中国伝来の申楽（さるがく）に始まる日本の能は、奈良の大和四座を源とする。毎年夏行われる、藤原氏の氏寺、興福寺の薪御能には、金春、金剛、宝生、観世の四派と大蔵流狂言の各家元クラスの能楽師、狂言師が競演し、全国各地で盛んに行われる薪能のルーツと言われる。境内の史跡や奉納能、各派の演目などを録画取材し、とりわけ観世銕之丞がシテを演じた観世流「千手」（せんじゅ）の舞台をじっくりと鑑賞し、演者と観衆との緊張関係や面についてのエピソードなどの芸談を聞く。

アジア通で知られる元タイム誌記者、フランク・ギブニーさんが、複雑なアジアの近現代史を分かりやすく解説し、その奇跡的な経済成長の秘密を分析するシリーズ。（１９９３年５月３１日〜７月３０日、全９回）◆第２回は長い鎖国から目覚め、西洋の脅威に追い立てられるようにして自らの近代化を急いだ明治時代の日本を描く。西洋の模倣を経て“富国強兵”の道を走り出した日本。その日本が現代アジアの経済発展のモデルとなっているという意味で、明治はアジアに生き続けているという。

晦日になり、どうしても三両の金を都合しなくてはと女房に追い出された男が、歩き回るうちに大きな邸の裏木戸が開いたままになっているのを見つける。つい興味がてらに入ってしまい、挙句の果てに台所の穴ぐらに落ちてしまう。「泥棒だ」と主人が助けを求めた男は、強がりばかりで動かない。仕方なく主人は賞金をつける。賞金の額が一両から二両に上がり、「仕方がない、それじゃ三両でどうだ」と言うと、穴の中から「三両なら俺が出て行く」とオチがつく。

雲仙普賢岳災害で故郷を追われた人々はおよそ８０００人。その多くは不安に耐えられず、親戚などを頼って故郷をあとにした。災害で故郷を離れた老夫婦が娘夫婦の住む京都に行き、避難生活の苦労を乗り越えていく様子を描く。◆長崎県島原市・千本木地区に住む藤原秀富（多々良純）・いさ（山田昌）夫婦は度重なる火山活動の恐怖から京都に嫁いだ長女・敬子（坂口良子）の家に身を寄せる。だが姑の安江（荒木雅子）は、いさのふるまいが気に入らず家の中は不穏な空気になる。農業一筋だった夫婦は都会生活の中で様々な障害にしぼんでゆきそうになるが、その度に「がんばらんば」と自分に言い聞かせる。

東京・下町の古アパートを舞台に、個々がしだいに共存に目覚めていく時代の予感をユーモアとペーソスで描く。「個と共存」のテーマをリアルな生活感覚と情感豊かな映像で表現する。（１９９３年４月１７日～５月１日放送、全３回）◆アパートの住人・泰代の夫の選挙投票日が迫り、秘書が押しかけてきて帰って欲しいと頼む。「本人が来れば」という泰代の言葉を聞き、治郎は電話番号を調べ彼女の気持ちを伝える。桂子は治郎を訪ねてきた高田から治郎の正体を聞き出す。ロボット研究所の主任研究員で、スカウトの話があったが、会社に潰され、そのうえさらに横領のうたがいをかけられてクビになったらしい。

戦国以来、常に中央を脅かし続けた薩摩藩は農地に恵まれず、殖産興業によって原動力をつちかってきた。鹿児島市の磯海岸に東洋一のコンビナートともいうべき集成館工場群を建設。近代工業へのたくましい意欲とすさまじいエネルギーを示すかのような建物が建ち並ぶ。中でも錫鉱山の発見によって藩財政は大いに潤った。今は廃鉱となった錫坑に分け入り、特異な近代工業の発達の歴史に触れつつ、現代ただ一ヶ所薩摩錫器の伝統を守る工場で製作工程を見る。◆【重要文化財】旧集成館機械工場【その他】仙巌園（磯別邸）、反射炉跡、島津家伝世品錫器、錫鉱山、八木神社

山形県鶴岡市の全国抑留者補償協議会本部で「ブラウン玉砕者名簿」が見つかった。その中には、朝鮮半島出身の軍属２３５人の氏名が記載されていた。その名簿を手掛かりに韓国人遺族を訪ね取材するうち、ほとんどが肉親の戦死すら知されていないという事実に直面した。

関東の一民陶にすぎなかった益子焼の名を天下に知らしめた近代陶芸界の巨匠・濱田庄司。益子焼にひそむ健康的な美にひかれて益子に定住し、「やきものは作り手の健康な心と暮らしの中から生まれ、用途と結びつくときその美は正しく表れる」という信条を貫き、卓越した技能と民芸運動に挺身した功労で文化勲章を受賞した。父のあとを継いだ次男の濱田晋作の製陶所に作陶の工程を追いながら、父子二代にわたる素朴美の世界をみる。【濱田庄司作品】白釉鉄絵片口、琉球窯赤絵水指、青釉白黒流描大鉢、【濱田晋作作品】黒釉錆掛偏壷、塩釉藍切込花瓶、錆描皿