「鉄は国家なり」といわれた時代、鉄鋼業は国の根幹を支えていた。第２次世界大戦前、日本は製鉄原料の半分を鉄くずに頼っており、その８０パーセントをアメリカに依存していた。太平洋戦争・日米開戦の前年、アメリカは鉄くずの禁輸に踏み切り、日本を封じ込めた。“鉄”にかかわった日米人物群像と経済裏面史を描く。

『勧進帳』は七世市川團十郎が能の『安宅』を歌舞伎に移したものである。資料映像に残る幸四郎三代の弁慶の芸を見ながら、七世松本幸四郎からの芸を受け継ぐ現幸四郎（九世）に話を聞く。◆平泉へ落ち延びる義経主従と安宅の関を守る富樫との息詰まる葛藤を描く。舞台装置の羽目板の上に老松の絵が描かれるところから松羽目物といわれる。◆副音声は英語

娘が姑とうまく折合わず、実家に帰ってくる。心配した父が、人は出方一つで変わるもの、今一度姑に仕え、それでも駄目だったらこの薬で姑を殺しなさい、と、うどん粉を劇薬だと偽って娘に渡す。父の言った通りで、娘と姑は近所も羨む仲になる。うどん粉で殺したら今頃は手打ちだろうというオチがつく。

日本が世界に誇る工芸品、印籠と根付け。手のひらにすっぽり入ってしまう小さな携帯用小箱は、江戸中期に男性のアクセサリーとして盛んに流行した。印籠には印判や薬を入れ、根付けは帯の滑り止め、そして緒締めの３つがセットの美の調和。江戸の職人芸と町民文化が作り出した、粋と伊達の極細美の世界。小宇宙に森羅万象を凝縮させるミクロ芸術。明治期そのほとんどは海外に流出、異郷で光彩を放ちつつ百数十年の過去から日本の愚を見返している。◆根付け、印籠〔サンフランシスコ東洋美術館〕

サハリンに住んでいたユ・ホジョンさん（６９歳）が、４７年ぶりに祖国の韓国へ帰国した。１９４４年、日本による強制連行によって結婚１年目で別れ別れになって以来、およそ半世紀ぶりの妻との再会でもあった。戸惑いと試行錯誤のつづくユさん夫婦の新生活を通して、朝鮮半島離散家族の“戦後”を掘り下げる。

近く「終着駅」の使命を終える上野駅は、近代日本にとってどんな意味があったのか。古い資料やフィルムを駆使し、東北人にとっての「上野駅」を探る。◆東京の北の玄関口、上野駅。そこは他の駅にはない独特の息づかいにあふれ、東北人にはふるさとを想わせる。東北から見ると上野は東京であるが、東京にいる時には上野は東北である。上野駅は１８８３年（明治１６）に開業。１９３２年（昭和７）に完成した現駅舎には、多くの東北人の心が染みついている。

１９９１年に死去した春日八郎さんを悼み、なつかしい歌の数々を送る。◆曲目は以下の通り。「別れの一本杉」「お富さん」「赤いランプの終列車」「雨降る街角」「ギター流し」「男一匹の歌」「あん時ゃどしゃ降り」「苦手なんだよ」「山の吊り橋」「長崎の女」「ロザリオの島」「王将」「会津磐梯山」「旅人」。

昔から駆込寺・縁切寺として関八州にその名を知られていた東慶寺。女人からの離婚が許されなかった時代に、六百年にわたり薄幸な女性を救ってきた寺法の由来と役割をたどる。◆北条時宗の妻・覚山院や千姫を義母とする天秀院など、歴代住職もまた歴史に残る悲劇の女性がその座に就く。男子禁制なるが故に散逸を免れた数々の美術品。蒔絵は東慶寺蒔絵として、女の悲しみの影を色濃く宿す寺の歴史と特異性を今日に伝えている。◆【重要文化財】旧東慶寺仏殿〔三渓園〕、初音蒔絵火取母〔東慶寺〕葡萄蒔絵螺鈿聖餅箱◆【その他】水月観音菩薩半跏像、松ケ岡日記帳、寺法離縁証文