日本文学の名作を当代一流の演出家が競作する２回連続のテレビドラマシリーズ。この回は平凡な生活に退屈し、許されぬ恋いに溺れていく上流夫人を描く三島由紀夫の「美徳のよろめき」を脇阪時三が演出する。（１９９３年６月２８日・７月５日放送、全２回）◆節子（藤谷美和子）と土屋（阿部寛）は密会を重ね、そのうちに土屋の子を身籠った節子は中絶手術を受ける。見舞いに来た親友の与志子から土屋の浮気を知らせられ夫との生活に戻ろうとするが、夫や子供に後ろめたい気持ちを抱きながらも土屋との愛に溺れる自分を止めることができない。

　かつて金山で栄えた新潟県佐渡の相川町に、島に生きる無名の版画家の作品を集めた美術館がある。国際的な版画々家の高橋信一（１９１７〜８６）は高校の教師のかたわら、島内の農村漁村の人々に版画制作を教えて廻り、身のまわり１ｍ以内の身近な題材を取り上げることを熱心に説いた。古い歴史を持ち、民話や伝承の宝庫でもある佐渡の人々の作品は、生活の臭いとともに、圧倒的な迫力で見る者の胸に迫ってくる。

高度経済成長、ベトナム戦争、若者たちの反乱などに象徴される激動の時代・１９６０年代、「ウルトラセブン」を制作していた円谷プロを舞台に、脚本家・俳優・特撮現場のスタッフなど２０代の若者たちの作品にかける夢と情熱を描く。（全２回）◆１９６７年（昭和４２）夏。「ウルトラセブン」シリーズの撮影が始まって１か月の円谷プロに、交通事故で脚本家の赤井が死亡、ヒロイン・アンヌ役の弘子も重症という知らせが飛び込んできた。憶測が飛び交い撮影は一時中断、脚本家とアンヌ役の代わりを捜して現場は騒然となった。結局、脚本は新鋭の石川新一（香川照之）が書き上げ、アンヌ役にはスタジオでアルバイトをしていたゆり子（田村英里子）が抜擢されることになった。

近代化の中で消えつつある伝統技能、今も脈々と受け継がれている職人技術を横浜市内各地に訪ね、手作りの工程や職人さんたちへのインタビューを交え、年一番組という地道なペースで記録しているシリーズ。◆刻字は江戸時代の金文字看板に始まる。番組では横浜市南区の平井金文字店、木彫看板師６５年のキャリアをもつ平井さんを紹介する。材木選び、下地書き、木彫り、そして金箔張りなど、どの工程も確かな伝統技能で培われた新作が完成する。

１９８７年６月１日の放送開始以来、６０００回を超えて続く長寿ミニ番組。列車での旅を通して、美しい風景とそこに住む人々の生活を描く。◆今回は「ラウターブルンネン」と題して、スイスのラウターブルンネン・ユングフラウヨッホの道のりを紹介する。

アジア通で知られる元タイム誌記者、フランク・ギブニーさんが、複雑なアジアの近現代史をわかりやすく解説し、その奇跡的な経済成長の秘密を分析するシリーズ。（１９９３年５月３１日〜７月３０日、全９回）◆第８回は、アメリカが深いかかわりを持ったフィリピンと中国、２国の歴史をたどりながら、アジア諸国との関係についてアメリカが得た教訓について語る。１９世紀末、アジアに「文明」を持ち込み根付かせることを自らの使命としたアメリカは、その名目のもとにフィリピンを植民地化した。そして第二次大戦後はアジアを共産主義の脅威から守ることを新たな使命とした。現在、アメリカはアジアへの幻想を捨て、現実的な対応を迫られている。

毎年日本で冬を越す１万羽もの渡り鳥ツルは、一体どんなルートを通って何処へ行くのか。この長年の謎が、小型送信機と人工衛星を駆使した最新の追跡システムにより世界で始めて解明されていく過程を追う。◆鹿児島県出水（いずみ）市で越冬する１万羽のツルの中から、マナヅルの親子３組とナベヅルの親子２組に送信機を装着し人工衛星で渡りを追う。主役は「桜」と「松花（スンツォア）」の親子。親子は故郷までの長い旅を無事に乗り越えることできるのか、「松花」はどのように独立していくのか。衛星からはこうした親子の細かい動きも逐一データとして送ってくる。

名優十五代市川羽左衛門の娘に生まれ、１９１４年（大正３）、５才の初舞台から長らく女流舞踊家の第一人者として活躍した吾妻徳穂の芸と人を紹介する。吾妻流家元としての他、「芦刈」「静物語」など旺盛な創作活動、さらに戦後まもなく”アヅマ・カブキ”を結成して欧米で公演し、歌舞伎舞踊の海外紹介に努めた。国立劇場の舞台録画に加え、本人のインタビュー、共演者で長男の歌舞伎俳優・中村富十郎が語る母の芸、渡辺保の解説により、踊り一途に生きた吾妻徳穂の芸の魅力をたどる。