秘密の実験でまったく日差しの入らない地下生活を余儀なくされた家族が変調を来たし、家庭は崩壊寸前となる。◆大学講師・伊丹建彦（役所広司）と妻・奏子（名取裕子）が、高層マンション入居抽選に当たった。ところが当選は手違いだったと会社が謝りに来て、おわびにと用意された地下室を借りることになる。家賃はただ同然、エアコン完備で、朝日も夕焼けも人工的に演出される。ただし景色は見えない。やがて太陽にこがれて妻は浮気に走り、建彦も学生と深い仲になる。子供たちも体調を崩す。実はこれは地下に人が住むとどうなるかを試す会社の実験で、この家族の様子は隠しカメラで撮影されていた。

日本オペラ界の生みの親で、“われらのテナー”とうたわれた藤原義江の生涯を、生前に交流のあった人々の証言や、記録フィルムで追跡する。◆１８９８年（明治３１）、下関のイギリス人貿易商リードと芸者阪田きくとの間に生まれ、偉大な音楽の才能に恵まれた彼は、新国劇、浅草オペラを経て、１９２０年（大正９）イタリアに留学、欧米各地で演奏活動を続けた。帰国後、藤原歌劇団を創設して日本オペラ活動の推進役となり、明治・大正・昭和の３代に渡って活躍した。

『蒙古襲来絵詞』は、当時領地を失っていた肥後の後家人・竹崎季長が、「元冦の役」に際しての自らの武勲を後世に残したいと絵師に描かせた自分史である。元冦については正確な史料がほとんど残されておらず、唯一写実的に往時を描写した貴重なもの。当時の蒙古（元）と東南アジアの情勢の中で日本の置かれた状況から、フビライは２度にわたって軍を派遣し博多を襲った。文永の役は交易を求めるためのどう喝が目的であったが、日本は断固戦う。◆【国宝】桃鳩図〔個人〕◆【その他】元の使者供養塔〔常立寺〕、蒙古襲来絵詞〔宮内庁〕、華厳縁起〔高山寺〕、蒙古国牒状写し〔東大寺〕

ムソルグスキーのピアノ組曲「展覧会の絵」のモチーフとなった１０枚の絵のうち行方の分からなかった５枚がこのほど見つかった。この絵を追い求めていた作曲家・團伊玖磨さんの調査の旅を追いながら、名曲の陰にあった絵の転変を描く。◆ムソルグスキーは、友人の画家ガルトマンの遺作展の絵に強いインスピレーションを受けて「展覧会の絵」を１０枚の絵に合わせて曲を創ったといわれていた。しかしロシア革命の混乱によって５枚が行方不明になっていた。クーデター直後のロシアを取材し、ソビエト科学アカデミーのラマノワ博士らの協力を得て徹底調査、レニングラード（現サンクトペテルブルク）とモスクワの博物館などで可能性の高い絵を発見した。

東欧の変革に始まった激動は第２次大戦以後の世界を支配した冷戦に終わりを告げ、世界の枠組みが音を立てて動き始めた。ある意味で世界秩序の安全装置であった東西冷戦構造が崩れたあと、湾岸戦争の衝撃を世界はどう受け止め、どう変わろうとしているのか。（１９９１年１２月８日終了、全６回）◆第１回は世界の主要なシンクタンクの分析を交え、中東、アメリカ、ソ連、東欧など激動の現場リポートによって危機の世界地図を５部構成で描く。前半の３部は「湾岸戦争は何を残したか」「連邦は解体するのか」「ヨーロッパ新たなる壁の出現」。

環境破壊が進む南米アマゾン川流域の自然と、そこに生きるインディオたちの姿を描く。◆ブラジル政府は大規模なアマゾン開発を進めており、４００万人いたインディオは２０万にまで減った。生活の場をなくしたインディオの多くは政府の保護下に入っている。しかし、チュカラマエ族は西欧文明を嫌い、密林での狩猟採集生活を守っている。一度移住を受け入れた結果、生活の変化に順応できずに多くの仲間を失ったためである。戦い続ける一族の酋長・ラオニを中心に、彼らの生活文化や風習などを記録し、アマゾンの現状を伝える。

社宅住まいの夫婦たちが憧れのマイホームを手に入れるべく奮闘する姿を描く。原作：矢崎葉子。（１９９１年４月１９日～６月２８日放送、全１１回）◆山村雄介（三上博史）と浩子（田中美佐子）は新婚夫婦。雄介は大手繊維メーカーのエリート社員で、浩子と社内結婚し、当然のように社宅に住み始める。しかし社宅には様々なルールがあり、その毎日はわずらわしいものだった。浩子は社宅の先輩である妻たちに目立たず・出過ぎず・角立てずがうまくやっていくコツと教えられる。社宅住まいは１０年までという規則であった。２人はマイホーム獲得計画を立案し、行動を開始する。

１９９０年１０月３日のドイツ統一は、国だけでなく離れ離れの芸術が再会する文化による統一でもあった。人類不滅の芸術品が再び元のさやに納まる日も近い。◆番組の締めくくりに言う。◆「人は芸術のために身を捧げ、死をもいとわないことがある。それが芸術に対する尊厳の表明である。歴史を超え、政治を超えて自立するベルリン美術館に今、拍手を送る。その拍手は、戦争拒否の永遠のエコーになることを私たちは忘れてはならない」◆ミトレスの市場門、レリーフバビロンの行列通り、「ダンテの神曲」挿絵素描集（ボッティチェリ作）、アレッポ・サロン（トルコ風文様）、農民の結婚衣裳、エジソンの蓄音機