１９８３年９月１日、ソ連領サハリンを領空侵犯した大韓航空機がソビエト軍戦闘機に撃墜された。東西冷戦の狭間で起きたこの事件の真相は、謎に包まれたままとなっている。ロシアの新聞・イズベスチヤと共同でこの悲劇を追う。◆大韓航空キ００７便の乗客・乗員２６９人は全員が死亡している。海底に眠る機体の映像、撃墜した元ソ連軍パイロットの生々しい証言、フライトレコーダーがソ連軍に回収されていたことなどの事実とともに、いまだ遺品すら手にできない遺族の悲しみも伝える。

幡随院の武勇伝である。江戸の相撲取り、桜川は給金も安い下っ端の力士である。旅興業で母の急病を聞き、急いで江戸へ帰る途中、親方からもらった土産代も全てスリに取られてしまう。満足な食事にもありつけないところを折り良く店で休んでいた江戸の侠客、幡随院長兵衛が話を聞いて助けてくれる。桜川が発った後、鈴ケ森の盗賊の話を聞いた長兵衛は、桜川が危ないと後を追い、やはり桜川を襲っていた盗賊をこらしめ改心させる。◆脚色：野口哺堂、曲師：吉野静

江戸時代の町並みを残す奈良・五條市を散策し、歴史の中に生きる現代の人々の生活ぶりを紹介する。◆和歌山との県境に近い五條市は大和五條とも呼ばれ、かつて紀州街道の宿場町として栄えたところ。徳川時代初期に二見城が築かれて以来、商業の町になったという。油屋・酒屋・質屋などが並び、大和と紀州を結ぶ一大拠点であった。新町通りには今でも本瓦ぶき・しっくい塗り・大壁造りの町屋が１１０棟も並び、江戸時代そのままの風情がある。◆現在は、建築年代が明らかな民家としては日本最古の栗山家や、五條特産の富有柿からワインを造っている造り酒屋が有名である。

福井市の近く緑の山中にある「禅」の総本山、永平寺。１３世紀に道元禅師によって開かれた。七堂伽藍が建ち、多くの雲水の修業の場であり、観光地でもある。◆名家に生まれた道元は幼くして両親と死別し、世の無常を感じ１４歳で出家。真理を求めた末、永平寺に到達する。戒律に厳しい永平寺の禅僧修業の姿を追い、「正法眼蔵」を世に問うた道元禅師の教えを、座禅の精神を体得すべく７００年にわたり守り続ける禅寺の今日を伝える。◆【国宝】普勧坐禅儀〔永平寺〕◆【その他】永平寺山門、承陽門、仏殿、庫院、僧堂、法堂、承陽殿、道元禅師行状之図、五百羅漢、十六羅漢

子供が成長し、母親も外での仕事が忙しく親子のふれあいが少なくなる中で、子供が作るお弁当が新たな親子の交流を生んでいる一家を描く。◆秋田県に暮らす谷さん一家は、父母と娘２人の４人家族。高校１年生の風子さんは毎日自分と姉、母と３人分のお弁当を作る。母の京子さんも仕事で家を空けることが多く、娘２人には小さい頃から家事をさせている。風ちゃんの弁当作りもその一環で、１個につき２００円の製作料をもらい、それが小遣いとなる。短大生の姉・桐子さんにとっても、家の掃除などの家事がアルバイトとなっている。娘たちが母のユニークな育て方を語る。

日本人の起源は、沖縄で出土した約１万８千年前の港川人まで遡ることができる。港川人は、中国の柳江人とよく似ており、南アジア系と考えられている。縄文人は港川人と同じ系統であり、大陸との交流が少なく独特の文化を成熟させた。弥生時代になると、朝鮮から北アジア系の人々が渡来し、水稲技術を伝えて日本の土台をつくった。講義では、自然人類学の立場から日本人の起源を述べ、縄文人・渡来型弥生人の２つの系統が現代にも残っていることを解説する。講師は国際高等研究所の埴原和郎副所長。

１０年前の約束を果たしに帰郷した男と再会した友人たち、それぞれの夢と現実がぶつかりあう人間模様を描く。◆優一は詐欺まがいの仕事に嫌気がさし、会社の金を横領。「大きくなったらこの丘に家を建ててみんなで住もう」との１０年前の約束を果たそうと故郷に帰ってきた。地主の富田に丘の麦を刈れたら土地を売るといわれ、刈り入れを待つことになる。やがてそれぞれの生活を抱え思惑もある幼なじみたちが優一の麦刈りの手伝いに現れる。

１９９２年１１月、石川県志賀町の北陸電力・志賀原子力発電所の試運転が始まった。建設計画の発表以来、推進と反対で揺れ動いた志賀町の２５年間を関係者の証言で振り返る。