能や歌舞伎など日本の芸能に平家琵琶に取材した演目は数多いが、長唄の「八島官女」もその一つ。屋島の合戦で敗れ、海女となった平氏の女御が、身の不運を嘆き昔の栄華を懐かしむという哀れな物語。宗家夫人の立場を離れ、紫派藤間流を主宰、映画や舞台の女優、演出家としても活躍している藤間紫が舞う。藤間は日本舞踊が本分と語り、渡辺保は女形が演じてきた歌舞伎の劇場舞踊を、女性の舞踊家か演じることの意味を解説する。最後に、屋島や壇の浦などゆかりの地を訪ねる。

七福神の紅一点、弁天様。弁財天とも表される弁才天には、その姿も二種類ある。琵琶を携えてにこやかにほほ笑む二本腕の福神と、八本の腕のそれぞれに武器を持つ八臂弁才天。遠くインドにルーツをもち、仏教に取り入れられて日本に伝わった。そして平安時代の神仏混交の時代に、穀物の神宇賀神などと習合して日本独自の弁才天信仰を生み出していく。寺にも神社にも祭られ、学芸・財宝の神として庶民の願いを聞き届けてきた不思議な魅力にあふれる弁才天の謎を、分かりやすく説き明かす。◆【重要文化財】板絵着色弁才天像（浄瑠璃寺）、彩色二臂弁天像（静嘉堂文庫）【その他】妙音弁才天（江ノ島神社）、八臂弁才天（江ノ島神社）、七福神像（高蔵寺）、宇賀弁天像（伝香寺）

地唄舞の名手、武原はんは、９０才にして、国立劇場などの舞台に立つ、現役の舞い手である。四国の徳島に生まれ、１２才で大阪で山村流の上方舞を修業、後に上京して二世西川鯉三郎らに師事し、関西の地唄舞を東京に根付かせた。料亭の女将を勤める傍ら、俳句と文章を高浜虚子に学び、横山大観、小林古徑、梅原龍三郎など多くの画家、作家たちと交流を深め、自己の研鑽に努めた。渡辺保は、座敷芸だった地唄舞を劇場の舞台に上げ、いわば全国区の芸に高めたのは、彼女の功績だという。

放送は４６回目の憲法記念日。東西冷戦は終わったが、世界は民族紛争、貧困と飢餓、人口爆発や環境破壊など数多くの問題を抱えている。こうした中、日本は莫大な経常収支の黒字を出している国として経済力に相応した役割を具体的に果たすよう強く求められている。日本の国際貢献と憲法との関わりをどのように考えれば良いか、討論する。◆出演は加藤周一（評論家）、坂本義和（東京大学名誉教授）、佐々淳行（元内閣安全保障室長）、高坂正堯（京都大学教授）。司会は小浜維人ＮＨＫ解説委員長。

各界の著名人の“交遊録”を軸に、出会い、別れ、愛憎など、人と人との深い結びつきを描きだす。（１９９２年４月３日～９３年３月２６日）◆今回は、ホリプロ会長の堀威夫と田辺エージェンシー社長の田辺昭知。

作家・早乙女貢氏が福島県に関わりのある人物の足跡をたどり、その素顔を探るシリーズ。◆戊辰戦争で行方不明になった両親と妹を探すことに一生をかけた、いわき出身の歌人・天田愚庵。山岡鉄舟と巡り会い、一時は清水次郎長の養子になるなど全国を放浪し続けて、晩年は出家し京都に庵を構えた。短歌・俳句で明治の文学界に多くの業績を残した愚庵の生涯を紹介する。

「健康づくりを楽しもう」をテーマに、様々な人間と健康づくりの事例をトークやドキュメンタリーで紹介。中村敦夫キャスターの視点を通して、“押しつけ”でない“自主的な行動”を訴える。（１９９３年１２月７日〜１９９４年１月２８日放送、全５回）◆第２回は「健康先進地」のレポート。和歌山県内でもっとも高齢化の進んだ清水町は、模範モデル地区となっている兵庫県淡路島の五色町と石川県鹿西町に職員を視察にだした。五色町ではＩＣカードで町民一人一人の健康を管理する態勢を整え、寝たきり老人の対策や最新設備のＣＡＴＶ情報センター新設などで全国的に注目を集めている。鹿西町は人口の半分がボランティアに携わり、横の繋がりを構成している。

多くの名作ドラマやドキュメンタリーの演出で知られる今野勉が、炭坑夫だった父からきいた不思議な伝承の生まれた背景を探る、自伝的ドキュメンタリー。◆死んだはずの坑夫が命を落としそうになった坑夫を助けに現れたという物語や、ガス爆発で火傷を追った坑夫の家を見舞い客に化けた狐が訪れ、かさぶたを食べさせて殺してしまったという物語など、炭坑には生死にまつわる不思議な話が多く語り継がれてきた。知人やかつての同級生を訪ね、多くの証言と資料あつめてたどりついたのは、１９６８年の夕張市平和鉱事故の悲しいエピソードだった。かつての日本を支えた人々の死を語り継ぐ鎮魂歌。