大みそか恒例の特別番組、１９９３年（平成５）第４４回ＮＨＫ紅白歌合戦。歌謡界の話題曲と多彩な出演者、ゲストで一年を振り返る。テーマを「変わるにっぽん、変わらぬにっぽん」とし、日本と日本人のぬくもりを伝えるバラエティーショーとして構成する。司会は堺正章、石田ひかり。総合司会は森田美由紀アナウンサー。

信州・安曇野の里は、道祖神の宝庫として知られる。集落の出入口に立ち、害意のあるものや疫病の侵入を防ぐ男女一対の神。江戸中期に次々と襲った大飢饉や、経済体制の変化で農民の生活は困窮の一途をたどったが、人々にできたのはただ祈ることだけだった。姥捨て山伝説発祥の地といわれる信濃の悲しい歴史の跡を振り返り、人々が願いをこめて刻んだ道祖神の物言わぬ素朴な表情の中から、石に込められた過去の時代の遍歴を映しだす。◆長野県穂高町の道祖神群、穂高神社、長楽寺、姥石、芭蕉翁面影塚、安宮神社石神群

二人の新米写真家が都会の中で出会った被写体との対話を通じて、人生を学んでいく。（１９９３年１０月２３日～１１月６日放送、全３回）◆第二話。真喜（長田江身子）とユウシ（内野聖陽）が住むマンションの近所で、ノゾキが出たと大騒ぎ。部屋に帰った２人はベランダに隠れていた犯人と鉢合わせ。ユウシは犯人の顔を見てビックリ、後輩の耕二（高場隆義）だ。彼は「悪いことはしていない、他人の家を見て祝福しているのだ」と、訳の分からないことをいう。数日後、耕二がノゾキの現行犯で捕まり、ユウシと真喜が身元引受人になる。ユウシは反省の色がない耕二に愛想をつかすが、真喜は興味をもって被写体として追いかける。

シャープな演出で評価される崔洋一監督が、梁石日「タクシー狂躁曲」を短編ドラマとして映像化したもの。映画版「月はどっちに出ている」の土台となった。◆そこはかとなく漂う民族差別感を背景に、在日コリアンのタクシー運転手・忠男（石橋凌）とフィリピン人ホステス・コニー（ルビー・モレノ）との恋愛模様を軸にして、人々がたくましく生きていく様をエネルギッシュに描く。

古代の伊豆国は、黒潮の流れにより都との交流が盛んで早くから仏教文化が入ってきていた。伊豆一円には多くの古刹が建ち、平安・鎌倉時代の仏像が納められていた。しかしその多くは放置されていたり杜撰な修理がされていたりして破損が著しい。近年、その修復作業が進み歴史の謎の断面が判明しつつある。修禅寺の大日如来坐像修復の際、胎内から人の毛髪が発見され北条政子との関わりも憶測されている。仏像の調査、修復の工程を紹介、修復された仏像が語り始める歴史を伝える。◆【重要文化財】大日如来坐像（修禅寺）、観音菩薩立像（海蔵寺）【その他】釈迦如来像（国清寺）、薬師如来坐像（南禅寺）、阿弥陀如来坐像（西法寺）、薬師如来坐像（白浜神社）

堅物だと思われたまま突然亡くなった父には別の顔があった。亡き父の無言のメッセージを追って息子とその妻は旅をし、父を知る。旅先では、一般の人がドキュメンタリー風に出演するという構成。特別企画・ドラマエッセイ。◆自動車部品メーカーの元社長・田島恒三（小林桂樹）が脳梗塞で亡くなった。数か月後、息子の修平（平田満）に女医・藤木宮子（斎藤美和）から「信州の別荘を譲ってほしい」という手紙が届く。浅間山麓の別荘を訪ねた修平は、洋館風の建物のなかのたくさんのボナールの画集や複製画に驚く。宮子に会い、父は３年前から死を覚悟していたと知る。父をもっと知りたくなった修平は、父の故郷・熊本県人吉へ向かう。また修平の妻・里津子（原田美枝子）も北海道富良野で、義父・恒三の足跡をたどる。

木や草を鉢に植え長い歳月をかけて育てあげ、凝縮された空間美を作る美の世界、盆栽。東洋美の極致ともいえる小宇宙の風景は、我々の祖先が独創性と高い芸術性を加味して類のない世界を生みだしてきた。豪壮、繊細、華麗、神秘性、荒々しさ、さまざまな風景の修辞で形容される気品ののある文人趣味。中国から渡り、東山文化を彩り、江戸庶民に愛され、やがては投機の対象までになり、再び日本人が独自の自然観のはてに到達した今日の姿を描く。◆【国宝】法然上人絵伝（知恩院）【重要文化財】西行物語絵巻、暮帰絵詞【盆栽】宮内庁大道庭園・五葉松（銘・三代将軍）模様木、大宮市蔓青園・かえで石付

四国最長の川であり、本流に大規模ダムがないことから“日本最後の川”と呼ばれる四万十川。その川に寄りそって生きてきた地域の人々や、川に惹かれてやってきた人々の暮らしを紹介する。◆東京から移り住んでカヌー教室で生計を立てる人、無農薬農業に憧れて鎌倉から移住してきた人。地区ぐるみで行われるお盆の施餓鬼は、鳴り物を鳴らして練り歩き、女性が総出で皿鉢（さわち）料理を作って宴会になる。夜に行われる鮎の火振り漁も役割分担を決めて行われる。