鳥取県三朝町の三徳山の中腹、絶壁の岩窟に神業のように建つ御堂がある。修験道の開祖・役行者によって投げいれられたという伝説をもつ、この国宝「投入堂」を国際日本文化研究センター教授の山折哲夫さんが訪れる。◆三徳山は、「天駆ける仙人」といわれる役行者の開山と伝えられる山陰の代表的山岳修験の霊山である。投入堂に至るには、木の根につかまり、岩にしがみつくように登って行かねばならない。日本人の山によせる思いに強い関心をもつ山折さんは、岩の中から生えでたような投入堂を見上げて「この山を宇宙の中心だと思わせるようなものがある」と感嘆する。

服役を終えて出所したヤクザ者が、世の中の変わりようについていけず戸惑う。原作：筒井康隆、本歌：俵万智。◆大場組の若頭・野中（小林薫）は、３年の「お勤め」を経て組に復帰した。待っているはずが実家に帰っている妻と子。若い組員がブランド服を着込み、パソコンを操っている組事務所。拍子抜けした野中は、獄中で習った短歌作りや、知り合った女子大生とのデートに明け暮れる。

インドに住む８億人のヒンズー教徒の信仰の拠り所・ガンジス河。この全長２６００ｋｍのガンジス河の雄大な自然と、信者たちと河との関わりを、２回にわたって紹介する。◆第２回。南インドを出発し、ガンジス河を河口まで下りながら、辺りに住む人々の生活やその精神世界をリポートする。

高級フルーツとして世界中で愛されているマスクメロン。しかし栽培の難しさから今では日本でしか作られていない。中でも静岡産のものは形・香り・味ともに世界一といわれている。人々を魅了するマスクメロンのルーツ、おいしさの秘密、職人芸ともいうべきメロン栽培の実情をレポートする。

上野の山の東叡山寛永寺は、京の比叡山延暦寺に対応する。不忍池を琵琶湖に見立て、すべて京を模して造られた。家康の側近天海僧正の進言で造営が始まり、二代秀忠・三代家光と受け継がれる。江戸城の鬼門にあたる上野を幕藩体制鎮護の地とすべく造営を続けた。そして京のエレガンスに対抗した、エネルギッシュな大江戸文化を確立していく。幕末の上野戦争で荒廃し、明治以降は文化の森となる。◆【重要文化財】寛永寺清水堂、旧東京音楽学校奏楽堂、常憲院霊廟奥院宝塔

一枚の絵を差し示しながら物語る、それを「絵解き」といった。絵解きは仏教普及の有効な手段だった。当麻寺にある４メートル四方の曼荼羅は、女人の受難と救済をテーマとした壮大な仏教説話である。当麻曼荼羅は縮小して複製され、末寺に広まった。極楽浄土を願う庶民は絵解きを聞き、現実離れの世界に酔った。◆テレビのある現代社会になお残る絵解きの寺を訪ね、映像文化のルーツを探る。◆【国宝】当麻寺本堂（曼荼羅堂）、綴織当麻曼荼羅図〔当麻寺〕、玉虫厨子〔法隆寺〕◆【その他】当麻曼荼羅絵解き〔徳融寺〕、太子伝絵解き〔瑞泉寺〕

日本経済新聞紙上で１９５７年３月に始まった「私の履歴書」テレビ版の新シリーズ。一時代を築いた人物が出演し、自らについて語る。（１９８８年１０月５日～１９９１年３月２６日放送、全１２７回）◆池田満寿夫：彫刻家・作家。１９３４年満州生まれ。最初油絵を描くが、瑛九のすすめで銅版画へ転向、１９６０年東京国際版画ビエンナーレ展で文部大臣賞受賞。１９６５年ニューヨーク近代美術館で日本人として初めて個展を開催。主な作品に「スフィンクス」「夏」など。また１９７７年には小説「エーゲ海に捧ぐ」で芥川賞を受賞した。

元巨人軍の名投手・スタルヒンと中学時代に野球で友情を交わし、戦後に戦犯として処刑された青年の純愛を描く。原作：西木正明。◆昭和１６年夏、見習い士官の田原（緒形直人）は将校宿舎の旅館の娘・良子（横山めぐみ、加藤治子）と恋仲になる。田原は中学時代、甲子園出場をかけてスタルヒンと投げ合ったことを誇りにしていた。第二次世界大戦が始まり、田原は室蘭俘虜収容所所長になった。２人は手紙で将来を誓いあう。終戦を迎え、やっと再会できた２人だったが、田原は俘虜虐待の罪で捕らえられ、死刑を宣告される。