アジア各地を網の目のように結ぶ「海道」をたどりながら、歴史的、文化的な視点からアジアの現代を探るシリーズで、フィリピン、台湾、韓国、香港、タイの５か国を訪ねる。（１９９３年３月９日終了、全１１回）◆香港はかつて船で暮らす水上生活者が集まる港だったが、ここ数年の近代化でほとんどの人が陸に上がった。呉発開さんの家船には３世帯２２人が住んでいるが老朽化して浸水がひどくなった。船が沈むと政府によって港から遠く離れた住宅に移転させられる。代々海で生活してきた呉さんたちにとって漁業をすて、陸の仕事に就くのは困難。一家の生活を通し、水上生活者の姿を描く。

発展中の地方都市・仙台にある小さな木造校舎の小学校の１年を追い、この学校に学ぶ子供たち、かつて学んだ地域の人々が木造校舎に寄せる思いを描いて、教育環境における地域との結び付きの大切さを訴える。◆仙台市立根白石小学校は昭和５年に建てられた各学年１クラスの小さな木造校舎の学校。仙台で最も急激な発展を遂げている泉中央から車でおよそ１５分、街道沿いに昔ながらの商店街があり、田園風景が広がる根白石地区の小学校だ。祖父母、父母と親子３代にわたって通う家族も珍しくなく、地域の人々の思いに守られてきたともいえる。

日本全国の沿岸を歩いて我国初の実測日本地図を完成させた江戸後期の測量家、伊能忠敬の業績を描く。◆１９世紀初め、交通や産業が発達し、地方の豪農を中心に実学的な文化が農村にまで広がっていた。その時代を体現するように、伊能忠敬の地図作りの仕事は進められた。「大日本沿海興地全図」はどのようにして作られたのか、それはどんな時代背景の中でつくられたのかを探る。

国際諜報機関、ゾルゲ・グループの一員が逮捕されたその日に日本を離れた記者、ジョセフ・ニューマン。ゾルゲの部下と親しくし幾つものスクープを飛ばした彼の行動を証言や史料から追い、日本の機密がたやすく漏れた理由を探る。◆１９３７年、渋沢正雄の誘いで東京に来てニューヨーク・ヘラルド・トリビューンの記者となったニューマンは、ゾルゲの部下ブーケリッチと親しくなる。一方ではアメリカ大使や岩畔陸軍大佐など日米の中核にも食い込み、独ソ開戦、日本軍南進決定などを事前に察知してニューヨークへ送った。彼は自分がゾルゲ・グループの窓口になっていること、記事の性質、仕事の危険性などを深く考えてはいなかったという。

白血病の治療のために広島へやってきたウクライナの少女の様子に、チェルノブイリ小児病棟で奮戦する医師たちの姿を交えて伝え、医療援助の在り方を問う。さらに「放射能汚染」の実際などについて専門家に訊ね、科学的に検証、説明する。◆１９９２年１１月、白血病の治療のため来日した少女カーチャ。カーチャの国ウクライナは、１９８６年にチェルノブイリ原子力発電所事故が起こった国である。事故の後、国が被災者を専門に治療する病院をつくって対策に当たっているが、現場は様々な問題を抱えている。小児白血病の治癒率は高くても４０％で、日本の半分にも満たない。こういった厳しい現実に追い打ちをかけるように、近年子供たちに甲状腺ガンが多発しているという。

古来「長江」と呼ばれる中国・揚子江が今大きく変わろうとしている。改革・開放政策の波が押し寄せ、世界最大級のダム建設や各地で強郷鎮企業の設立が盛んになっている。大型船で揚子江を下りながら、中国とそこに生きる人々の暮らしを描く。

地唄舞の名手、武原はんは、９０才にして、国立劇場などの舞台に立つ、現役の舞い手である。四国の徳島に生まれ、１２才で大阪で山村流の上方舞を修業、後に上京して二世西川鯉三郎らに師事し、関西の地唄舞を東京に根付かせた。料亭の女将を勤める傍ら、俳句と文章を高浜虚子に学び、横山大観、小林古徑、梅原龍三郎など多くの画家、作家たちと交流を深め、自己の研鑽に努めた。渡辺保は、座敷芸だった地唄舞を劇場の舞台に上げ、いわば全国区の芸に高めたのは、彼女の功績だという。

各界の著名人の“交遊録”を軸に、出会い、別れ、愛憎など、人と人との深い結びつきを描きだす。（１９９２年４月３日～９３年３月２６日）◆今回は、モータージャーナリストの徳大寺有恒と自動車整備士の崎山和雄。