昼は先生、夜は版画家…。大正から昭和にかけての創作版画の中で異彩を放った川上澄生と栃木県との関係は、横浜生まれの彼が青山学院高等科を卒業後、１９２１年に宇都宮中学の英語教師として赴任したことに始まる。その後、様々な職業を経たが、結局、宇都宮女子高の英語教師に落着き、終生、日曜画家に徹した。代表作、「初夏の風」は絵と詩を融合した色彩豊かな木版画で、棟方志功が版画を志す端緒となったことで知られる。

農業後継者の不足が深刻な問題となっている今、秋田県では農業所得引き上げのため稲作農家に対して野菜や果樹の生産を奨励している。政府は食品管理法を廃止し、米の自由化をさらに進める方針である。農業高校を卒業して農家を継ぐことを決めた１８歳の伊藤くん、高校卒業の日からの１年間を通して、日本の農業の将来を考える。◆この春はコメ不足が深刻で、外国のコメが輸入されていた。それでも、コメ作りに取り組もうという若者がいない現実。伊藤君が卒業したのは伝統ある農業高校だが、ことし就農する卒業生はたったの二人だった。

男が、隣家から頭と尾だけ残った鯛をもらった。ざるをかぶせるといかにも立派な鯛に見える。おりしも訪ねてきた兄貴分が、その鯛を肴に飲もうと酒を買って来た。いまさら身がないとも言えず、ネコがくわえて行ったとごまかす男。兄貴分は仕方なく魚を買いに行った。男は、その隙に買ったばかりの酒を全部飲んでしまう。

『鵺』は平家物語にある源頼政の鵺退治の話がテーマで、鵺退治を再現する華麗な演技と、その裏にある悲哀感が見どころである。◆旅の僧が一夜の宿を求めて川の中の御堂へ案内される。やがて鵺の亡霊が現れ法力で救ってくれと頼み、やぶの中へ消えていく。鵺とは頭が猿、尾が蛇、手足は虎に似た動物で、能としては写実的な動きの多い曲である。◆副音声は英語

昭和２年の初舞台以来、女優生活６７年目を迎えた杉村春子。昭和１２年に文学座の結成メンバーとして舞台に立って以来、常に日本の新劇界の第一線を歩きつづけてきた彼女の意欲的な舞台人生を、インタビューと舞台中継で紹介する。（１９９４年４月１７日〜４月２２日放送、全６回）◆第４回では、１９８３年東京・池袋サンシャイン劇場での公演「桜の園」を紹介する。

江戸懐石料理の老舗“八百善”を守り抜く若女将の心意気を描く。テレビ朝日開局３５周年記念特別番組。原作：宮尾登美子。◆戦時中のぜいたく禁止令でのれんを下ろした料亭・八百善。昭和２７年、主人・了二（中条静夫）は家族を集め、永田町で店を再開すると告げた。しかし自分は隠居して、次男の福二郎（渡辺徹）に９代目を継がせるという。了二は木場育ちでしっかり者の福二郎の妻・汀子（賀来千香子）に期待をかけたのだ。当の福二郎も尻込みし、長男の秀太郎ともと子の夫婦や長女の惇子も反対するが、汀子は「やらせていただきます」ときっぱり言い切った。

終戦を境に激しい価値観の変化をみた昭和という時代。「昭和」を語り継ぐことをライフワークとする澤地久枝さんが、その時代を生きた人々の人生から昭和という時代を見つめる。（１９９４年４月４日～６月２０日放送、全１２回）◆第７回は、多くの人々が病気や飢えで死んでいった時代として昭和をとらえる。

北鎌倉の古刹・円覚寺に現存する国宝の舎利殿は禅宗様式の貴重な遺構だが、これは戦国動乱期に突如廃絶となった鎌倉尼五山の筆頭、太平寺仏殿の移築であることが近年明らかになった。鎌倉幕府滅亡後に東国は乱れ、戦乱の中で足利義明の娘で安房の里見義弘の許婚が人質として太平寺に預けられた。１６年後、里見義弘は鎌倉に攻め入り、太平寺住職となっていたその娘・青岳尼を連れかえって妻とする。住職に去られた太平寺は北条氏康の怒りをかい、廃絶された。華やかだった寺の様子と戦国の動乱の中の恋を遺物にたどる。◆【国宝】円覚寺舎利殿、【重要文化財】聖観音菩薩立像（東慶寺）【その他】青磁蓋付縞文壺、古瀬戸黄緑釉尊形花器、青岳尼供養塔（千葉県安房郡・興禅寺）