平成５）。内外のニュースをテーマ別に分け、新たな証言や追跡取材を通してその背景を捉えなおすとともに、将来に持つ意味を探る。（４夜連続）◆第二回は経済問題。国の景気対策も効果がなく、平成不況は出口を見いだせないまま、平成５年も終わろうとしている。また、コメの凶作を始めとする一連の動きは、日本の農政が曲がり角に来ていることを改めて示した。自動車とコメを中心に、１９９３年の日本経済を検証する。

高度経済成長、ベトナム戦争、若者たちの反乱などに象徴される激動の時代・１９６０年代、「ウルトラセブン」を制作していた円谷プロを舞台に、脚本家・俳優・特撮現場のスタッフなど２０代の若者たちの作品にかける夢と情熱を描く。（全２回）◆１９６７年（昭和４２）夏。「ウルトラセブン」シリーズの撮影が始まって１か月の円谷プロに、交通事故で脚本家の赤井が死亡、ヒロイン・アンヌ役の弘子も重症という知らせが飛び込んできた。憶測が飛び交い撮影は一時中断、脚本家とアンヌ役の代わりを捜して現場は騒然となった。結局、脚本は新鋭の石川新一（香川照之）が書き上げ、アンヌ役にはスタジオでアルバイトをしていたゆり子（田村英里子）が抜擢されることになった。