滋賀県、向源寺の十一面観音は、日本の十一面観音像の最高傑作とされる。流れるような法衣に身を包み、瞑想に耽る仏の表情からは深い慈悲の心がうかがわれ、頭部からは、１１体の化仏が四方八方を睨み、人々の悩み、苦しみを追い払う構えを見せる。豊かな穀倉地帯の湖北は、古来、奈良・京都など畿内と日本海側とを結ぶ交通の要衝であり、度々、戦乱の場ともなって人々を苦しめた。救いを求める人々の信仰心は厚く、仏を土中に埋めて戦火を逃れるなど、里人が大切に守り継いできた。◆十一面観音【国宝】（向源寺蔵）、十一面観音（医王寺蔵）、十一面観音（石道寺蔵）

中国地方の最高峰、鳥取県の大山の四季の表情と山と人々とのかかわりを２年間の長期取材で余すことなくとらえ、人と自然の共棲をアピールする。◆大山は西日本最大のブナ林が広がり、多くの生き物を育んでいる。一方で日々大量の土石が崩壊する崩壊期を迎えた山で、土地の人々は崩壊を最小限に食い止めるべく山頂に植物を移植し、大地に根付かせ再生を試みている。土地の人々の大山への思いを伝える。

日本の“四畳半フォーク”をファッションにまで昇華させ、１９７０年代の音楽シーンをリードしたグループ・かぐや姫。南こうせつ、山田パンダ、伊勢正三の３人で、２２年ぶりに復活したコンサートの模様を伝える。◆曲は「僕の胸でおやすみ」「黄色い船」「赤ちょうちん」「夏この頃」「加茂の流れに」「雪が降る日に」「２２才の別れ」「こもれ陽」「妹」「眼をとじて」「神田川」「なごり雪」「おもかげ色の空」（２０００年５月３１日　ＮＨＫホールで収録）。

中国放送が保有する開局以来の貴重なライブラリー資料と、視聴者の手元に眠る映像から、２０世紀の広島県を振り返って、さまざまな顔やイメージからとらえた広島を２１世紀に伝える。◆この回は「ひろしま災害史」。

小学生が毎回いろいろなテーマで料理作りに挑戦する番組。◆今回は仲良し４人きょうだいが単身赴任のお父さんのために、感謝のクリスマス料理を作る。

舞台でもドラマでもない「スタジオ演劇」の手法で、狭い空間で展開される密度の濃い芝居を送る。作：松田正隆。◆舞台は長崎。入り婿の健次（北村有起哉）、妻の直子（鬼頭典子）とその姉・恵子（征矢かおる）の３人暮らしの小川家に、事業に失敗して多額の借金を抱えた健次の兄・幸一（千葉哲也）が転がり込んでくる。行き場のない幸一と弟夫婦、そして婚期の遅れた姉。それぞれの思いを秘めた奇妙な共同生活が続くが、数日中に出て行くと幸一が告げたことで転機が訪れる。

アンコール・トムは、クメール王朝最盛期の都城であった。◆その遺構は、アンコール・ワットのすぐ北側にあり、長大な城壁と濠を廻らしている。◆中央の寺院、バイヨンは歴代の王の中で初めて仏教に帰依した、ジャヤバルマン７世が建立した仏教寺院である。林立する尖塔のすべての四面に、巨大な観世音菩薩の顔が彫られ、それは、自らが民衆を救う菩薩でありたいと願う王の顔そのものであるという。◆王の没後、国は衰え、王都を放棄し、カンボジアの南部に国土を狭めた。◆アンコール

日本で初めてダムの底に溜まった土砂を排出する「排砂ゲート」を備えた、黒部川上流の「出し平ダム」。１９９１年から８回にわたって行われた排砂は、ダムの寿命を延ばす切り札と注目された一方、富山湾を漁場とする漁師からは海への悪影響が指摘され、反対運動も起こっている。電力会社から県漁連に支払われた補償金の配分や、補償交渉の合意内容の不透明さをめぐって争う関係者の肉声が問題の生々しさを伝え、権力構造の外側に追いやられる漁民の姿を鋭く描写する。