能や歌舞伎など日本の芸能に平家琵琶に取材した演目は数多いが、長唄の「八島官女」もその一つ。屋島の合戦で敗れ、海女となった平氏の女御が、身の不運を嘆き昔の栄華を懐かしむという哀れな物語。宗家夫人の立場を離れ、紫派藤間流を主宰、映画や舞台の女優、演出家としても活躍している藤間紫が舞う。藤間は日本舞踊が本分と語り、渡辺保は女形が演じてきた歌舞伎の劇場舞踊を、女性の舞踊家か演じることの意味を解説する。最後に、屋島や壇の浦などゆかりの地を訪ねる。

　東京湾横断道路の工事のために、房総半島の山が削られている。巨大開発が及ぼす影響を探る。◆１９９６年３月の完成をめざすこの「夢の架け橋」、開通のあかつきには東京湾を１５分で渡ることができるようになるという。しかし橋を支える二つの人工島に使われる山砂の採取のため、房総半島の山がつぎつぎと削りとられている。山間部の住民は騒音や震動に悩まされ、往来する大型ダンプカーによる交通事故におびえている。

青森県域の風土や産業、人々の暮らしなどを記録したドキュメンタリー番組。（１９９２年４月５日～１９９４年３月２７日放送、全３６回）◆青森県佐井村は過疎地域の指定を受けている小さな漁村。その佐井村に久しぶりの活気が溢れている。夏の成人式の日に、村を出ていた若者たちが故郷に帰ってきたのだ。村に残った若者、そして村から出て行く若者。それぞれ選んだ道は違うが、故郷への想いは同じである。

江戸の天才画家・久隅守景は、狩野探幽門下の逸材だった。若くして師とともに加賀に赴き、藩主前田家の菩提寺・瑞龍寺の襖絵を描く。その成功を認められて探幽の姪をめとり、地位と名声を確立した。二人の子にも恵まれ安定した生活が続くはずであったが、子の不品行により自ら破門を申し出た。そして金沢に身を寄せ、今日まで残る幾多の傑作をものした。晩年に描かれた「夕顔棚納涼図」には、農家の家族の仲睦まじい姿が描かれている。温かい家庭を夢みながら孤独のうちに世を去った彼の皮肉な一生を追う。◆【国宝】納涼図（東京国立博物館）【重要文化財】瑞龍寺法堂・仏殿・山門・総門・廻廊、四季耕作図屏風【その他】楼閣山水図襖、瀟湘八景図屏風

大工の棟梁、又五郎の若い衆が自分たちの仕事ぶりをけなす男をとっちめていると、又五郎がやってきて仲に入る。その男も大工と聞き、又五郎は何かの役に立つかもと家で預かることにする。男は名も明かさず寝て食べるばかりの毎日だったが、彫り物ならと二階にこもって彫り上げる。実はこれが運慶の彫った恵比須さんに対応する左甚五郎の大黒さんであった。

作家・早乙女貢氏が福島県に関わりのある人物の足跡をたどり、その素顔をさぐるシリーズ。◆「ロスで剣の道を貫いた男」。戊辰戦争時、会津藩を救援して官軍と戦い、戦死した森要蔵の曾孫である昭和の剣士・森寅雄。渡米して剣道を広めながらフェンシングのチャンピオンになり、米国オリンピックチームのコーチとなった。日系人たちの支えとなり剣道を国際的なものとするために奔走した一生を追う。

一中節、河東節、宮薗節、荻江節などは江戸時代に盛んに行われ、歌舞伎の舞台を含め、むしろ主流であったが、その後、常磐津、清元、長唄など時世に合った流派に勢いが移り、大正期になると町田嘉章に古曲と名付けられた。しかしこの年、日本芸能史上の母なる流派としてこれら古曲の四派が文化庁の重要無形文化財の認定を受けることになった。関係者の喜び、後継者育成など伝統文化継承の苦心談を含め、一中節と河東節から、様々の名文句に包まれた指折りの名作二曲を鑑賞する。

６４００キロにわたって中国南部を横断し、母なる大河とも呼ばれる揚子江の全貌をレポート。広大な流域の自然や住民の生活・文化などを紹介する。テレビ朝日開局３５周年記念番組、日中国交回復２０周年記念企画。◆揚子江の最初の一滴は、チベット高原の万年雪から流れだす。その後八省一市一自治区を経て東シナ海河口の上海へ至るまでに、中国全土の３分の１を流域とする。極限の高地に生きるチベット遊牧民から、稲作文化発祥の地といわれる雲雨省のぺー族、交通の要衝として栄える四川省重慶の人びと、天下一の絶景をダム建設と引きかえようとしている三峡など、揚子江のさまざまな表情をとらえる。