愛媛県松山市の郊外、経ヶ森という山の中腹に古刹・瀧雲山太山寺がある。この寺を建立したといわれる真野長者の伝説をたどっていくと古代瀬戸内海の交通交易の海の道がみえてくる。瀬戸内海は、朝廷と西日本、中国・朝鮮を結ぶ重要な航路であり、真野長者にまつわる三つの寺は、その中継地点の港に直結していた。太山寺には６代の天皇が勅納した十一面観音菩薩像があり、朝廷が軍事・経済面でいかにこの地を重要視していたかを示している。◆【国宝】太山寺本堂【重要文化財】太山寺仁王門、十一面観音菩薩像（太山寺）【その他】長者堂（太山寺、蓮城寺）、真野長者像（太山寺、蓮城寺、般若寺）

武田信玄が開いた甲斐府中、江戸時代柳沢吉保が築城した甲府城。江戸から近い地方都市甲府は、柳沢時代大いに栄え江戸文化が花開いた。豪商たちの頂点に立っていた大木家の土蔵は、１９４５年（昭和２０）の空襲でも焼け残り、中に収蔵されていたおびただしい美術品などは難を逃れた。幾代にもわたって蓄積された大木コレクションの名品は、１９９０年に山梨県に寄贈された。それらの品々と、大木家と広重や鉄斎などとの交わりなど甲斐の国に秘められた文化遺産と江戸の香りを掘り起こしていく。◆歌川広重・鴻ノ台図屏風、五代目大木喜右衛門夫妻像、不二三十六景甲斐犬目峠、六十余州名所図会甲斐さるはし、東都名所目黒不動之瀧◆富岡鉄斎・甲斐猿橋図、福禄寿図、貧人図

第２次世界大戦の末期、二人の日本人技術将校と戦局を左右する極秘資材を乗せて日本へ向かったＵボート。追跡戦と脱出、そして敗戦による運命の変転を描く。◆１９４５年４月、一隻のＵボートがドイツを極秘に出航した。積み荷は日本に提供される原爆開発のための図面とウラニウム、そして二人の日本人技術将校。まもなくこの航海は連合軍の知るところとなり、英・米海軍の激しい追跡を受ける。ようやく振り切ったところへ、ドイツ降伏の知らせが届く。降伏派、亡命派、任務遂行派に艦内が分かれて激しいやり取りが続き、とうとう館長が決断を下す。◆ドイツＺＤＦ、アメリカＡＢＣＶＥ、オーストリアＯＲＦとＮＨＫの４か国共同制作。◆副音声は英語

６月、滝谷花しょうぶ園（奈良県室生村）ではハナショウブがその美しさを競う。藤田浩さんは大和路の四季や花を撮り続けている写真家。今回は、しょうぶ園から室生路へと向かう。

幕末・維新で最も揺れ動いた藩の一つ、長州藩。関ヶ原会戦以来積年の恨みが一気に噴出した幕末の長州に登場した二人の若き志士・吉田松陰と高杉晋作の事跡を克明に描き、幕末の長州藩とその風土を再現する。藩主毛利家の菩提寺・東光寺と、晋作挙兵の寺・功山寺、そして晋作ゆかりの東行庵に残る維新の痕跡を通し激動の長州の数奇な変遷をつづる。松下村塾をひらいた松陰、奇兵隊を組織した晋作、他にも多くの志士を両寺は見守った。◆【国宝】功山寺仏殿【重要文化財】東光寺三門・総門・大雄宝殿【その他】高杉晋作生家、松陰自賛肖像、三条実美所用の硯

歌謡曲から演芸にいたる大衆芸能の分野で、２０世紀の日本を代表する人物を取り上げるシリーズ。◆この回は、１９７３年に８３歳で亡くなった落語家・古今亭志ん生の生涯を、息子の志ん朝さんが振り返る。◆「死神」の異名をとるほどの極貧生活を送りながらも、鋭い美意識でしゃれや軽妙な語り口を生み出し、昭和の名人の呼び声が高かった。幼いときから父の芸を見て育った志ん朝さんが、息子ならではの志ん生観を、志ん生「火焔太鼓」の名人芸とともに語る。

１９４６年、ＧＨＱ民生局員２５人によって９日間で作られた日本国憲法草案。それにかかわった人々に歴史の証言を聞き、現在の憲法を考える資料とする。◆２月４日から９日間の突貫作業のきっかけは、１日の毎日新聞のスクープだった日本政府の憲法草案。その保守性に手を焼いたＧＨＱは、三原則「新しい天皇制」「戦争放棄」「封建制度廃止」を提示して民生局次長ケーディス大佐ら４人の運営委員会をトップに七つの委員会を設置、資料集めから作業にかかった。立法のハウギ氏、行政のエスマン氏、人権のゴードン女史、天皇制のプール氏、そしてリーダーのケーディス氏の証言と草稿から、時系列をたどって作業の内容を追う。

京都で広まっていた法然上人の浄土宗が弾圧されるきっかけとなった「鹿ヶ谷因縁談」。後鳥羽上皇寵愛の女官・松虫姫、鈴虫姫を住蓮上人・安楽上人が剃髪出家させた事件である。二人の上人は死罪、法然を始め多くの門徒が流刑となった。専修念仏、つまりひたすら念仏を唱えよという教えがなぜ弾圧されたのか。仏教史にとどまらず日本史に大きな影響をおよぼした事件の原因と真相を探りつつ、両上人の菩提を弔うために建立された住蓮山安楽寺の美しい建物や庭、因縁談にまつわる絵画や像などを紹介する。◆【国宝】法然上人絵伝（知恩院）【重要文化財】七箇条制誡【その他】松虫鈴虫両姫供養塔、安楽寺縁起絵、阿弥陀如来像（安楽寺本尊）