賑やかに常磐津「靭猿」が登場する。女大名が弓の矢を入れる靭に皮を貼るため、猿回しの曳く小猿に目をつけるが、愛らしい芸に免じて命を助けるという筋で、滑稽味溢れる振りが客席の笑いを誘う。渡辺保は、歌舞伎には、能狂言を原作とする出し物が数多く、「松羽目もの」というが、出雲阿国以来、歌舞伎は能狂言の江戸時代的展開とも言えると指摘する。江戸庶民の人情に合致するように、また時世に合わせ、見得を切る所作や物語の展開などを、歌舞伎風に取り込んでいった。

鳥取県で魚の大量死がきっかけとなり、２２年前に使用禁止となった農薬による環境汚染問題がクローズアップされた。この農薬は有機塩素系のＢＨＣやＤＤＴで、土壌や作物への残留性が強い。しかも日本各地で処分され、埋蔵作業にあたった人は適当に埋めただけだという。農薬撤去運動を追いながら、化学的分析により、土の中で眠り続ける農薬が今どうなっているかを探る。

色鍋島は、江戸時代から有田に伝わる高い赤絵の技術で完成された様式美の世界である。有田焼の家に生まれた十三代今泉今右衛門さんは、この色絵磁器の伝統に新たな世界を切り開こうと種々工夫を重ね、「吹墨」という絵の具を磁器の肌に吹きつける斬新な技法を開発。この技法の開発や優れたデザイン力が評価されて人間国宝に指定されている。さらに「薄墨」などの技法も開発して、鮮やかな赤絵の世界に新しい息吹を吹きこみ、今右衛門さんの色鍋島への挑戦は今も続いている。

大手自動車メーカーの「系列」傘下にあって生き残りをかけて苦闘する部品メーカーの姿を描く。原案：清水一行。（全２回）◆前編「崩壊の序曲」。日本を代表する自動車会社・東京自動車の系列傘下にある自動車ランプメーカー、大成照明器。企業としての独自性を守ろうとして部下たちの造反にあい、会長を解任された浜岡茂哉（佐藤慶）は、引退して趣味の陶芸に熱中する。大成照明器に残った長男・祥吾（三浦友和）も、会社の経営方針に納得が行かずに大成を辞職。技術者の岩田（坂上忍）と共に、別会社・開発研究所「ハマオカ・ジャパン」を設立する。一方、次男の恒男（西城秀樹）は東京自動車で関連企業調整室の室長となる。

「ぞうさん」「ねむの木の子守歌」などの童謡で知られる詩人、まど・みちおは、日本人で初めて「国際アンデルセン賞」を受賞した。彼の人となりやこれまでの足跡を描くドキュメンタリー。

日韓併合によって李王朝の人々は日本の皇族に準ずる待遇を得たが、その中にあって帝国陸軍中佐の身分を持ちながらも独立回復を願う志士を密かに援助していた李グウ（グウは金へんに禺）の生涯を追う。◆植民地となった朝鮮半島では抗日運動が絶えず、日本の弾圧によっておおくの朝鮮人が死んだ。現在の韓国では王族の人々を売国奴をする厳しい見方さえある。李グウは密かに抵抗を続けていたが、広島で原爆にあって亡くなった。その生涯を通して、今に残る日韓併合の傷あとを浮彫りにし、歴史の重みを検証する。

“秋を訪ねて”と題して、生田流の「砧」、山田流の「松風」の筝曲二題を鑑賞する。砧とは、布を柔らかくし、艶を出すために、台の上で木の槌で打つこと。秋から冬の女の夜なべ仕事とされ、源氏物語の時代から、秋の風物詩として描かれている。曲は砧の打つ音を取り入れ、拍子のはっきりした、短い音型を反復する「砧の手」が特徴である。「松風」も秋を表現する代表的な筝曲で、合奏と共に流れる唄の歌詞が、秋の趣向を一層盛り上げている。ゲストの寿岳章子さんは“京の秋”を語る。◆筝曲「砧」（生田流）、筝曲「松風」（山田流）、米川敏子【人間国宝】

この年３月２５日、「近つ飛鳥博物館」が開館した（南河内郡河南町）。展示物の中でも目を引く「修羅」にスポットを当て、大庭脩さんに解説してもらう。博物館の展望台からは、遠く淡路島を望むことができる。