どんな理由があっても、戦争をよいことだと思う人は少ない。それでも戦争が起き、戦争をする政府を国民が支持する背景には必ず巧みな情報操作や宣伝戦略がある。宣伝戦略という情報戦争の側面から太平洋戦争を再検証する。◆「隠忍実に８ヶ月帝国遂に立つ」と真珠湾攻撃を伝えた日本のニュース映画。戦争中は内閣情報局がマスコミや言論の統制に当たり、戦意高揚のポスターや標語が数多く作られた。一方アメリカで、今も時に叫ばれる「リメンバー・パールハーバー」はどのように流布したのか。調査の過程で同題のレコードが開戦直後に発売され、ミリオンセラーの大ヒットとなっていたことがわかった。

青森県域の風土や産業、人々の暮らしなどを記録したドキュメンタリー番組。（１９９２年４月５日～１９９４年３月２７日放送、全３６回）◆生まれてから何年にもわたって故郷から遠く離れて生活し、そしてただ次の世代を産み落とすためだけに命がけで故郷に帰ってくるサケ。青森県八戸市を流れる新井田川にそんな鮭の感動のドラマを見る。

破壊が進む熱帯雨林の島・ボルネオ島の、インドネシア領カリマンタンで数十世代にわたって熱帯雨林と共存してきたダヤック族の生活に密着。人間と森林の共存という根本的な問題を掘り下げる。◆熱帯雨林の三大聖域は南米アマゾン流域、アフリカのコンゴ流域、そして東南アジアであるが、いずれの地域でも日本はその破壊者という立場に立っている。同じボルネオ島でも、マレーシア領サラワクでの伐採問題はようやく日本でも取りざたされるようになったが、その数倍の面積を誇るカリマンタンの現状はほとんど報道されてこなかった。

１９世紀半ば、イギリスのロイヤル・アカデミーの保守性に反発した画家の集団・ラファエル前派（Ｐ．Ｒ．Ｂ．）の、若いグループの軌跡を追う。リーダーであるロセッティの女性探究の遍歴を中心に、個性あるそれぞれの人生の岐路を跡づける。神話を題材に女性を表現したロセッティの絵は、当時留学中であった夏目漱石をもとりこにした。ロセッティの芸術性のほか、思い思いの道を歩んだメンバーの、若き情熱と人生の処し方の違いや軌跡を比べる。◆ダンテ・ガブリエル・ロセッティ（１８２８〜１８８２）「聖母マリアの少女時代」「我は主の婢女なり」「プロセルピーナ」「ベアタ・ベアトリクス」「ロンセロット卿の幻想」「七塔の調べ」「白日夢」最終作

生涯たった１枚の絵しか売れなかった“炎の画家”フィンセント・ファン・ゴッホ（Ｖｉｎｃｅｎｔ　ｖａｎ　Ｇｏｇｈ／１８５３〜１８９０）。彼は日本の浮世絵を愛し、日本への憧れを強く抱いていた。ゴッホの足跡を紹介し、日本との意外な関係を追う。進行役は古舘伊知郎。◆ゴッホは精密な浮世絵の模写を３枚残している。うち２枚（ともに歌川広重が手本）には、原画にない同一の漢字が絵の左右にレイアウトされている。「新吉原大黒屋錦木江戸町一丁目」と読めるこの文字を、ゴッホは何を見て書いたのか。追跡がはじまる。

日本を代表する国立３大博物館の１つ、京都国立博物館。本館そのものが重要文化財。展示される豊富な作品からは日本歴史のそれぞれの時代が見えてくる。国立博物館の中で「京博」は雅の収蔵庫。８００点余の作品群がそれを物語る。明治初期、伝統否定の危機に文化財保護を第１に掲げ、その役割から各寺社から寄託された名品が多いのも特徴。近代化再生を果たした京都の町にたたずむ美の殿堂の珠玉たちが語りかけてくる。◆【国宝】西本願寺飛雲閣、山水屏風〔京都国立博物館〕、山越阿弥陀図、餓鬼草紙、伝源頼朝像〔神護寺〕、風神雷神図〔建仁寺〕

「天の原ふりさけみれば春日なる三笠の山に出し月かも」。安倍仲麻呂が故郷をしのんで詠んだ歌で知られる三笠山の月を、箏曲（箏による音楽。箏を伴奏とする声楽曲が基本だが、箏のみの曲もある）の調べに乗せて情緒たっぷりに紹介する。◆安倍仲麻呂は奈良時代の文人で、遣唐使として中国の長安で長く暮らしたが、望郷の念にかられて帰国しようとした。しかし嵐にあって遭難、唐へ戻ってしまい、異国で生涯を終えた。◆箏曲家で人間国宝の中田博之さんはこの故事にちなんで「故山の月」という曲を作曲した。番組では、この曲を奈良市水門町にある依水園の座敷で演奏、仲麻呂が故郷をしのんだ月を思う。

作家のＣ・Ｗ・ニコル氏は、１９８０年以来長野県黒姫高原に住み、執筆活動を行いながら、自然保護について多くの提言を行ってきた。今、ニコル氏は、黒姫で森づくりに取り組んでいる。伐採後、手入れされずに荒れていた森を再生し、自らの自然観を実践する森をつくろうというのである。“ＡＦＡＮ　ＡＲ　ＩＩＺＵＮＡ（飯綱山の麓に広がる谷間）”と名付けられたこの森で、森林の持つ力、森林の再生について語るとともに、日本の自然の魅力と保護について訴える。