酔っぱらって帰ってきた亭主、早く寝かせようとする女房に、寝酒を飲まないと寝ないと絡む。女房が仕方なく酒の肴を買いに出かけると、亭主は通りかかったうどん屋を呼び止め、徳利を渡して燗だけつけさせ追いはらう。帰ってきた女房、事の次第を聞いて気の毒に思い、うどん屋を呼び返そうとする。

新潟の造り酒屋を舞台に、大正から昭和へ、強い意志を持って自分の人生を切りひらく盲目の少女・烈と、彼女を支える叔母・佐穂の姿を描く。原作：宮尾登美子。（１９９５年６月４日～７月９日放送、全６回）◆大正１３年（１９２４）、６歳となった烈の目に異常が見られるようになった。意造と佐穂は彼女を東京の病院に連れて行くが、治療法はなくいずれ失明するだろうと告げられる。眼鏡をかけることになった烈は学校でいじめられる。おりしも田乃内家の酒に雑菌が入り、腐造を出してしまう。腐造を出した杜氏は辞めるのが掟、蔵人全員が田乃内家を去る。失意の意造が料亭通いの日々を送るうち、妻の賀穂の訃報が入る。雪の中、烈の目の快癒を祈って観音参りをしていたのだ。

岐阜県、根尾谷に佇む日本第２の古木は千五百年間変わらず花を咲かせ続けている。白い小ぶりの花をつけるが、花の盛りを過ぎると、全体的にやや淡い墨のような色になることから、「淡墨桜（うすずみざくら）」と呼ばれている。千五百年もの間、伐採もされずに生きのびてきた淡墨桜は、昭和４０年代に書かれた宇野千代の小説「淡墨の桜」で一躍有名になり、特に満開の時期には１日に４万人の観光客が訪れる。

昔から吉野といえば桜、桜といえば吉野と云われているように、日本一を誇る桜の名所、吉野山はその桜を求めて、古くから西行法師をはじめ多くの歌人や文学者が訪れた。今もたくさんの人たちが集まってくる。◆金峯山寺蔵王堂は山岳宗教修験道の総本山で、今からおよそ千三百年前、修験道の創始者・役行者は信仰の対象とした蔵王権現を桜の木に彫り、本尊とした。天和４年（１６８４年）に桜を寄進、献木がさかんに行われて数が増えた。◆４月１１日には、蔵王堂花供会式が行われる。これは、ご本尊・蔵王権現に桜の満開を報告し、供養するお祭りで、山伏姿の２人が法螺貝を吹き、奴さんの行列、お稚児姿の子供たちが行く。この行事は江戸時代始め頃から行われているもので、四百年近くも続けられている。

万葉の昔から都に暮らす人々は、琵琶湖を「海」と呼んで親しんだ。琵琶湖には５０種を超える魚類が住む。琵琶湖特有の多様な漁法が編み出され、伝統として受け継がれている。同時に加工法にも独自なものが生まれた。ふなずしに使うニゴロブナの漁法から、加工熟成の工程を中心に仕込みから完成までの９カ月を追う。仕掛け網のエリや簗で魚を捕る琵琶湖の漁法の秘密を探り、湖の幸への感謝の気持ちと千年の歴史を支える漁民の心を伝える。◆ニゴロブナのふなずし作り、オショウライの儀式〔滋賀県〕

富士山は神が宿る聖地であるという信仰は関東周辺で強い。「富士講」はそんな人たちによって伝承されてきた。◆「六根清浄」と唱えながら山頂に向かうこの言葉は信者でなくても知っている文句である。角行法師が富士山で悟りを開き弟子たちが広めた富士講は、遠く室町時代から続いている。昔は１０日かかった富士登山も簡便になったが、講の人たちは登山の苦しさを喜びと感謝に変えて富士山と向き合うのである。◆富士講習俗〔山梨県〕

熊本県内各地で行なわれている祭りを紹介するシリーズ（１９９５年４月２日～１９９７年３月３０日終了、全１０１回）。「肥後シリーズ」は１９８６年日本民間放送連盟賞（放送活動部門）受賞。◆毎年５月３１日の夕方から始まる八代市妙見宮の氷室祭。参道では「雪餅」という米粉の餅のなかにあんを入れて蒸したものが参拝者に売られる。６月１日に氷を食べる京の風習に合わせて氷を献上しようとしたが手に入らず、代わりに餅を使ったのではないかと考えられている。

昭和２０年、日本人はさまざまな８月１５日を迎えた。ある人は焼け跡で、ある人は疎開先で。それから５０年、あの日見たさまざまな「花の記憶」が、再び戦うまいと誓った日の記憶を今も思い起こさせる。全国の視聴者から寄せられた「花の記憶」の便りを、八千草薫、木内みどり、富田靖子、地井武男、長門裕之の朗読で紹介していく。