ベトナム戦争は映像で克明に記録された最初の戦争といわれている。ベトナムもアメリカも、カメラマンだけの部隊を編成して戦場に送り込んだ。戦線の両側で死を目撃し、記録し続けたカメラマンたちと彼らの映像の物語。◆米軍は陸・海・空・海兵隊の４軍に、北ベトナム軍と南ベトナム開放戦線もそれぞれ独自にカメラマン部隊を組織した。米軍は戦略分析に、北ベトナム側は士気高揚にと目的に違いはあっても、双方のカメラマンは戦火をくぐりながら命懸けで映像を残した。そのとき何を考え、何を見、その後どう生きたのか。かつてみずからが記録したフィルムと向かい合い、語る。

秘密の実験でまったく日差しの入らない地下生活を余儀なくされた家族が変調を来たし、家庭は崩壊寸前となる。◆大学講師・伊丹建彦（役所広司）と妻・奏子（名取裕子）が、高層マンション入居抽選に当たった。ところが当選は手違いだったと会社が謝りに来て、おわびにと用意された地下室を借りることになる。家賃はただ同然、エアコン完備で、朝日も夕焼けも人工的に演出される。ただし景色は見えない。やがて太陽にこがれて妻は浮気に走り、建彦も学生と深い仲になる。子供たちも体調を崩す。実はこれは地下に人が住むとどうなるかを試す会社の実験で、この家族の様子は隠しカメラで撮影されていた。

広島産業奨励館（原爆ドーム）を建てたチェコの建築家ヤン・レツルの波乱の一生を描く。◆チェコの田舎町に生まれ、ドームの建築に夢を抱き続けたヤン・レツル。プラハ大学で建築学を学び、１９０７年に初めて日本を訪れた彼は、その自然の美しさに感動し、日本での西洋建築に情熱を傾ける。仕事は順調だったが、彼の生涯は孤独だった。唯一の心の支えは、幼い頃に引き取り手塩にかけて育てた日独混血の少女ハナ。しかし彼女もまた、彼の愛を受け入れることなく去っていく。傷心を抱いて故国に戻ったレツルはみずからの造った広島産業奨励館が何者かに破壊される悪夢に悩まされた。

めったにテレビに登場しないアーチストたちが、自ら構成・選曲などを行う新趣向の音楽バラエティー。◆自由でおおらかな独特の音楽世界を持つ矢野顕子。４年ぶりのツアーを中心に、ライブハウスでの弾き語り、夫・坂本龍一と二人の子どもと共に移住したＮＹでの生活も伝える。曲目は「相合傘」「ＢＡＫＡＢＯＮ」「ひとつだけ」「電話線」「ＨａｒｄＴｉｍｅｓ〜ＣｏｍｅＡｇａｉｎＮｏＭｏｒｅ」「ＧＲＥＥＮＦＩＥＬＤＳ」など。

修行の道、峨山道について、東四柳史明さん（県立図書館加能資料編さん室主任）に聞く。◆峨山道とは永光寺と惣持寺を結ぶ１５里（６０ｋｍ）ほどの道を言い、鎌倉時代後期から南北朝にかけて、両寺の住職であった峨山が通った跡である。◆峨山は師瑩山（けいざん）に導かれ、教団経営に力を発揮し、民間信仰から霊山までさまざまな能登地方の信仰を、曹洞宗に統一した。その後、蓮如が来て浄土真宗が広がるが、峨山道は現在も生き、多くの人たちが修業に励んでいる。

四番目物の代表作『隅田川』を取り上げて、ワキツレを演じた宝生閑を迎え、悲劇の名作を鑑賞する。◆行方知れずになったわが子を探し求め東北へ下る途中、隅田川の渡しで子供の消息を知る。死んだわが子の幻を追って舞う母親の姿が悲しい。ワキの役割が大きい曲であるが、ワキは分かりやすい語りと、顔の表情を変えずに芝居を進めるのが難しい。子供の登場と、ワキの役柄についても説明する。◆副音声は英語

奈良・御所市にある吉祥草寺で毎年１月１４日に行われる左義長の行事「茅原の大とんど」を紹介する。◆吉祥草寺は、修験道の祖である役行者が生まれた地として知られている。「とんど」は関西独特の呼び名で、一般には「左義長」という。左義長は正月に使った門松などを持ち寄って焼き、その火で作った料理を食べ、１年間の無病息災を祈る行事。日本各地で同様の行事を見ることができる。茅原で行われる大とんどは奈良時代初期に五穀豊穣を願う地域の祭りとして始まり、それが寺の仏教法会と結びついて大規模になったといわれている。松明は雌雄一対。それぞれ高さ６メートル、直径２．５メートルもある。

南北に長いベトナムの中央に位置する古都フエは、ベトナム最後の王朝・グエン王朝の都であった。ベトナムの歴史は、大国の圧迫に揺れ動いた２０００年だったといわれる。戦火の中でかろうじて残ったフエ王宮の「午門」などの史跡をしのぶ。◆その悲しい運命の歴史は、皇帝に宮殿の建設より死後を見据えた廟の建立に力を注がせた。現実から逃れようとする皇帝は、来世こそ真実の住まいがあると信じるようになっていった。出演：安藤忠雄。