仏教改革の祖・法然上人入滅の地で、徳川家康の浄土信仰と政略によって建てられた知恩院。家康が天皇家を監視すべく、二条城との関係位置を考え城郭建築風の寺として建てた。木造の楼閣としてわが国最大級の山門からは、京都御所が臨める。既成宗教に抗した法然が庵を編み、後広大な伽藍となり、京を見下ろす。浄土教総本山と徳川幕府の政略拠点という二面性を持った知恩院も、幕府崩壊後は再び庶民の寺として念仏がよみがえった。◆【国宝】法然上人絵伝〔知恩院〕、阿弥陀二十五菩薩来迎図◆【重要文化財】知恩院三門、唐門、本堂（御影堂）、勢至堂、経蔵、大方丈、小方丈

家族の一員として、また人間社会の一員として生活を共にすることを運命づけられた盲導犬。生まれてすぐ親から引き離され、盲導犬として訓練されていく過程をつづる。◆ラブラドール・リトリーバー種の犬・チェリーが生んだ９匹の子犬たちは生後４０日で親から離され、盲導犬としての適性をチェックされる。選ばれた子犬ベスパとビオラは、パピーウォーカーと呼ばれる個人の家に一年間預けられ、家族全員から存分に愛情を注がれて成長していく。一年後に悲しい別れの時を経て、いよいよ盲導犬協会の訓練センターに入りトレーニングが開始される。

１９７９年のイスラム革命以来、テヘランなど一部を除いて取材が認められず、人々の暮らしや経済の実態がほとんど知られることのなかったイランを２か月にわたって取材、その素顔をつたえる。◆第２回は北部を紹介する。カスピ海に臨む町、アスタラは１９１７年以来、町の中心を流れるアラス川に国境線が引かれ、町はソ連とイランという２つの国に分断された。ところが、ソ連の崩壊で国境の川に橋が復活。アゼルバイジャン人同士の活発な交流がはじまった。バンダルアンゼリからは世界でも最高級のキャビアをとるためのチョウザメ漁など、いままでほとんど紹介されることのなかった地域が登場する。

各界の著名人の“交遊録”を軸に、出会い、別れ、愛憎など、人と人との深い結びつきを描きだす。（１９９２年４月３日～９３年３月２６日）◆今回は、数学者の森毅と絵本作家の安野光雅。

カムチャッカ半島に古来から住む先住民・コリヤーク族のあいだに広がりつつある伝統文化復権の動きを伝える。◆コリヤーク族は、約１万年前に土着して独自の文化を発展させていた。人間も動物もみな自然の一部であり、必要以上の採取、搾取は天の大神の定めに反するという厳然とした自然観で、ながく狩猟採集民族として暮らしてきたが、ロシア革命以後は社会主義の波に飲み込まれてしまっていた。民族学者のアレック博士とコリヤークの若者とともに、失われたコリヤーク族の伝統文化を再現する。シャケ漁・アザラシ狩り、アザラシ祭など、男たちの生活を中心とした文化を紹介する。また「ホロロの祭り」の再現のために行われた祭りで使う毒キノコの野摘み、シャーマンの祈り、犬ぞりの儀式、ウラウの踊りなど、女たちの生活と祭りそのものを紹介する。

不法滞在のフィリピン人母娘の姿を通して、国籍のない子供たちへの対応が遅れている日本の現状を描く。◆いわゆる“じゃぱゆきさん”たちの間で深刻になってきている彼女たちの子供の国籍問題。両親のどちらかが日本人であるか、両親ともに国籍が知れない、もしくは無国籍である場合のみ子供は日本国籍となる。フィリピン人である彼女たちの子供は、父親が日本人であると確定できなければ日本の国籍が取得できない。一人のフィリピン人女性と彼女が日本で産んだ娘の２年を追いながら、“不法滞在”であるために最低限の生活が保証されていない現状を描き、それらを放置している日本の制度について考える。

各界の著名人の“交遊録”を軸に、出会い、別れ、愛憎など、人と人との深い結びつきを描きだす。（１９９２年４月３日～９３年３月２６日）◆今回は、裏千家家元の千宗室と俳優の西村晃。

長崎平和公園の駐車場建設工事現場から旧浦上刑務支所あとが発掘されたのを契機に、強制連行されて祖国に戻れぬまま亡くなった人々に対する日本の対処を探り、戦後処理のあり方を問う。◆同支所には冤罪の可能性もある中国、韓国・朝鮮人が多数服役しており、原爆投下によって犠牲となった。今回初めて確認された遺族のもとには死亡通知も届いておらず、遺骨返還の求めにも刑務所側が応じなかった。爆死した中国人の遺骨は天津抗日殉難烈士記念館に納められていることが確認され、遺族は涙ながらの対面を果たす。この跡地を日本の戦争への反省のあかしとして保存しようとする市民団体の運動、それに対する市および住民の反応も紹介する。