「びいどろ」は、ポルトガル語でガラスの意。透明なガラス素地に色ガラスをかぶせたカットグラス・薩摩切子は、幕末の英傑島津斉彬によって作り出された。日本のガラス工芸史上まれに見る逸品だったが、斉彬が急死し、また薩英戦争で工業団地が灰じんに帰したため、わずか１２年で短い歴史を閉じた。今回、郷土のガラス工芸家たちの執念と努力によって薩摩切子の輝きがよみがえった。昔の製造過程そのままに復元されるガラスと、かつての裏事情を探る。

お札と人間の関わり合いは、日常生活の中で台本のないドラマとなり、予想のつかないハプニングが生まれる。１枚の千円札が次々と人の手に渡っていく過程を追跡し、その千円札を手にした人たちの人間模様を描く。◆「経済大国」「カネの世の中」と言われる日本で庶民の金銭感覚はどうなっているのか、幸せはカネで買えるのか。ＳＹ６６０００Ｈの番号を持つ千円札、途中見失ったりもするが、手にした人は５日間で３５人にも及んだ。

戦時中、大陸から日本へ強制連行された中国人労働者への過酷な労働と虐待、拷問などを当時の生き残った中国人の証言から探り、今に残る問題点を描く。◆終戦間際、秋田県大舘市花岡鉱山に強制連行された中国人が空腹と虐待に耐えきれず蜂起し、その多くが虐殺された「花岡事件」から４５年が経過した去年、生存者と遺族が来日した。来日の目的は、慰霊祭に参列することと当時の雇い主である鹿島建設と賠償交渉を行うことであった。

目の不自由な女性と盲導犬アマンダとの出会いから、厳しい訓練を通して息が合っていき、互いに愛情が芽生えてくる様子を描く。◆生まれつき光を知らない徳之島の近田さんは、幼い頃からの憧れだった盲導犬を手にするため東京のアイメイト協会で訓練をうける。盲導犬アマンダとの出会い、４週間にわたる厳しい訓練の末、銀座の雑踏を歩くテストに合格。ようやく徳之島の海辺でアマンダとの新しい生活が始まる。

和歌山市から海岸沿いに御坊市まで、紀州路の秋の風情を探して旅をする。日光以前にできた和歌山の東照宮が出発点。藩祖徳川頼宣は駿河から移封の際、大勢の家臣と職人を連れてきた。以来４００年菓子を作り続ける菓子店の、殿様に献上したという落雁は芸術品。南に下って海南市の日本一の菊作り。古い伝統の紀州漆器の根来塗り。みかんの里・有田市。日高町の産湯海岸で味わう巨大魚クエ。醤油発祥の地・御坊市をめぐり、秋本番の紀州に浸る。旅人は伊藤克信。◆第１０２１回　◆東照宮（和歌山市）

忠臣・大石内蔵助がじつは自他共に認める無能な男だったという想定で描かれる忠臣蔵。◆元禄１４年（１７０１）３月、浅野内匠頭は江戸城内で吉良上野介に刀を振るい、切腹した。赤穂ではお家断絶の危機を救うため、城代家老の大野が奔走。昼あんどんの大石内蔵助は、幕府に無抵抗な態度を示すために遊郭通いの毎日。しかし家臣は大野を不信に思い、大石をばかにして、他の藩へ去って行った。お家再興を望んでいた大石は大きく失望。堀部安兵衛や細井広沢の言葉に動かされ、武士の最後の誇りをかけて吉良邸に討ち入りを決行した。

改修前の京都・南座の歴史や千秋楽恒例の素人顔見世を紹介し、１９８９年（平成１）１２月に南座で上演された「種蒔三番叟」を鑑賞する。◆９２歳を迎える（公演当時）とは思えない清元志寿太夫さんの美声と華麗な語りで、歌舞伎舞踊の第一人者・中村富十郎さんが踊る。◆「種蒔三番叟」はご祝儀もので、めでたい言葉が連ねられ、子孫繁栄、千秋万歳を唄う。

京都・大覚寺は、もと嵯峨天皇（７８６〜８４２）の離宮であり、自然の多い嵯峨野の大沢池のほとりに建つ。名君の誉れ高く、当代一流の文化人でもあった嵯峨天皇と弘法大師が国家鎮護を祈った寺であった。後に南北朝動乱が起き、皇統は持明院統と大覚寺統に分かれ、平和の祈りを込めた大覚寺の名は皮肉にも聖戦の旗頭となってしまう。最古の門跡寺院がたどった数奇な運命を振り返り、今も大沢池で催される中秋の名月の優雅な観月の宴に往時をしのぶ。◆【国宝】嵯峨天皇宸翰光定戒牒〔延暦寺〕、後宇多天皇宸翰御手印遺告〔大覚寺〕、後宇多天皇宸翰弘法大師伝