北九州、玄界灘に浮かぶ孤島・沖ノ島。荒ぶる海の航海安全と国家鎮護の神・宗像大社の神域にあって、古代、大陸と日本を往来する人々から神の島と崇められた。島から出土したおびただしい遺物は、古代日本の国際社会との交流の歴史を雄弁に物語る。超一級の神宝は「海の正倉院」といわれるほど古代文化を凝縮している。◆古墳時代から奈良時代にかけて沖ノ島が果たした歴史の意義を前編で伝える。◆【国宝、重要文化財】筑前国宗像神社沖津宮祭祀遺跡出土品〔宗像大社〕◆【その他】天馬塚金冠、金帽〔韓国国立慶州博物館〕

障害者への差別や偏見をなくし、あらゆる場で真の仲間として受け入れる「開かれた社会」の実現について考える。◆第２部「社会参加への道」では、アメリカとイタリアからの報告を交え、障害者の社会参加への道を探る。◆１９９０年７月、障害者に対する一切の差別を禁じたアメリカ障害者法が成立した。財政赤字に悩む中、２００億ドルの費用を要する法案が通るまでにはさまざまな経緯があった。可決までの経過をたどる。◆イタリア・トリエステ市は、精神障害者への対応に地域ぐるみでとりくんでいる。難しい問題に２０年をかけて取り組んだ、保守的だった地方都市での市民の苦悩を追跡する。

若い男女がふとしたことからクレジットカードを使う犯罪に走り、ゲーム感覚で犯行を重ねたあげくに破滅へと疾走する。どんどん深みにはまってゆくカード社会の落し穴の恐ろしさを描く。◆ハウスマヌカンの奈々子（河合美智子）はひとり暮らし。偶然拾ったクレジットカードで宝石を買い、多額の現金も引き出す。博一（松下一矢）は借金返済と遊ぶ金ほしさに難民救済募金を偽って街角に立っている大学浪人。地下街で出会った二人はどこか共感し、カード犯罪に手を染める。橋本が仲間に加わるが二人をだまして消えてしまい、二人は逃げるうちに誤って人を殺してしまう。

タタール語で「眠れる土地」を意味する「シベリア」。東西８０００キロに及ぶ酷寒の地で厳しい自然と闘いつつ、昔ながらの伝統的な生活を守り続ける北方少数民族たちの姿を２夜連続で紹介する。◆第２回はユーラシア大陸最東端デジネフ岬から３０００キロを走破する。トナカイ飼育民チュクチ族は雪下の苔を求めて一年中移動する民族。北太平洋沿岸のチャブリーノの村にイヌイットを訪ね、昔ながらのセイウチ漁を取材する。さらに内陸へ進み最古の狩猟民ユキガールに出会う。またスターリン時代の流刑地であったコリマ街道で、当時流刑囚だった老人から話を聞く。

打出の小づちを持ち、米俵に乗ってにっこり笑う福の神・大黒天。そのルーツは、ヒンズー教の破壊と再生の神・シヴァ神とも、食料を守る厨房の神とも、さらに神仏習合によって大国主命と結び付いたともいわれる。室町時代以降、日本の経済体制の変遷の中で次第に富と結び付いた福の神として日本化し、全国津々浦々にふくよかな姿を見せるようになる。また江戸期七福神信仰の流行とともに、その一員となり定着していく過程を追う。◆【重要文化財】大黒天立像〔観世音寺〕、毘沙門天立像〔浄楽寺〕◆【その他】大黒天半跏像〔西大寺〕、大黒天像〔観世音寺〕、布袋尊〔弘福寺〕、桐野大黒天祭り〔佐賀県〕

世界的に活躍する日本人クラシック音楽家が増えていく中で、日本人排斥ともみえる動きも広がっている。日欧音楽摩擦とでもいうべき現象を追い、一方日本人の欧米崇拝にも言及して文化享受のありかたを考える。◆今や日本人クラシック音楽家は５千人ともいわれる。世界有数のコンクールでの入賞、名門オーケストラのコンサートマスターへの就任などヨーロッパでの活躍もめざましい。彼らの多くはオーケストラやオペラ劇場と契約しているが、最近日本人音楽家を受け入れる団体が少なくなっている。それでもヨーロッパを目指す音楽家が多いのも事実である。

古代、現代を問わず陽光は神秘の空間を生み出す。古代人は光に恵みと恐れを抱いた。そして光を手元に招くことのできる鏡に信仰が結び付いた。剣と勾玉、鏡は三種の神器。鏡について、漢鏡、唐鏡の輸入品から和鏡の独自性を手にするのは平安の代。やがて鏡は仏教に取り入れられ、鎌倉期に完成する。◆伝統を受け継ぐ現代の制作風景や浮世絵に現われる庶民生活を紹介し、神器から人器への変遷を描く。◆【重要文化財】阿弥陀三尊十二光仏鏡像〔輪王寺〕、松竹双鶴文八稜鏡〔熱田神宮〕◆【その他】平螺鈿背円鏡〔正倉院〕、姿見七人化粧〔東京国立博物館〕

偉大なエンターテイナー越路吹雪の生涯と、“戦友”だった作詞家・岩谷時子の友情を描く。原作：岩谷時子「愛と哀しみのルフラン」。◆１９３９年（昭和１４）雑誌「歌劇」の編集者・岩谷時子（竹下景子）は、少々出来の悪い歌劇団の生徒・越路吹雪（幸和希）と出会う。二人は性格は全く違っているのに、なぜかウマがあった。戦後、越路の大柄なところ、気ままなイメージが時代の申し子のように迎えられ、たちまち大スターへの階段を駆け上る。岩谷はいつも越路のよき理解者であり続け、やがて名曲「愛の賛歌」が大ヒットする。