強制収容所に収容されたユダヤ人の子供たちが、激しい飢えと死の恐怖の中で残した絵の数々を通して平和の意義を問う。◆アウシュビッツで殺された無名のユダヤ人の子供たちが描いた絵、４３００枚がプラハ市内の博物館に残されている。第２時世界大戦中、プラハ郊外の町テレジンに１４万人のユダヤ人が収容されていた。その中の子供たちに希望を失わせまいと、教師たちの間で密かに美術教育が行われた。いずれも粗末な紙に描かれたこれらの絵だけが、子供たちが残した唯一の生の証となった。

奈良の伝香寺にある裸体の地蔵菩薩像は、毎年新しい衣に着せ替わる。像内納入の願文や結縁交名から女性の作であることが分かる。鎌倉時代は戦乱で多くの男が亡くなった。亡き夫や子へのいとおしさや鎮魂を願う女性たちの思いが込められる。大阪の道明寺には憤怒の表情の『聖徳大使孝養像』があり、元寇に対する憤りの思いが表される。女性たちは東大寺の大仏建立などに倣い、大衆募金に訴え女人の悲願を造像という行為で果たそうとした。◆【国宝】伴大納言絵詞〔出光美術館〕、源氏物語絵巻〔徳川美術館〕、十一面観音立像〔道明寺〕◆【重要文化財】地蔵菩薩立像〔伝香寺〕、聖徳太子十六歳孝養像〔道明寺〕

視聴者からのリクエストをもとに繰り広げるホール公開の大型歌謡番組。◆この回は植木等を中心に、和田アキ子、坂本冬美、森口博子、近藤房之助、所ジョージらを迎え、クレージーキャッツ時代からのヒット曲を共に歌う。「スーダラ節」「無責任一代男」「ハイそれまでヨ」など、独特の持ち味を楽しむ。

世界四大美術館に数えられるボストン美術館では、東洋部創設１００年の特別展を１９９０年の秋に開いた。日本と深いつながりを持つ初代東洋部長アーネスト・フェノロサ（１８５３〜１９０８）が明治１０年代に集めた、１，０００点に上る日本画が基礎になっている。岡倉天心や富田幸次郎らの人脈が幸いし、日本にもない名品が日本ギャラリーを飾っている。陶磁器・絵画・能面など１０万点に及ぶ東洋部の大コレクションを抱えるボストン美術館の、伝統と秘話と現況を描く。◆大日如来像、大威徳明王像、弥勒菩薩像（快慶作）、行幸図（吉村周圭作）、花鳥図（紹益作）、吉備大臣入唐絵詞、猿侯図（雪舟作）、白衣観音（狩野元信作）

紀州最古の名刹・道成寺。『道成寺縁起絵巻』を軸にして、千年前から伝えられてきた安珍・清姫の物語を中心に、女と男の情念の深奥に迫っていく。◆中世全国各地に広まった道成寺縁起が芸能の分野でも盛んに取り上げられた。能や歌舞伎の「京鹿子娘道成寺」など人気の演目から、人間男女の情念のはかなさを活写していく。◆【重要文化財】道成寺縁起絵巻〔道成寺〕、千手観音立像、四天王像、日光菩薩、月光菩薩立像◆【その他】華厳縁起絵巻〔高山寺〕、梵鐘〔妙満寺〕

土呂久公害訴訟を先頭に立って進めてきた佐藤鶴江さんの残した日記をもとに関係者の証言を交え、辺境の地で起きた公害が認知されることの難しさについて伝える。◆宮崎県高千穂町の土呂久鉱山で起きた慢性ひ素中毒症をめぐる土呂久公害訴訟は、１９９０年（平成２）に最高裁で和解が成立した。１５年におよぶ長い闘いだった。

広島産業奨励館（原爆ドーム）を建てたチェコの建築家ヤン・レツルの波乱の一生を描く。◆チェコの田舎町に生まれ、ドームの建築に夢を抱き続けたヤン・レツル。プラハ大学で建築学を学び、１９０７年に初めて日本を訪れた彼は、その自然の美しさに感動し、日本での西洋建築に情熱を傾ける。仕事は順調だったが、彼の生涯は孤独だった。唯一の心の支えは、幼い頃に引き取り手塩にかけて育てた日独混血の少女ハナ。しかし彼女もまた、彼の愛を受け入れることなく去っていく。傷心を抱いて故国に戻ったレツルはみずからの造った広島産業奨励館が何者かに破壊される悪夢に悩まされた。

湾岸戦争が発生して１０日が過ぎ、長期化の様相を呈し始めた。開戦から１０日のいまの時点でこの戦争の経緯をたどり、アメリカのキッシンジャー博士の分析を交えながら今後の展開を探る。