古老が語るアイヌ語の世界を通して、自然を神と敬うアイヌの人々の豊かな心の世界を、北海道の雄大な自然を背景に描く。◆アイヌの人々は北海道が原生林に覆われていた頃、野山を自由に駆けめぐり、自然界のすべてをカムイ（神）とあがめ、その恵みに感謝の祈りを捧げて暮らしていた。日高の沙流川（シシリムカ）のほとりに、祖先から受け継いだ暮らしの知恵やしきたりを大切にして生きている老人がいる。小さな畑を守りながら細々とした暮らしを営む黒川セツさんは、祖父の命日に火の神様を通じてアイヌ語で祈りを捧げる。上田トシさんはウェペケレ（散文の昔話）の語り手だった姉の死後、アイヌ語の物語を必死に思い出して語るようになった。

「健康づくりを楽しもう」をテーマに、様々な人間と健康づくりの事例をトークやドキュメンタリーで紹介。中村敦夫キャスターの視点を通して、“押しつけ”でない“自主的な行動”を訴える。（１９９３年１２月７日〜１９９４年１月２８日放送、全５回）◆第１回は、健康づくりを楽しむ方法について。高齢化社会をより明るく豊かなものにするためには「自分の健康は自分で守る」ことが第一。これまではあれはするな、これをしろという強制・禁止型の管理医療が中心だったが、岡山大学の青山英康教授は「健康づくりは楽しいものでないとほんものではない」と力説。医学的には３５歳から老人の範疇、自分に合っていて息切れしない、長続きする健康法を見付ける事が大事だという。

東京・下町の古アパートを舞台に、個々がしだいに共存に目覚めていく時代の予感をユーモアとペーソスで描く。「個と共存」のテーマをリアルな生活感覚と情感豊かな映像で表現する。（１９９３年４月１７日～５月１日放送、全３回）◆アパートの住人・泰代の夫の選挙投票日が迫り、秘書が押しかけてきて帰って欲しいと頼む。「本人が来れば」という泰代の言葉を聞き、治郎は電話番号を調べ彼女の気持ちを伝える。桂子は治郎を訪ねてきた高田から治郎の正体を聞き出す。ロボット研究所の主任研究員で、スカウトの話があったが、会社に潰され、そのうえさらに横領のうたがいをかけられてクビになったらしい。

姫路市の北、海抜３７１メートル、深い森の中にある書写山円教寺。天台僧・性空上人の開山になる平安期からの古刹である。１０歳の時から法華経を学び３６歳で出家した上人は、２０年あまりの修業の後、紫雲に導かれて書写山に入ったという。京の都で栄達を競うことを目指さず、修験の山に入った上人は様々な徳行をあらわし、それを慕って花山法皇や和泉式部など都人が書写山を訪れ、寺院も整備されていった。上人の没後も発展を続けた円教寺の堂宇や寺宝を紹介しつつ、性空上人の生涯と寺の歴史を追う。◆【重要文化財】円教寺大講堂・食堂・常行堂・金剛堂・護法堂釈迦三尊像（円教寺）、四天王像（円教寺）

街の小さなクリニックを舞台に、様々な状況で苦悩する人々と出会い、解決の糸口を見つけようと前向きに患者と接する産婦人科の女医の姿を通し、「性」や「男と女の豊かなあり方」について考える。◆大きな総合病院と違って、街の小さなクリニックには十代の患者が多い。妊娠４か月で恋人に逃げられ、泣く泣く中絶する女子高生もいるば、親を粘り強く説得して無事出産し、自立していく高校生カップルもいる。最良の方向を求めて、女医・河野美代子（宮崎淑子）は奮闘する。

平安末期、平家の南都焼き討ちで焼失した東大寺。しかし東大寺にも朝廷にも復興資金はなく、建築技術も失われていた。不可能と考えられていた再建を成し遂げたのは、６１歳という高齢で復興造営責任者である勧進職に任ぜられた俊乗房重源であった。無名の勧進聖だった重源は、高野山で率いていた阿弥陀信仰に結ばれた念仏聖の組織力を活かし、全国から共同募金方式で浄財を集めた。源平争乱の中、幾多の苦難の末に大仏鋳造と大仏殿修復という一大事業をを果たした重源、その知識や技術の源泉と人物像を描く◆【国宝】東大寺大仏殿、東大寺蘆舎那仏坐像、浄瑠璃寺阿弥陀如来像【重要文化財】東大寺槌印【その他】東大寺縁起絵巻

長唄界で女性初の人間国宝となった今藤綾子は、名人の、父・二世長十郎直伝の百曲ほどを自筆の譜面に残して、今日に伝えている。父子相伝の芸談に加え、数々の名文句で知られながら、今は滅多に聴くことのない「与作」の演奏を聴く。同様に稀曲である「美面より」は、二世澤村田之助が幕末に初演した当たり芸であるが、実在の菓子の名を取り入れている。渡辺保は、”江戸の広告事情”と題して、舞台と実社会とを巧妙に融合させた戯作者の機知と、大らかな江戸の庶民性を指摘する。

ふたりの男が和尚の勧めで寺の坊主になった。和尚が留守の時、村から使いが来て通夜で読経してほしいという。ふたりは大僧正と僧侶になりすまして出かけることにした。