平安神宮は１８９５（明治２８）年、平安建都千百年を記念して造営された。往時の平安京大内裏の一部を８分の５の規模で復元した。桓武天皇による平安遷都の四神故事や水の都としての市街設計、近代都市への脱皮など、王都がたどってきた歴史と変ぼうを描き出す。◆破壊と再生を繰り返してきた世界に誇るべき古都は、時代に適応しつつ今も生き続けている。また『時代祭』は、時々の歴史風俗を忠実に再現させ、京都市民の特別の思いが込められた祭りである。◆【重要文化財】旧日本銀行京都支店◆【その他】平安神宮応天門、大極殿、蒼龍楼、白虎楼、平安京豊楽殿遺址〔京都府〕、平安京三條東殿遺址、平安神宮時代祭

各界の著名人の“交遊録”を軸に、出会い、別れ、愛憎など、人と人との深い結びつきを描きだす。（１９９２年４月３日～９３年３月２６日）◆今回は、俳優の八名信夫と日本医師会会長の村瀬敏郎。

現職の精神科医である教授ががんに冒された妻の生と死を見つめた闘病記エッセイをドラマ化、夫婦、家族の絆の重さを問う。◆精神科医・大原健士郎の家族は妻・富子と息子・浩一の３人だった。１３年前悪性腫瘍に冒された富子の病気が５年後に再発した。医大生の浩一は、病気を告知すべきだという。浩一と健士郎は富子の病気についてことごとく対立した。そして６年前、富子が世を去ると浩一は家を出て、今はカナダに留学している。６年がたっても、健士郎は駅を出ると駅前通りに車を止めて待っていた妻の姿を探してしまうのだった。

螺鈿の調度品としては日本最古の国宝、『片輪車蒔絵螺鈿手箱』。長さ３０センチの小箱に描かれた流水文の中に片輪車が浮かぶ構図。◆平安貴族が使った牛車。鴨川の流れの中で乾燥を防ぐため半輪を水に浸す有様は、当時ごくありふれた風景だった。中国から渡った螺鈿技術に徐々に改良を加え、金銀や夜光貝をあしらう高度な蒔絵螺鈿技術が日本独自のものとして育っていった。構図も、身近な自然を取り入れながら日本の美意識を凝縮させていた。◆【国宝】片輪車蒔絵螺鈿手箱〔東京国立博物館〕、扇面法華経冊子巻六〔四天王寺〕◆【その他】螺鈿紫檀五弦琵琶〔正倉院〕、螺鈿玉帯箱

日本を代表する国立３大博物館の１つ、京都国立博物館。本館そのものが重要文化財。展示される豊富な作品からは日本歴史のそれぞれの時代が見えてくる。国立博物館の中で「京博」は雅の収蔵庫。８００点余の作品群がそれを物語る。明治初期、伝統否定の危機に文化財保護を第１に掲げ、その役割から各寺社から寄託された名品が多いのも特徴。近代化再生を果たした京都の町にたたずむ美の殿堂の珠玉たちが語りかけてくる。◆【国宝】西本願寺飛雲閣、山水屏風〔京都国立博物館〕、山越阿弥陀図、餓鬼草紙、伝源頼朝像〔神護寺〕、風神雷神図〔建仁寺〕

　金谷の石仏の前、山辺の道近くに建つ喜多美術館は、館長の喜多才治郎氏の個人コレクションによるユニークな美術館である。ルノアール、ゴッホ、ピカソ、安井曾太郎、佐伯祐三など現代美術の名作を数多く所蔵し、又、別館ではアンディー・ウォーホールやマルセル・デュシャンなどモダンアートの世界を展開している。館長自らの鑑賞眼による現代美術の蒐集、展示が古都、奈良の雰囲気と不思議な調和を生み出している。（奈良県桜井市）

隠居した旦那が茶の湯を楽しもうと、下男に材料を買いにやらす。抹茶は青い粉と思った下男は青きな粉と泡の出るムクの木を買ってくる。苦労してお茶らしくなったものを飲むが、二人とも下痢をしてしまう。主人は誰かまわず自己流の茶を飲ませて楽しんだが、みな敬遠して寄りつかなくなる。以前世話になった男が来たので茶を点てるが、菓子に出した手製の羊羹もひどいもので、客はスキを見て窓から投げ捨てる。羊羹が当たった百姓は「あ、また茶の湯だよ」。

坂田三吉は宿縁の相手、関根名人と三度目の対決で勝利を得る。坂田の将棋への執念を理解して黙々と彼を支え、苦労の挙句に身体をこわした女房小春は、そのことで坂田を悩ませてはと自ら死を選ぼうとする。坂田は、この対局に勝つことが小春への愛と感謝のしるしと心に決め、執念を燃やしつづけた。喜びの瞬間、坂田は小春の待つ大阪の空へ向かって「小春、勝ったぞ」と叫んでいた。