英国からやってきて日本のハンセン病患者の苦しみに接し、彼らの救済に生涯を捧げて日本の土となった二人の女性の足跡をたどる。この病気の差別の歴史を検証し、現在の国際社会の中で日本が求められているものを探る。◆１８９１年（明治２４）英国伝道教会の宣教師としてやってきた３４歳のハンナ・リデルは熊本へ派遣された。旧制五高で英語を教えながら布教活動をしていたが、寺の境内で悲惨なハンセン病患者の姿を見たことが彼女の生涯を決めた。病院設立を本部に訴えるが意見が合わず破門され、日本の指導層に働きかけて熊本回春病院を設立する。彼女の死後は姪のエダ・ライトが遺志を継ごうとしたが、軍国化した日本は彼女にスパイ容疑をかけ国外追放した。

ある藩の殿様、侍たちの酒による過ちが多いので、皆に禁酒を申し渡し、侍屋敷前に番屋を置き取り締まることになった。酒好きの侍から何とか酒を届けよと頼まれた出入りの酒屋が、菓子だ油だと偽って番屋を通ろうとするが、いずれもバレてしまい、隠した酒を吟味と称して飲まれてしまう。酒屋の小僧、では逆に中身を正直に言って仇をとろうと、ある物を入れて番屋に差し出す。

岡山・寄島の朝は５時から始まる。市場では、瀬戸内の旬の魚が次々とせりにかけられる。シャコも寄島の特産物で、とれたてのシャコは、すぐに加工されて大阪方面に送られる。もう一つの寄島名物「アナジャコ」は、シャコに似ているが実はヤドカリの仲間。アナジャコ釣りが寄島のひとたちにとって季節を味わう楽しみとなっている。

１９９０年８月１５日、テレビ朝日が終戦特集として「水曜スーパーキャスト」枠で放送したドキュメンタリー。満州事変から６０年目にあたる１９９１年、日中戦争にかかわる真相を伝える。◆「第八次公心集読書開拓団」は１９４５年８月１５日、移民先の「洋犁片」「中和屯」の二つの村落で発生した中国人の暴動に巻きこまれ、襲撃されて多くの血が流れた。開拓民は日本の敗戦を知らされていなかったという。そこで何が、なぜ起きたのか。現地滞在２ヶ月をかけて証言を得、真相を探る。

富士山は神が宿る聖地であるという信仰は関東周辺で強い。「富士講」はそんな人たちによって伝承されてきた。◆「六根清浄」と唱えながら山頂に向かうこの言葉は信者でなくても知っている文句である。角行法師が富士山で悟りを開き弟子たちが広めた富士講は、遠く室町時代から続いている。昔は１０日かかった富士登山も簡便になったが、講の人たちは登山の苦しさを喜びと感謝に変えて富士山と向き合うのである。◆富士講習俗〔山梨県〕

徳島県・那賀川の県下最大ダムの計画に、小さな村が真っ向から反対した。ダムの是非を争点に戦われる村の選挙を追いながら、形骸化した地方自治の現状、河川行政の問題点、巨額事業費の動くダム計画に揺れる村の人間模様を描く。◆徳島県中西部の剣山系に源を発し、８市町村を貫いて紀伊水道に注ぐ那賀川。その最上流部に治水・利水目的のダムを造る計画が持ち上がったのは２３年前だった。その計画に、ダムに沈む小さな過疎の村・木頭村が反対。「ダムの時代は終わった」と言い切る藤田恵村長は、村民の先頭に立って運動し、建設大臣に計画撤回の陳情、独自の「ダム阻止条例」制定と奔走する。窓口の徳島県と村の意見交換会は平行線どころか脱線をくりかえし、ときには罵り合いに至る状態だ。

九州有明海沿岸の人々は、春は畑、秋は海と半年ずつ分けて働く。その典型的な暮らしぶりを鹿島市音成の人々に見る。◆半農半漁の暮らしは米から始まる。人々は陸が豊作であれば海も豊漁であると信じて祈る。海の暮らしは潮に合わせる。干満の差が６メートルもある有明の干潟は、小魚の宝庫でもある。潮干狩りが終わると米作りが始まる。秋の収穫が済むとノリ作りの準備、冬の夜のノリの摘み取りと、畑と海が続く暮らしである。◆干潟の潟そり（潟スキー）〔佐賀県〕、天子神社の田祈祷、お島さんまいり、鉦浮立・面浮立

江戸時代の髪結床には将棋や草双紙それに講釈本などあり、町内の若い衆の溜まり場になっていた。ろくに文字を知らぬおっさんに無理に講釈本を読ませて面白がったり、将棋に夢中の二人の横でキセルの両端とも雁首に付け替え、吸おうとして慌てる姿を喜んだりしている。そこに主人が出てきて、賑やかさに気をとられていたら客が銭を置かずに帰ってしまったという。