椿の島として人気の高い観光地・大島は、三原山の噴火による溶岩で覆われている。大島で椿に次いで多いのが大島桜。大島桜は、いくたびとなく溶岩の流れに身を焼かれながらも、新芽を芽ぶかせ花を咲かせてきた。島全体で１５０万本もある。早咲きのものは、１月下旬には若葉を伸ばし、すぐに白い花を咲かせる。また、遅咲きのものは、４月中旬まで花をつけている。大島桜は突然変異で生まれる新種が多い。炭焼きは今では珍しくなったが、地元では、タキギザクラと呼ぶほど、桜は燃料として重宝がられてきた。地元の人たちが「桜株」と呼ぶ大島桜の巨木、樹齢５百年以上ともいわれ、国の天然記念物に指定されているものがある。

父親の家出によって女三人になった家に、戦争未亡人になっていた長女が帰ってくる。義弟との縁談が持ち上がって動揺している彼女は、父が女と暮らしていることを知って悩む。家族、男女の熱く静かな葛藤を描く。◆昭和１４年。原沢家は昨年の父の家出で母・里子、次女・晶子、三女・愛子の三人になっていた。そこへ病がちの母の世話をするためといって長女・絹子が嫁ぎ先から帰ってくる。夫が戦死しても嫁として暮らしていた絹子の突然の里帰りに、里子は絹子が恋をしたのではないかと感じる。一方、家を出た父・浩二郎を晶子が街で見掛けたことから、絹子は父が女と暮らしていると知るが、母には話せない。ところが正月を控えたある日、父が突然帰ってきた。

大川原地区は黒石温泉郷から八甲田山へ向かう途中の集落。８月１６日早朝から、カヤを積んだトラックが何台も村の道を走り廻る。午後８時、カヤを運び終えた村の人たち全員で盆行事「火流し」の打ち合わせ、続いて作業にとりかかる。「大川原の火流し」は南北朝時代に始まった精霊流しが起源と云われ、カヤで作った舟に火をつけて村を流れる中野川に流す。山に囲まれた大川原は、およそ６百年前の南北朝時代に戦いに敗れた信濃の豪族が落ち延びたかくれ里で、現在は３８戸の集落。遠い祖先を供養し、豊作と無病息災を祈る火流しこそ何よりも大切な盆行事と考えられてきた。

へまばかりしている新米の泥棒、空き巣狙いの手口を親分から詳しく教わり仕事に出かける。やっと留守の家に忍びこんだが、貧乏と見えて盗むものがない。そこへ住人の八五郎が帰ってきたので、あわてて縁の下へ隠れる。空き巣に入られたと気付いた八五郎、これを口実に店賃の払いを待ってもらおうと大家さんを呼び、あれも盗まれた、これも盗まれた、と言う。

１９９４年１１月、ポーランドの古都・クラクフにオープンした日本美術館には、浮世絵５０００点が収蔵されている。これらの絵を集めたのはポーランドの資産家、フェルクス・ヤシェンスキ。彼が破産に至るまで収集した浮世絵は今も往時の色彩をとどめている。同館開設には映画監督アンジェイ・ワイダ氏の尽力があった。日本の浮世絵のとりこになった一人のポーランド人の数奇な運命をたどる。

鳥取県中山町羽田井に残る「両墓制」の習慣を、実際の葬儀と盂蘭盆の行事を通して見る。◆死者の遺体を土葬にする捨て墓と、先祖代々をお参りする墓を持つ両墓制。近年は火葬もあるが、この地方では町の外れに遺体を埋める捨て墓と集落の中に魂を祭る祀り墓の２つを併せ持つ。お盆には祖先の霊への優しい言葉「コナカリ」を唱えて敬う。３８０人の羽田井の人々が大山山ろくで粛々と伝統を守り続ける、里の姿を追う。◆塞の神祭り、大山寺〔鳥取県〕

斑鳩で生まれ育った高田聖子さんが、役者の顔ではなく素顔で故郷を案内する。竜田川を起点に、斑鳩を東西に貫く古道・竜田道を散策。周辺の歴史と情景の美しさに焦点をあてる。

腕の良い大工の熊さん、酒が入ると仕事はせず、借金はする。子どもの亀吉と女房を追い出し、馴染みの女郎と暮らすが続かない。一人暮らしになってやっと目が覚め、酒を断ち、一生懸命働き立派な棟梁となる。◆ある日、道でわが子亀吉と出会った熊さん、女房が再婚もせず苦労していることを知る。悪かったと亀吉に小遣いを渡し、明日二人でうなぎを食おうと約束するが…。