中国山地、岡山県北東部の美作地方は、なだらかな斜面や平坦な地理条件を利用して牛を放牧し、役牛である美作牛の産地として知られた。機械化が進み牛を飼育する農家は減ったが、今も内厩（母屋の中に牛を飼う場所を設けたもの）で牛と生活を共にする農家がある。◆役牛の供給地として栄えたころの中山神社と地元衆とのつながりや牛と相性の良い猿宮との関係など、牛と人間の交流の歴史を振り返る。◆羽田神社のお田植え祭り、中山神社の秋の大祭みこし巡幸、大日講〔岡山県〕

第二次世界大戦下、日本軍の占領によって“昭南島”と改名されたシンガポールで、博物館や植物園などの文化財を守り抜いた人々がいた。その偉業を振り返りつつも「あの戦争がなかったら、誰も、何も、守る必要はなかった」という言葉を噛みしめる。戦後５０年特別企画。◆１９４２年（昭和１７）“昭南島”とされたシンガポール。直後に華僑の大虐殺や搾取が始まり、日本軍の圧政の傷が深く残る。その殺戮と破壊の中、植物園の園長だったイギリス人コーナー氏は、捕虜収容所への摘発をくぐり抜けながら単身日本軍司令部に乗り込み、文化財の保護を訴える。幸いにも軍政顧問・徳川義親は軍部に屈しない異色の貴族であり、再三の捕虜収容の要請をはね返して研究を守った。

その昔、「動橋川（いぶりはしがわ）」は、たびたび氾濫し水害を引き起こした。これは、川にすむ魚「グズ」の化け物が悪さをするせいだ、と村人たちは言い伝えてきた。この土地で昭和のはじめから行われてきた「ぐず焼き祭り」は、グズの化け物を張り子で作り、焚き火で燃やして豊作を祈る行事となっている。悪役に仕立てられた「ぐず」とはどんな魚なのか。学名では「ドンコ」、金沢では「ゴリ」と呼んでいる。ぐず焼き祭りの当日、青年会の若者たちが、長さ１０メートル、重さ１トンもある「お化けぐず」をかついで３時間、町じゅうを練り歩き、大暴れする。そこへ、別のグズが子どもたちにかつがれて登場、さらに子どもたちに代わって女子高生たちがグズをかつぐ。夜１０時、「ぐず焼き」が始まる。ことし還暦を迎えたひとたちがグズ退治の火をつける。青年会のグズが引きまわされ、火の中に消えて祭りは終わる。

亀岡と嵐山の１６キロを船で結ぶ保津川下りは、江戸時代のはじめに京の商人が水路を開き、以来４百年近く受け継がれてきた。舟下りの技と心、船頭たちの船さばきはますます冴えを見せている。◆トロッコ列車が川下りと並ぶ保津峡の風物史となっているが、運転開始は僅か４年前のこと。保津川の鉄橋の上では一時停止して、最高の展望台のサービス。また、川下りの船と並んで、速度を合わせて走ることもできるという溢れる緑の中を縫って、船頭たちはきょうも保津川下りの船を操る

新潟の造り酒屋を舞台に、大正から昭和へ、強い意志を持って自分の人生を切りひらく盲目の少女・烈と、彼女を支える叔母・佐穂の姿を描く。原作：宮尾登美子。（１９９５年６月４日～７月９日放送、全６回）◆腐造を出していらい閉められて久しい田乃内家の蔵。烈は意造に酒造りを再開したいと申し出る。はじめとりあわなかった意造だが、やがてその熱意に負け、烈をともなって杜氏の平山を訪ねる。そこで烈は漁師の涼太と出会う。酒造を再開した田乃内家には活気が戻り、烈と東京の一流大学出の征義との縁談も決まった。しかし、烈は蔵人として働く涼太に再会、惹かれていた。

本州の最南端、和歌山県串本町潮岬。第二次世界大戦の終わり近くになると、この岬を目印にして米軍機Ｂ２９が飛来するようになった。そして行き帰りと数多くの飛行機が通る中には、墜落するものもあった。突然空から降ってくる敵兵に、村の人たちはどう対応したのか。また、不時着した米国兵士たちはどうなったのか。５０年の昔を、日本とアメリカにたどる。

我が国の宇宙科学研究の中枢機関である宇宙科学研究所を訪問し、研究所の歩みと、様々な研究開発の実際を紹介する。紹介されるのは、ロケットなど宇宙飛翔体の開発、人工衛星、Ｘ線天文学、オーロラの観測、惑星などの分野である。案内は、文部省宇宙科学研究所の秋葉鐐二郎所長ほか。

棟方志功の命名という「優佳良織」。アイヌの工芸以外に特有の織物文化のなかった北海道に、旭川市在住の織元・木内綾さんが１９６２（昭和３７）年来独自の手法で創り出した毛織物である。羊毛を素材に、モチーフは北海道の自然。鮮やかな北国の自然を表現するためには日本古来の草木染では色数が足りず、伝統の技術に束縛されることのない北海道の風土の中で、木内さんは奔放な色の世界を築き上げた。旭川市の工房で木内さんの優佳良織への挑戦が続く。