琵琶湖の東にある天台宗の古寺、百済寺・金剛輪寺・西明寺は湖東三山と呼ばれる。観音信仰の聖地である。古代から中世にかけて歴史の変動の中でさまざまな変遷を経験した。古代の朝鮮半島とのかかわりや中世戦国時代の信長との確執など、日本史を解明する幾多の手掛かりを秘める寺々である。天台宗系の美術品の宝庫としても文化史的に貴重な存在である。信長が経済独占をもくろんだことが、叡山焼き打ちと皆殺しにつながった背景を解明する。◆【国宝】金剛輪寺本堂、西明寺の本堂、三重塔◆【重要文化財】伝教大師坐像〔観音寺〕、慈恵大師坐像、阿弥陀如来坐像、毘沙門天立像〔金剛輪寺〕

元国際オリンピック委員会委員長Ａ・ブランデージ氏は、スポーツで国際親善に力を尽くす傍ら、東洋の美術品を収集し東西文化の理解・交流を深めた。膨大なブランデージコレクションはサンフランシスコ東洋美術館に寄贈され、同館の礎を築いた。仏像や屏風の逸品をはじめ、縄文から江戸までの日本陶芸史を通観できる美術館の充実ぶりを紹介。またサンフランシスコ市民の東洋への関心の高さを表す、同館誘致運動のエピソードなどを盛り込む。◆不動明王図（鎌倉時代）〔サンフランシスコ東洋美術館〕、松竹梅図屏風（円山応挙筆）、山水図屏風（式部輝忠筆）、梵天像（天平時代）、如意輪観音像（平安時代）、志野草花文大皿、古九谷色絵松竹梅大皿

古代、現代を問わず陽光は神秘の空間を生み出す。古代人は光に恵みと恐れを抱いた。そして光を手元に招くことのできる鏡に信仰が結び付いた。剣と勾玉、鏡は三種の神器。鏡について、漢鏡、唐鏡の輸入品から和鏡の独自性を手にするのは平安の代。やがて鏡は仏教に取り入れられ、鎌倉期に完成する。◆伝統を受け継ぐ現代の制作風景や浮世絵に現われる庶民生活を紹介し、神器から人器への変遷を描く。◆【重要文化財】阿弥陀三尊十二光仏鏡像〔輪王寺〕、松竹双鶴文八稜鏡〔熱田神宮〕◆【その他】平螺鈿背円鏡〔正倉院〕、姿見七人化粧〔東京国立博物館〕

３年前に制定された総合保養地域整備法、いわゆるリゾート法によって日本各地がリゾート開発ブームに沸いた。その現状を検証する。◆日本人の余暇を拡大して民活による内需拡大に向ける、過疎や農業不振に苦しむ地方を活性化する、などを眼目として制定されたリゾート法。スポーツ、レクリエーション施設などへの特別償却制度や税の減免などの特例措置、資金支援、地方公共団体への助成などを内容とする。ＮＨＫのアンケート調査の結果、開発構想があると答えた自治体は６４．５パーセントにも達していた。ゴルフ、スキー場、ホテルやマリーナなどの造成によって変わってゆく日本の景観。その裏にひそむ問題点を探る。

紺野美沙子が案内役をつとめる科学教養番組。３００回記念の夏休み特集として４回にわたって「尾瀬」を紹介する。◆シリーズ第２回は、尾瀬に咲く花々を紹介、食虫植物の捕食の様子、尾瀬の植物分布を見ながら、そこに生息する生物とそのすみ分けや、尾瀬の特殊な地形の不思議を探る。

原爆資料館に展示される数々の遺品にまつわるエピソードから、戦争体験の風化が叫ばれる戦後４５年を検証し平和への祈りをつづる。◆広島市平和記念公園にある原爆資料館には、現在１０００点もの被爆資料が展示されヒロシマの原爆被害を今に伝えている。資料の中には遺族から寄贈された「遺品」も少なくない。遺品にまつわる３人のエピソードを紹介し、ヒロシマの被爆体験継承の大切さを訴える。◆報道特別番組

石川の古代について、橋本澄夫さん（県立埋蔵文化財センター所長）に聞く。◆日本列島の中央部、日本海に突き出た半島の形の石川県は、古代から海との結びつきが強かった。そうした見地から、甲小寺遺跡、真脇遺跡が紹介される。特に、イルカ漁が盛んだった真脇の文化が珍しい。◆さらに、古墳時代の須曽蝦夷穴古墳、朝鮮半島とのかかわりの深い奈良・平安時代の福浦港、祭祀で有名だった寺家遺跡などがとりあげられ、石川県と日本海の深い関係がわかる。

中世日本の政治的中心であった鎌倉。そこに残る数多くの文化財や建造物の中から、「庭園」に注目する。◆境内のいたるところに咲く色とりどりのアジサイから「あじさい寺」としても名高い明月院。日本最初の禅寺で鎌倉五山（鎌倉から室町時代にかけて選ばれた５つの禅宗の寺）の第一、建長寺には、開山時に宋からもたらされたというビャクシンの大樹や、由緒ある心字池（「心」の字をかたどった池）を中心にした庭がある。◆すぐれた作庭でも知られる夢窓疎石を開祖とする瑞泉寺の庭は長く埋もれていたが、１９７０年（昭和４５）に発掘・復元されて、自然の風景を模した山水縮景の姿を取り戻している。