江戸の町人文化全盛の文化、文政の頃、その情報発信の中心地は遊郭の吉原だった。豪商達はもとより、武家、人情本作家、浮世絵師、出版元など当時の文化人が盛んに出入りし、時には大名もお忍びで現れ、盛大な宴を催した。清元「北州」は、吉原の年中行事を歳時記風に巧みに取り入れた踊りである。また、この頃流行った端唄の上品なものを集めて生まれたのがうた澤節だ。「身は一つ」は、狂歌で有名な太田蜀山人の作といわれ、名文句で綴られている。江戸文化史の西山松之助氏に聞く。◆舞踊　清元「北州」、うた澤「身は一つ」、清元志寿太夫【人間国宝】、堅田喜三久【人間国宝】

都市化の波とともに生活の場を追われていた野鳥たちが、再び都市に生息地を求め、人間社会を巧みに利用しながら都市鳥として生きている様子を紹介する。

人生の転機を迎えたひとりの男とその家族を中心に、それぞれの生き方を模索する人々を暖かく描く。（９月３０日終了、全３回）◆明は妻・久子と娘・奈美との３人家族。自動車会社で設計の仕事に携わってきた。ある日リストラ計画で販売店への出向を命じられるが、設計ひとすじだった明にノルマは重くのしかかり、戦時中の空襲の際に自分を助けてくれて以来親代わりのように自分を支えてくれていた百合子のアパートを訪ねる。いっぽう久子は明の悩みに気づいていたが、何も話さない夫に不満を抱いており、奈美は妻子ある男性とつきあっていた。

聞くこと、話すことが不自由な女性・彩の、愛に生きるひたむきな姿を描いた連続ドラマ（１９９５年４月１２日〜７月１２日、全１２回）の総集編。運命の出逢いから涙の別離までを紹介する。◆医師・永井秀一（大沢たかお）は東京の大病院長である父に反発し、北海道美幌別の診療所で働く。彼に思いを寄せる倉本彩（酒井法子）は、口と耳が不自由ながら優秀な看護婦だ。秀一は東京の大学病院に引き抜かれ、上京。空港で事故に巻き込まれ、父の病院へ担ぎ込まる。上京した彩は、ようやく秀一を見つけ出すが、彼は記憶を失っていた。彩は身元を隠し、付き添い婦として病院で働き始める。

長野県北部、緑溢れる盆地を詩情豊かにゆったりと流れる千曲川。６月中旬、戸倉町ではつけば漁が行われている。「つけば漁」というのは、川の中ほどに人工の「つけば」、つまり産卵場を作り、上ってきたウグイをとるという珍しい漁法、戸倉町の半崎さんはこの道３０年、伝統のこの漁法でウグイをとり、河川敷の仮設小屋でとれたてのウグイ料理に腕をふるう。海のない長野では、川魚料理に人々は親しんできた。◆アンズの里、更埴市には山の幸にも恵まれた千曲川沿いのくらしがある。春、まるで雲海のようにピンクの花を咲かせた１５万本のアンズは、つけばが終わり、アユが解禁になる頃に、この実がうれてくる。◆６月１７日、梅雨の中休み。晴れ上がった夏空の下、千曲川のアユ釣りが始まり、千人を越す釣人たちが駆けつける。人も魚も主役交替の時を迎えた千曲川、季節も間もなく夏本番を迎える。　

清和源氏の流れを汲み、十代二百三十年のあいだ続いた武家の名門・今川氏。しかしその姿は徳川三百年の下にうずもれてしまっている。戦乱の渦巻く時代に長く栄えた今川氏の謎を追う。（１０月８日〜１２月２４日放送、全１２回）◆今川氏とかかわりのある伝統芸能を探す。駿府でなくなった能の完成者・観阿弥は亡くなる１５日前に浅間神社で舞ったと記録に残る。また義元は観世一族を駿府に住まわせ、館に招いて能を鑑賞したとされる。寺の役割だった舞楽を担当した久能寺と建穂寺は今川氏の厚い保護を受けた。しかし芸能は民衆にはあまり広まらなかった。

京都三条にある紺田屋という縮緬問屋の一人娘お花、病で医者にも見離されたある日、好きなお菓子が喉に詰まり死んでしまう。悲しんだ両親が娘の棺に三百両入れたのを見ていた手代の新七が、あの金で店を出そうと夜中に墓を掘り出すと、お花が息を吹き返す。今さら店には戻れない二人は、三百両を手に江戸浅草で呉服店を開き、繁盛する。

２１世紀には世界一の経済大国になるといわれ、世界の注目を集める中国。驚異的な経済発展と社会矛盾を同時に抱え、変革の波に洗われる中国全土を取材し、中国社会の深層を描くシリーズ。（１９９４年１０月９日〜１９９５年９月１０日、全１１回）◆３万ドルの借金と命をかけて、アメリカを目指す中国人密航者たち。ニューヨークのチャイナタウンには、月に千人を超える福建人が一攫千金を夢見て流れ込む。しかし、そこには時給わずか１ドル、奴隷労働と呼ばれる過酷な現実が待っていた。豊かになる夢を追い求め、命をかけて海を渡った福建の人々のさまざまな暮らしを描く。