長崎・諫早の名家、楠木一族が幕末に私財をなげうって干拓した十万坪の新開地。一族に分け与えられたその土地をめぐる謀略、巻き込まれていく“フーケモン”の楠木雲太郎、そして楠木家の親戚たちの大騒ぎのひと夏を描く。（１９８５年７月４日～９月２６日放送、全１３回）◆第２回。雲太郎（役所広司）をトラックに乗せた男・矢上（根津甚八）は、楠木新開地十万坪のうち、雲太郎の持ち分５千坪を８２５万で買い取るという。調整区域に指定された土地を買うという申し出に一も二もなく飛びつく雲太郎だが、矢上はそれに加えて親族一同の土地をまとめて売り渡してくれと頼む。買値は一坪１６５０円、しかし雲太郎が値切れば雲太郎の取り分にしていいという。うまい話と食いついた雲太郎は、まず５万坪を持つ叔父・竜造（下元勉）のもとへ向かう。

第９０回の直木賞を受賞した、神吉拓郎の短編集「私生活」から５編を原作とする２０分完結５日連続のドラマシリーズ。各回の主人公を田中邦衛が通して演じた。（１９８０年１０月７日～１１日、全５回）◆第４回は「丘の上の白い家」。昔の同僚に招かれて、私は妻と一緒に彼の海辺の家を訪ねる。彼の妻は以前バーのホステスで、彼女を部長と争う形になったために彼は会社を辞めていた。いまは平和な家庭で幸せそうにしているが、その日彼女は料理を運ぶだけで団らんにも加わらない。妻は不審がったが、私は同僚の気持ちもわかるような気がして、丘の上の白い家を辞した。

１９４５年（昭２０）、鹿屋航空基地から多くの若者たちが特攻機で飛び立ち南の海に消えた。その中に出征前、東京・日比谷公会堂で日本交響楽団の演奏会を聴いていた予備学生がいた。彼にとっては出征前に聴いた演奏会が“最後の演奏会”となった。当時「これが自分にとって最後の演奏会になる」という思いで日比谷公会堂に通った学生は少なくない。そんな演奏会を支えた楽員たちにも、召集の手は容赦なく伸びていった。

ラジオのＤＪを担当している夏子（岸本加世子）は、脳血栓で倒れた父の見舞いに故郷へ帰り、不倫の恋を清算する決心をする。そのドラマの中で、向田邦子の９編の作品が朗読される。（１９８５年８月５日〜８月９日放送、全５回）◆第一回。朗読する作品は「鮒」。不倫相手の男の台所に、二人で飼っていた鮒を置いて恋の清算をする作中人物の奇妙な行動と心の動き。夏子は自分の境遇とダブらせて、今は亡き作者に語りかける。

明治２年、東京遷都が決定し、京都は東京に負けまいと都市近代化に拍車をかけ、三条通りには洋風建築が軒を連ねた。京都市河原町三条上ルの大名屋敷跡には明治２３年に聖ザビエル天主堂が、五条下ルには明治４０年に聖ヨハネ教会堂ができた。奥行きのある聖ザビエル天主堂は、フランシスコ・ザビエルに捧げた聖堂であり、モルガンお雪ゆかりの祈りの地でもあった。ステンドグラスが鮮烈な色彩を放つ。明治を迎えた京都の一面である。◆聖ザビエル天主堂聖ヨハネ教会堂

高田小熊写真館は、豪雪で知られる新潟県上越市高田から明治村に移築された。モダンな洋館だが、庶民生活を偲ばせる数少ない建物である。ショーウィンドウには、わが国にスキーを伝えたレルヒ少佐のアリスト白金写真が飾られている。当時、優れた写真館は軍隊の師団の所在地に多かった。レルヒ少佐の一本杖スキー術を克明に撮り、激動の時代を見つめてきた雪の里の小熊写真館を紹介する。◆高田小熊写真館

太平洋戦争時、陸軍最大にして最南端の特攻基地があった鹿児島県知覧には、１０１５人の日本人特攻隊員とともに、１１人の朝鮮人特攻隊員がまつられている。彼らはどうして日本の特攻隊に入り、散華していかねばならなかったのだろうか。戦後、初めて慰霊祭に参列した１人の韓国人遺族を通してそれを探っていくドキュメンタリー。

国の繁栄は教育普及にあるという明治政府の方針に添い、師範教育の充実が図られた。明治２１年、津市に建てられた三重県尋常師範学校は、多くの教師を育て、のちに名張氏の蔵持小学校の校舎として使われた。新任の正教員の月給は５円。まさに聖職そのものであった。明治村には、大阪府南河内郡にあった千早赤坂小学校講堂も移築されている。明治の小学校教員養成を誇るかのように、玄関正面下には菊の紋章が飾られている。明治の教育にかけた意気込みをさぐる。◆三重県尋常師範学校蔵持小学校