誰もが持つ古き良き故郷への郷愁。その思いとは裏腹に、地域の姿とそこに暮らす人々の生活は、時代の変化とともに変貌する。このシリーズは中国地方５県の特色ある地域を選んで故郷の今と昔を描く。中国地方ＪＮＮ系列４社（山陽放送、中国放送、山陰放送、テレビ山口）の共同制作、放送番組センター協賛番組。◆広島県福山市鞆町は、沼隈半島の突端にあり、対岸の仙酔島、阿伏兎観音に囲まれた美しい港町である。古くから瀬戸内海の海運・漁業の拠点として栄え、神功皇后の「三韓征伐」ゆかりの沼名前神社（ぬなくま）の神話や万葉集にも登場する。中世には水軍の拠点となり、江戸時代には福禅寺の対潮楼に朝鮮通信使が宿泊した。幕末には七卿都落ちの三条実美が逃れ、十返舎一九、坂本竜馬らゆかりの遊郭跡など多くの歴史・遺跡が残る街である。５月の鯛網、旧暦６月の御手火祭など民俗行事も保存されている。これら鞆の浦の風景と文化をこよなく愛す画家・藤井軍三郎氏を通じて瀬戸内の暮らしを紹介する。

生涯、幾度となく転居を重ねた幸田露伴は、自宅をすべて蝸牛庵と称した。現存するのは、１１年を過ごした向島蝸牛庵のみである。代表作「五重塔」をはじめ東洋の理想を著わし、明治文壇に地位を確立した彼は、新しい物に対する探究心も旺盛であった。物置を改造した写真の暗室も残っている。女流作家幸田文をはじめ、３人の子供はここで生まれた。今も家屋の隅々までつややかに光る蝸牛庵。それは掃除ひとつにも厳格な明治人の住んだ証しである。◆幸田露伴住宅・蝸牛庵

総合雑誌の草分け『中央公論』の創刊から１００年。総合雑誌を通して日本の近代をふりかえるシリーズ。（１９８５年１１月２５日～２８日、全４回）◆第３回は「戦争」。関東大震災とともに大正デモクラシーは終わり、社会環境は急変していく。昭和期中産階級のシンボルといわれた文芸春秋の出現、初の編集者・滝田樗陰の死、大正言論の中核・吉野作造の論壇からの後退。やがて満州事変の勃発以後、軍部による言論統制が強まってゆき、ついに１９４４年（昭１９）７月、中央公論は自発的に廃刊、５９年の歴史を閉じる。

信州人物風土記は、明治～昭和期に各界で活躍した長野県ゆかりの人物を取り上げ、その功績と生涯を解説するシリーズ。◆今回は、幕末から明治初期にかけて活躍した画家・川上冬崖を紹介する。◆川上冬崖（１８２７－１８８１）は、現在の長野市松代町に生まれた。１８歳で江戸に出て上野寛永寺東叡院に仕え、寺に出入りしていた円山四条派の画家大西椿年に知遇を得て写生画を学んだ。１８５１（嘉永４）年に幕府御家人株を購入して川上仙之介の養子となり、蕃書調所へ出仕。絵図調役、絵画取調出役、画学局出役などを務め、西洋画法を研究しながら後進を指導した。明治維新後、開成所画学校教授となり、大学南校、文部省などに勤める一方、１８７０年（明治３）自ら画塾を開設して西洋画法を教え、文人画家としても活躍した。黒田清輝、高橋由一らと並んで近代洋画の先駆者として知られる。１８８１年５月、熱海で謎の自殺を遂げた。冬崖の作品を紹介しながら、業績と人となりを解説する。

芸術家・池田満寿夫が、オランダの寒村からその生涯を閉じたフランス・パリ郊外まで、ゴッホの足跡をたどるドキュメンタリー。ゴッホの書簡集の朗読や、史実にもとづいた再現ドラマを折り込みながら、ゴッホが作品に込めた情熱を解き明かしていく。ＩＢＭ美術スペシャル。ＣＢＣ中部日本放送創立３５周年記念特別番組。

父が母に贈ったという指環を通して、娘の亡き母へのレクイエムを描く。◆老人ホームにいる父を婚約の報告に訪れた百合子（島田陽子）は、父が母に贈ったエメラルドの指環が母の遺品を保管するサナトリウムにあると聞く。戦後ジャズピアニストとして名を馳せた父・エディ平川（笈田敏夫）は、華やかな生活を送ったが家を顧みることが少なく、結核を患った母は一人寂しく死んでいった。百合子は２０数年ぶりにサナトリウムを訪れ、そこで意外な事実を聞く。不幸せに死んでいったとばかり思っていた母に、美しい思い出があったというのだ。

熊本県五木村が水没すると発表されたのは１９７４年（昭４９）。ダム計画が決まったものの着工のめどが立たない五木村の１年を追ったドキュメンタリー。◆水没する運命の山里の四季は美しい。「五木の子守歌」の里として知られる五木村では離村が相次ぎ、山崩れ災害が起き、山の民を痛め付ける。万人の利益を目的とした公共事業が、その現場ではその意味を変容させ悲劇を生んでいる。正調の子守歌を歌い継ぐ中園スナさん（８７歳）も村を去った。

ジャズとアフリカを愛する男性が難病を発病した。彼のさすらい旅“テンベア”を通して、生きることの意味を問うドキュメンタリー。◆ジャズ喫茶を経営する榊原吉明さんは、富山からアフリカへ放浪の旅に出た。かつてベース奏者として活躍した彼は、１０年前に原因不明の難病「バージャー病」を発病し、両手の指先８本と両膝から下を失った。４０歳を迎え、自分自身の生き方を貫くために日本を出る決意をしたのだ。榊原さんは杖をつきつつケニアに向かう。