日本を代表する山、富士山の頂で暮らす測候所員の生活を１年半にわたって追い、山頂にまつわる生と死、四季を通じての山頂の自然の驚異、そしてそこに生きる男たちのドラマをとらえる。◆夏は登山者で賑わう富士山頂だが、冬はたった５人の測候所員が厳しい観測作業を交代で続けながら暮らすだけになる。もう一人、今ではただ一人の強力・並木宗二郎さんが１０日に一度、所員の食糧を背負って黙々と冬の富士を登る。１９９２年の大晦日には登山者が一人あり、測候所で休んだ後下山した。しかし途中で滑洛、遺体で発見された。（富士山頂測候所は２００４年に無人化）

およそ３００年間の徳川時代、豊臣秀吉の功業は無視され続けてきた。その間、秀吉の遺宝をひっそりと守り続けていたのが、三十三間堂の本坊である名刹・妙法院門跡である。聚楽第、大阪城、伏見城と秀吉の遺構がすべて消し去られた中で、太閤のけんらんたる桃山文化の香りが漂う遺品が妙法院の随所に眠っている。皇室と深い関わりをもち一般公開の機会は年に１０日という別格の寺を初めてテレビが取材、太閤秀吉の栄光を貴重な映像でよみがえらせ、伝える。◆【国宝】妙法院庫裡、ポルトガル印度副王信書（妙法院）、華王院本堂（三十三間堂）、千手観音坐像（蓮華王院本堂安置）、豊国神社唐門【重要文化財】妙法院大玄関

近代日本の文学名作を、一流の演出家が競作する２週完結型のシリーズ。高利貸しの囲われ者と学生との恋情を描いた森鴎外の「雁」を久世光彦が演出した。（１９９３年５月３日開始）◆無縁坂の途中の妾宅に住むお玉（田中裕子）は坂の上の下宿住まいの医学生岡田（石橋保）に淡い思いをいだくようになっていた。雁の来るころ不忍池の近くで火事があり、父の身を案じて駆け付けたお玉は荷物運びを手伝う岡田と顔を合わせ、ときめく胸に岡田への思慕を改めて感じる。岡田もお玉のことを思っていたが二人とも口に出せない。やがて岡田にドイツ留学の話が持ち上がった。それは岡田にとってまたとない機会であると同時にお玉との別れを意味した。

地域に根差した発想と舞台で、ＮＨＫ地方局が制作するドラマシリーズ。第２回はＮＨＫ福岡。数多くのミュージシャンを生んだ博多を舞台に、音楽に打ち込む５人の若者の夢と葛藤を描く。◆福岡のアマチュアバンド「ナイトフライト」は、東京進出を前に博多最後のライブ“ラストパーティー”を企画していた。しかし当日になって東京の音楽事務所から、バンド５人全員でのデビューは難しいと連絡が入る。選ばれた２人と残される３人、ライブ目前でメンバーたちは口論を始める。

マーチ家の次女・ジョー先生と夫のベア先生が運営するプラムフィールド学園。生徒たちは個性豊かな子供ばかり。双子の兄デミと妹デーズィ、小さなバイオリン弾きナット、不良少年のダン、そしてジョー先生の子供時代にそっくりなおてんば少女ナン…。いろんな問題を起こす子供たちを相手に、ジョー先生たちは悪戦苦闘しながらも本当の親のようにあたたく接し、子供たちもまた本当の親以上にジョー先生たちを慕う。数々の事件に直面しながらも、明るく生きていく彼らの姿を描く。原作：ルイザ・メイ・オルコット「第三若草物語」。ハウス食品世界名作劇場。（１９９３年１月１７日〜１２月１９日放送、全４０回）

白血病の治療のために広島へやってきたウクライナの少女の様子に、チェルノブイリ小児病棟で奮戦する医師たちの姿を交えて伝え、医療援助の在り方を問う。さらに「放射能汚染」の実際などについて専門家に訊ね、科学的に検証、説明する。◆１９９２年１１月、白血病の治療のため来日した少女カーチャ。カーチャの国ウクライナは、１９８６年にチェルノブイリ原子力発電所事故が起こった国である。事故の後、国が被災者を専門に治療する病院をつくって対策に当たっているが、現場は様々な問題を抱えている。小児白血病の治癒率は高くても４０％で、日本の半分にも満たない。こういった厳しい現実に追い打ちをかけるように、近年子供たちに甲状腺ガンが多発しているという。

数多くのドラマを生んだ１９９３年（平成５）のスポーツ界を振り返る、年末のスポーツハイライト。◆史上最年少で大関に昇進した貴ノ花、続いて兄の若ノ花も大関昇進を果たし、大相撲史上初の兄弟同時大関となった。一方、久しく空席だった横綱の地位にハワイ出身の曙が昇りつめ、伝統を重んじる角界で初の外国人横綱となった。初づくめとなった１９９３年の大相撲の１年を豊富な映像とともに振り返る。

　１９９１年に９７歳で亡くなった洋画家中川一政は、戦災で家を失ったあと、神奈川県の真鶴半島に住み着き、この地が画伯の第二の故郷となった。真鶴半島自然公園の樹林の中に建つ美術館は、文化勲章受章の画伯から多数の作品の寄贈をうけ、真鶴町が９１年に開館した。生涯に２００点近い作品を遺した「薔薇」や、真鶴に移ったあと徹底的な現場主義を貫いた「福浦魚港」、「駒ケ岳」などの作品が、中川絵画の魅力を生き生きと伝える。